LEEVELLES「幸福のすゝめ」――それぞれが通じ合えるもの
LEEVELLES「幸福のすゝめ」――インタビュー
――「幸福のすゝめ」は、どのように制作をしていったのでしょうか。
小川紘輔「アニメ「カミエラビ GOD.app」シーズン1のアニメをメンバー全員観て、シーズン2の台本や資料を拝見しながらどんな楽曲が似合うかな？とみんなで話し合いました。アニメの制作チームからは、シーズン1のオープニング曲のPart2のようなものを作ってほしいというリクエストがあったので、それを念頭におきつつ、様々なアプローチで楽曲を作ったんです。その中で選ばれたのが「幸福のすゝめ」でした」
――最初にこのアニメを見た時の印象はどんなものでしたか？
川﨑「ヒューマンドラマが核になっている印象を受けました。主人公はもちろん、他の登場人物の設定もしっかりしているので、感情移入がしやすいアニメだなと。この作品に僕たちなりのエンディングテーマを作るならどう作っていくか考えつつ。でもアニメの内容が面白くて、普通にワクワクしながら観てましたね」
髙木皓平「ダークな作風と登場するャラクター達も本当に魅力的で、それぞれが抱えている秘密や事情がしっかりあるんです。そこに引き寄せられました。シーズン1では、それぞれの背景は分かるけれど、なぜそうなったのか具体的な所までは明かされなかったので、シーズン2はその深みも味わえました」
――そのワクワク感がまさに楽曲に出た、かなり特殊な楽曲になっていますよね。
小川「曲の展開をこれだけ複雑にするのは僕らも初めての試みで挑戦でした。アニメもすごく展開が激しいので、良い意味でリンクできたと思っています。この曲は“本音と建前”をテーマにしているんですが、シニカルなワードをいれてみたり、ボーカルではラップを入れたり、エフェクトを加えてみたりと、新たな挑戦として今までとは違ったテイストを多く詰め込みました」
――確かに、「これがLEEVELLESの新曲なんだ！」と驚きました。
小川「ありがとうございます。Aメロ、Bメロ、サビの各バースで歌うキャラクターを変えているので、ちょっと情緒不安定な曲かもしれないですね（笑）」
一同「（笑）」
宮地正明「歌詞も個性的で、ベースをどう弾くかということを自分なりにしっかり考えました。それに、紘輔から、“スラップでいくよ”というオーダーがあったんです。これまでスラップにチャレンジする機会がなかったので、苦手意識がありましたが、レコーディングの前にレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーやマーカス・ミラー、ルイス・ジョンソン、ラリー・グラハムなど聴いて歴史から学び、準備した上で挑みました」
――その苦手を乗り越えられましたか？
宮地「どうか聴いてもらえればわかると思います！（笑）」
――ちなみに小川さんは宮地さんが不得意なことをわかっていたんですか？
小川「もちろん（笑）」
一同「（笑）」
宮地「作品を作る上で、自分たちが持っている武器だけで戦っていても、新しいものは生まれないんですよね。そういう意味で、全員が新たな挑戦をした楽曲になったんじゃないかなと思います」
川﨑「練習すればできますからね。このバンドに“できない”は無しなんです。皆でできるまでチャレンジしようじゃないかと！」
――急な体育会系ですね（笑）。
宮地「（笑）。でも、乗り越えると武器が増えるので、振り返ると凄く良い経験になりましたね」
――確かにだいぶレンジが広くなった感じがします。次はどんなチャレンジをしてみようっていうアイデアはありますか？
小川「今度はギターを考えています。川﨑はタッピングがすごく上手いんですよ。でも、あまり単音で早く弾くのを聞いたことがないので、そういったトリッキーなギターを今後入れてみたいなと思っていて、イントロはトリッキーで、サビはシンプルになるような曲を作ろうか企んでいます」
川﨑「僕も個人的にそういったフレーズが生み出せたらいいなと思っているので丁度いいですね。人生経験上、練習すれば絶対に出来るとわかっているので、新しいことに対して抵抗はないですね。人体的に無理でなければ！（笑）」
