【アピシウス】が4代目へと世代交代。40年継承される正統派フレンチで温故知新を楽しむ|有楽町【アピシウス】
日本を代表する正統派フランス料理店【アピシウス】。1983年に創業した当時の格式を保ったまま40年を超える歴史を刻み続けています。そして2024年8月、15年料理長を務めた3代目岩元学氏から4代目シェフ森山順一氏へとバトンが渡されました。『青海亀のスープ』を筆頭に、歴代シェフが生み出してきたスペシャリテを受け継ぎながら、「変えずに変える」という難題にチャレンジする森山シェフにお話を伺いました。
約40年の歴史を継承する日本が誇るグランメゾン
料理はもちろん、空間、サービス、ワインなどまですべてが整った日本一のグランメゾンを目指して1983年にオープンした【アピシウス】。アール・ヌーヴォー様式の空間は、ゴージャスというよりも優美。100年前からそこに存在しているような落ち着きを湛え、代々続く貴族の瀟洒な邸宅に招かれたような温かみのある雰囲気に気持ちは華やぎながらも、緊張感はほぐれていきます。
本格的なフレンチを提供するグランメゾンがほぼなかった創業当初から雰囲気もサービスも料理も本場フランスに勝るとも劣らない「本物を目指そう」という気概を貫いてきた【アピシウス】。品質の高いフレンチの食材がまだ充分に流通していなかった時代だけに、創業オーナーと初代料理長の高橋徳男氏は、日本人が体験したことのないような「最高の一皿」を生み出すために日本中を巡り、地方の食材を発掘。現在は閉鎖しましたが、おいしいジビエを手に入れるために牧場までつくるというこだわりようでした。
森山さんが【アピシウス】に入社したのは1998年、21歳の時でした。宮崎県出身の森山さんは高校卒業後、宮崎県のシーガイアに就職してフレンチの修業をスタートさせていました。「一緒に働いていた先輩が【アピシウス】で仕事をした経験を持つ方で、食材や仕込みのことなどいろんな話をしてくださった。その内容にとても興味を惹かれ、憧れを持つようになりました」。
森山さんはシーガイアに3年勤めたのち、先輩の紹介を経て【アピシウス】への転職を果たしました。そして、15年の経験を積んだ2013年、スーシェフに抜擢され3代目シェフ岩元学さんの片腕に。「恵まれた環境で仕事をさせてもらえていることに感謝しながら、料理技術だけでなく、アートなど文化的なことにも触れ、感性を磨くよう心掛けてきました」と話す森山さん。入社26年目となった2024年8月に【アピシウス】4代目シェフという重責に就くこととなりました。
「極めて責任は重いのですが、先代からの意志を継承した岩元シェフの元で【アピシウス】らしさを表現する術を学んできた私がやるべきことは、それを次の世代に繋げていく仕事をするということ。その上で新しいメニューを提案し、チームでディスカッションしながらものづくりをするその先導役の楽しさも感じているところです」と【アピシウス】の歴史の半分以上のキャリアと努力に裏打ちされた自信や頼もしさを感じさせてくれます。
「変えずに変える」微細な仕事で伝統の味を守る
【アピシウス】には、有名な『青海亀のコンソメスープ』を筆頭に、『雲丹とキャビア カリフラワーのクリームムース コンソメゼリー寄せ』、『国産黒毛和牛ロース挽き肉の半生ステーキ ビトーク アピシウス風』などなど初代高橋シェフが、フランス料理の伝統をベースに【アピシウス】の独自性を味わえる正統派フレンチとして創り上げた数々のスペシャリテがあります。
それらの味を継承することについて森山さんは、「いかに素材を厳選していても例えば『雲丹とキャビア』の料理に使うカリフラワーの味もレシピがつくられた40年前とは甘みも香りも変わってきています。その時々の気候の問題もありますし、トマトの酸味が減って糖度が上がるなど時代による農作物の味の変化もあります。つまり、レシピは目安であって、その通りにやれば味が守れるわけではないんです」と話します。
素材の味の違いも計算に入れた上でレシピを生み出した先代シェフの思いを繋ぎ、狙い通りの味になるよう塩加減や火入れなど微細な調整でブレることなく【アピシウス】の味を守っていくというのが大きな務めなのです。また、新たなメニューも「自由に生み出せるわけではなく、あくまでも【アピシウス】の料理になるようベースは崩さず、先人の料理を応用しながらどう自分の形にしていくのか、ということを考えて作らなくてはまりません」と森山さん。
代替わりをして新しくメニューに加わった『鰻のパイ包焼き ポルト酒風味』は、「初代高橋シェフの鰻のテリーヌを応用した一品です」と森山さん。パイ包みという【アピシウス】が得意とする古典的な手法を使いながらも、鰻、フォアグラ、帆立貝のムースがパイの中で一体となり新たなおいしさを生みだしています。そして、酸味のある白ワインとバターにポルト酒の風味を加えたソースを組み合わせるなど【アピシウス】らしさでまとめられているのです。
グランメゾンデビューこそ【アピシウス】で!
