米屋なのにコメがない 廃業件数が増加 価格は13週連続の値上がりで過去最高値
■昨年度の廃業88件 コロナ禍以降で最多更新
逆風が続いて苦境に立たされている。米屋の廃業・倒産件数が2年連続で増加している。米不足と価格の高騰に歯止めがかからず、今年度はさらに件数が増える可能性があるという。
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民間の調査会社・帝国データバンクによると、昨年度に休廃業・解散した米屋は88件だった。前年度から8件増えて2年連続の増加で、コロナ禍以降の最多を更新した。
これまで米屋は、販売の自由化で大手スーパーとの販売競争が激化して淘汰が進んできた。しかし、近年は天候不順や病害の発生、農家の減少から全国的な米不足が起こり、昨夏以降に米屋で在庫量が不足する事態に陥った。仕入れ価格が大幅に高騰したにもかかわらず、価格転嫁できずに業績が悪化して一時休業や廃業を余儀なくされる米屋が増加しているという。
昨年度の損益状況は全体の4分の1の米屋が前年度から「減益」となり、22.4%は「赤字」に転落した。赤字・減益を合わせた「業績悪化」の割合は半数近い47.6%に上った。帝国データバンクは「米不足を背景に、在庫分が高値で取引できたことで売り上げは増加したものの、新米の仕入れコストが想定以上に増加したことで収益力が大幅に低下した米屋も多かった」とまとめている。
現在は仕入先を広げながら販売先を既存顧客に限定するなど、消費者の手に届くまで安定した米の供給に努める米屋も多いという。ただ、品薄感が強まる食品スーパーや大型チェーン店以上に「米が回ってこない」との声も聞かれ、「米屋で売る米がない」という危機感が強まっている。帝国データバンクは、米不足を理由に廃業・倒産するケースは今年度も増加する可能性があるとみている。
■価格は13週連続の値上がり 政府の備蓄米放出も現時点で効果なし
政府は米不足を解消するため、備蓄米を放出した。しかし、米の販売価格は下がっていない。農林水産省によると、3月24から30日に全国のスーパーで販売された米5キロ当たりの金額は4206円で13週連続の値上がり。前年同期から2倍以上の価格となり、データ集計を開始した2022年3月以降の最高値を更新した。
政府の備蓄米は販売量が徐々に増えている。価格の値下げや安定供給につながるの注目される。
(SHIZUOKA Life編集部)