――徐々に自分たちでハードルを上げている感覚がいいですね。10年後、どんなプレイをしているか楽しみにしています（笑）
川﨑「もう人間技じゃないことをしているかもしれないですね（笑）」
小川「2本ネックがあるかも！」
――川﨑さんは楽曲を完成させてみていかがですか？
川﨑「制作自体がすごく面白かったんですよ。デモから歌詞を作る段階で、アニメという題材があり、そこにLEEVELLESという要素を掛け合わせる中で、バース毎の変化もあり、移り変わりを意識しながら、みんなで言葉を探して歌詞を書いていく作業が楽しかったんです。勿論ギターを弾くのも楽しかったんですが、個人的に歌詞を作るのが一番楽しかったですね」
――この歌詞も、いつもと同じようにみなさんで意見を出し合って制作されたのでしょうか。小川「軸となるテーマが僕の中にあって、僕がワンコーラス固めた後に、全員で意見やアイデアを出し合いながら制作しました。なので2番以降はメンバーの言葉もたくさん入っています。結果的に、良い制作が出来たと思っています」
――最初に歌詞を書いたときに、どんなことを一番大事にしたのでしょうか。
小川「僕自身、“建前”をかなり使っちゃうところがあるんです。空気を読むことから始まり、社会で生きていく上でどうしても必要になるじゃないですか。でも、そればかりに捉われると、本当の自分はどうしたいのかが分からなくなってくるんです。僕もそういった経験が今までにたくさんありました。世渡り上手と言えるかもしれないけど、それだと有象無象の一つ二つにしかならない。特にメジャーデビューをして、考え方がガラッと変わったんです。そこから自分の意見に責任を持ち、しっかり周りに伝えていこうと思ったんです。その気持ちを大事にしながら歌詞を書きました」
髙木「そういった葛藤がしっかりと歌詞で表現出来たと思っていますし、アニメとの親和性も高い楽曲が出来たと思っています。シニカルな要素も面白いですし、聴くほどに色々な発見ができる曲になりました。僕らも、みなさんも、生きてきた道のりはそれぞれ違うはずなので、歌詞を通して思い描く風景は全く違うと思いますが、それぞれが通じ合えるものがあったらいいなと思っています」
宮地「サビの最後に“傷ついて行きついた先で光が差すんだ”というフレーズは特にお気に入りですね。周りに翻弄されたり、いろんな辛い事もあって、主人公は苦悩するんですが、その先にある希望の光として表現出来たんじゃないかなと思います」
川﨑「僕は2番のサビがお気に入りですね。1番と、ラストのサビをしっかりと繋ぐサビだと思っていますし、かなり深いんですよ。実は……この歌詞は僕が書いたので自画自賛です（笑）」
小川「（笑）。その2番のサビの前に、＜君らの叡智“幸福のすゝめ”＞という歌詞があるんですが、その歌詞は僕が一番好きなところです。ここで描かれている“叡智”って、主人公の心情が感じられる、凄く皮肉な言葉だと思うんです。音符に対してのハモリもすごくキレイですし。これも純くんが書いてくれたんです」
川﨑「少し強すぎる言葉かなと思ったんですが、この楽曲を象徴するキーワードになれば良いなと思ったんです。みんなが“いいじゃん！”と言ってくれて嬉しかったですね」
――実際にこの曲とアニメ映像が重なる映像は見られましたか？
宮地「スポットで、アニメの紹介のVTRを作ってもらったんです。そこでこの曲が流れて、イチ視聴者として“カッコいい！”って思いました（笑）」
――それにしても、LEEVELLESはエンタメ作品のタイアップとの親和性がすごく高いように感じるのですが、様々なタイアップを手掛けることによって心境の変化はありましたか？
小川「メジャーデビューしてからタイアップの話をたくさん頂き、他のアーティストさんのタイアップ曲を聴いて、なぜこの歌詞なのか、なぜこの音なのかという事が徐々に汲み取れるようになったんです。それがすべて勉強になりますし、曲の楽しみ方が増えましたね」