歴代のシェフが味を繋いでいくレストラン。一度は行ってみたい、というよりも何かの記念日の折に食事に行くことで、自分自身の歴史にもその味や雰囲気を刻んで行きたいものです。森山さん自身も【アピシウス】に入社する前、20歳で食事に行った時には緊張してガチガチになったと言います。
「階段を降りて、観音開きの重厚な扉を開けるとき。サービスのスタッフに案内されて席につき、メニューを渡されたとき。非日常の空間ですから初めてならば緊張しないわけがありません。でも、百戦錬磨のサービススタッフが巧みな話術で緊張を和らげていってくれるので安心してください。メニューの内容はわからないのが当たり前です。わからないことは聞いて説明を受けるうちにだんだん場に慣れていきますよ」と優しい笑顔の森山さん。
メニューはお任せもありますが、アラカルトでもOK。さらに、Sサイズが用意されている料理もあるので、料理の内容はもちろん、分量についてもスタッフと相談しながら少し時間をかけて自分なりのコースをカスタマイズできるのも【アピシウス】のような懐の深いサービスを提供しているレストランの醍醐味です。
とはいえ何か森山さんのおすすめ料理やアドバイスをいただきたいとお願いしたところ「【アピシウス】でなければ味わえない究極のスペシャリテ『青海亀のコンソメスープ』はぜひにの一品です。創業オーナーが持つ強力なコネクションにより年間捕獲枠が135頭と決まっている小笠原産の希少な青海亀のうち12頭を毎年分けてもらい、濃厚なコラーゲンを活かしたコンソメスープに仕立てています」
「また、『フランス産舌鮃のソテー』をはじめ、お客さまのテーブルの前で料理を盛り付けるデクパージュを楽しめる料理も数品あります。また、デザートの数々がショーウィンドウのようなワゴンで運ばれてくるなど、今では少なくなったワゴンサービスを今でも行なっているのも【アピシウス】ならでは。若い世代の方々にもぜひ体験していただきたいですね」。料理もワインも空間もサービスも極上だからこそ、世代を超えて楽しめる包容力を持つグランメゾン【アピシウス】。正統派のフランス料理とは、真のサービスとは何かなど、知っておくべき食文化を体感できるに違いありません。
伝統と革新のバランスが難しい老舗のグランメゾンで4代目シェフ森山さん。挑戦は始まったばかりですが常に「変えずに変わる」という言葉を念頭に、スタッフの意見、顧客の反応などにも耳を傾けながら先人が作り上げてきたように印象深い一皿を生み出そうとしています。これから【アピシウス】の歴史に刻み込まれていく新たな料理も楽しみ。シェフの世代交代をきっかけに、【アピシウス】の顧客になるための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょう?
レストランアピシウス
【電話】050-5263-1855
【住所】東京都千代田区有楽町1-9-4 蚕糸会館B1F
【エリア】有楽町/日比谷
【ジャンル】フレンチ
【ランチ平均予算】-
【ディナー平均予算】30000円
【アクセス】日比谷駅 徒歩1分