斉藤由貴のセルフカバーアルバム第2弾「水響曲 第二楽章」デビュー記念日にリリース!
“胸騒ぎください”
セーラー服を着た大きな瞳の少女は目を潤ませ、テレビの向こう側から一点を見つめてそう言った。明星食品『青春という名のラーメン・胸さわぎチャーシュー』のCMに衝撃の美少女が登場する。そう、翌1985年2月21日に「卒業」で歌手デビューすることになる斉藤由貴その人である。当時、小学生だった筆者は彼女に憧れ、毎日ポニーテール姿で登校した。いまだにポニーテールが似合う女優ナンバーワンは斉藤由貴だと思っている。
ドラマチックなピアノがクラシカルな名曲たちを一編の物語として描き出した「水響曲」
時は流れ、2021年、斉藤由貴のデビュー35周年を記念して1枚のアルバムがリリースされた。セルフカバーアルバム『水響曲』だ。サウンドプロデュースを担当したのは、彼女のデビュー曲「卒業」から長きにわたりアレンジを担当してきた武部聡志。気心が知れた… というか、斉藤にとってデビューしたての、まだ何も分からない頃から共に制作に取り組んできた武部への信頼とその存在は、間違いなく大きかった。
武部の美しくドラマチックなピアノがクラシカルな名曲たちを一編の物語として描き出す。そのピアノが軸となり、ストリングスが彩りを加え、斉藤の歌と混じり合って溶け合う『水響曲』の世界は、ため息が出るほど美しい。また、曲に併せてくるくると表情を変えて歌い上げる斉藤のパフォーマンスと歌の表現力があまりにも見事で、一瞬たりとも目が離せない。
女優としての表現力が歌に活かされている「水響曲」の世界
もちろん、原曲には原曲の良さや初々しさがある。ただ、セルフカバー『水響曲』の世界は、演奏する側、歌う側、そして聴く側の私たちもそれぞれに歳を重ね、人生を歩んできた今だからこそ、より深く心に響くのだ。2008年に13年ぶりのコンサートを開催以来、コンスタントに歌手活動を続けている斉藤由貴は、新たな世界観を作り出しているように見える。そして、この『水響曲』の制作が彼女の音楽性に新しい息吹きを与え、アプローチの幅を広めたのではないか。
斉藤は時折、自分の歌を “女優歌唱” と口にするが、女優としての表現力が歌に活かされているのは、ステージでの彼女のパフォーマンスを見れば一目瞭然であり、コンサートでは曲の主人公が憑依したかのように狂おしい。曲のイントロが流れ出すとともに、斉藤の表情がパッと変わる。それがなんとも妖艶だったり可愛らしかったりして、とても美しいのだ。女優と歌手とのバランスの妙とでもいうのだろうか… その相乗効果によって、私たちはより魅了させられていく。
40周年に「水響曲 第二楽章」リリース
そして、歌手デビュー40周年を迎えた2025年2月21日、アルバム『水響曲 第二楽章』がリリースされた。今回の収録曲は「悲しみよ こんにちは」「土曜日のタマネギ」「夢の中へ」「ORACION -祈り-」「卒業」といったシングル曲のほかに、ファンからの支持が熱い「予感」「青春」「家族の食卓」などのアルバム曲やカップリング曲が並んでいる。
軽快なスウィングで幕を開ける「悲しみよ こんにちは」。ファンタジーな世界観が広がる「土曜日のタマネギ」。恋する2人の描写に心地よいトランペットの音色が色を添える「ストローハットの夏想い」。そして「予感」では、美しくも切ない曲の世界をピアノの音色と弦楽器が染めあげていく。斉藤の歌声に思わず涙が止まらない――。
続く「夢の中へ」は、原曲のイメージを壊すことなく、今っぽさで攻める斬新なアレンジ。ハープの音色によって美しい世界感をさらに神々しくさせた「ORACIÓN -祈り-」。時を経ても今なお色褪せない「青春」。オルガンの音に弦楽器が重なっていくイントロと吐息のような歌声に思わず鳥肌が立つ「Where〜金色の夜〜」――。
そして名曲「卒業」。高校生との合唱スタイルが粋に感じる。まさに青春まっただ中の高校生たちの歌声がスパイスとなり、曲に広がりを与えている。さすが斉藤由貴の世界と楽曲を知り尽くした武部聡志、そのセンスが光っている。最後を締めくくるのは「家族の食卓」。80年代当時、子供の目線で家族との食卓に思いを寄せ聴いていた自分が、2025年には家庭を築く大人の視点であることに思わずはっとさせられた。温かい斉藤の歌声が心に沁み渡る曲である。
遊び心も加わり、たくさんの新しいアプローチが施された『水響曲 第二楽章』は、心地よさや神々しい荘厳な世界観もあり、音楽の素晴らしさが詰まった素晴らしい作品となっている。
“究極の不安定” と称される歌声の素晴らしさ
斉藤由貴の歌声はいつだって温かく心に沁み渡る。武部は斉藤の歌声を “究極の不安定" と称するが、まさにこの言葉がぴったりだ。微妙な歌声の揺れが、せつなさや悲しみといった繊細な感情を伝えるところこそが、斉藤由貴の一番の魅力であり唯一無二の彼女の個性だ。
AIのように隙なく歌うことが良しとされる現代の音楽もいいが、曲の中の主人公の人間らしさ、人の強さ、弱さ、脆さ、儚さのようなものを、斉藤はその歌声で見事に演じて見せ、そして、ひとつひとつの物語の中に聴き手を連れて行ってくれるのだ。そうした人の持つ繊細な感情の揺れやゆらぎのようなものを斉藤の歌声は見事に表現する。時にその歌声に私たちの感情は大きく揺さぶられ、涙がはらはらと溢れだす…。 そんな瞬間にこそ、音楽の素晴らしさや力というものはあるのではないだろうか。
これから36年ぶりの全国ツアーも始まり、斉藤由貴の40周年イヤーが幕を開ける。コンサートではシングルを当時のアレンジのまま聴かせてくれるのだとか。ぜひ足を運んで、今の斉藤由貴の素晴らしさを体感して欲しい。
Information
「水響曲 第二楽章」(初回限定盤)
斉藤由貴歌手デビュー40周年を記念した武部聡志プロデュースによるセルフカバーアルバム第2弾。初回限定盤は、セルフカバーした楽曲のリリース当時のオリジナルバージョンを収録した2枚組で発売。
▶︎発売日:2025年2月21日
▶︎アルバム(2枚組)
▶︎価格:4,800円(消費税込)
<収録曲>
1. 悲しみよ こんにちは
2. 土曜日のタマネギ
3. ストローハットの夏想い
4. 予感
5. 夢の中へ
6. ORACIÓN -祈り-
7. 青春
8. Where ~金色の夜~
9. 卒業
10.家族の食卓