川﨑「僕はもともとアニメが好きで、オープニング曲もエンディング曲も飛ばさずに見るタイプなんです。アニメの一部に音楽があるという認識なので、すごく重要な要素だと捉えているんですよね。実際に僕たちが音楽を作らせて貰えるとなってから、改めて色々な方が携わっていて、様々な思いが作品ごとに詰まっていることを実感して音楽含め、エンタメの良さを実感しました」
――様々な楽曲をみなさんで作り上げているからこそ、インプットも必要だと思うのですが、みなさんはどのようなインプットをされていますか？
小川「様々な楽曲が世に放たれて、街中で流れている曲もあれば、SNS上でも楽曲がたくさん流れているじゃないですか。それは常にアンテナを張っていますが、意識的に取り入れるというよりかは、音楽以外でも友達と遊ぶことも含めて、自然体で常に次の作品づくりに活かせる事を探しています。インプットしているといえばインプットだと思います（笑）」
宮地「メンバーみんながそのタイプではあるんですが、前にメンバーと友だち数人でバーベキューをしたんです。それがすごく楽しかったんですよね。その純粋な想いも制作に活かされたらいいなと思いますし、いい意味で、普通の生活も楽しんでいきたいですね」
川﨑「みんなライブの後にご飯を食べたりすることはよくあったんですが、1日純粋に遊んだのはあれが初めてだったよね？」
小川「うん。僕、みんなとキャッチボールがしたいんですよ！」
髙木「みんな野球部出身だからね」
川﨑「キャッチボールやろう！曲に活かされるかはわからないけど（笑）」
一同「あはは！」
――では最後に、この曲では＜困っている人に声をかけましょう＞という歌詞がありますが、誰が一番声をかけられるタイプですか？
髙木「前に、宮地と歩いていたら、目の前で転んだ人がいたんですよ。そこでサッと手を差し伸べたら、触んなくらいの感じで怒られちゃって（笑）」
小川「それは寂しい！ちゃんと“大丈夫ですか？”って言った？」
髙木「あまりのショックで覚えてない（笑）」
宮地「あのときの髙木さんの場合は、ちょっとタイミングが悪かったというか……（笑）」
――いやいや、いいことをしていますから！自信を持ってください！
髙木「頑張ります！いつかあの人がライブに来てくれたらうれしいですね（笑）」
（おわり）
取材・文／吉田可奈
LEEVELLES presents CROWN Fes. #2＠代官山 SPACE ODD――ライブレポート
2024年8月29日（木）、LEEVELLES主宰の対バンイベント「LEEVELLES presents CROWN Fes. #2」が代官山 SPACE ODDで開催された。ゲストはmzsrz、SUGARLUNG、irienchyという3組。フロアにはそれぞれのアーティストのファンが入り混じっていたはずなのだが、MCで小川紘輔が「好きなバンドを集めたんだよね」と語っていたとおり、初見のアクトでも分け隔てなく楽しんでいる様子が伝わってきた。
前のアクトから次のアクトへの転換時も、LEEVELLESやirienchyのメンバーがDJプレイで観客とのコミュニケーションをとりつつほどよい緊張感と和やかな雰囲気をキープしていた。
メインアクトのLEEVELLESは、クラップを誘って「無限未来」のイントロへ。オーディエンスが笑顔を浮かべからだを揺らしていた「Step＆Step!」、デビュー曲「ヨルヲカケル」と曲を紡いでゆく。
彼らのライブアンセムになりつつある「地獄の沙汰も愛次第」、ライブ終盤、小川がキーボードを弾きつつ、奇をてらわずまっすぐに歌い切った「Walk」、地声とファルセットをスムーズに繋いだ「花占い」など、彼らのステージの完成度の高さはもちろんだが、小川の「すごく温かい空間でうれしい」という言葉のとおり、メンバーが終始フロアとアイコンタクトをとっていたり、会場全体に流れるやさしい空気感が印象的なイベントだった。
（おわり）
取材・文／高橋 豊（encore）
2024年10月3日（木）配信
ユニバーサルミュージック
LEEVELLES「幸福のすゝめ」