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シンプルで美しいフォルムを生み出す、陶芸家の「後藤奈々」さん。

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シンプルで美しいフォルムを生み出す、陶芸家の「後藤奈々」さん。

新潟市南区を拠点に活動している陶芸家の「後藤奈々」さん。後藤さんは大学卒業後、「職人になりたい」とものづくりの道へ進み、陶芸を学びました。シンプルでありながら、人の手が加わっていることが確かに感じられる後藤さんの作品。その魅力にひかれ、取材の際に器を2枚購入しました。本日まで南区の「ART&COFFEE SHIRONE PRESSO」にて、「—Gift— 後藤奈々作陶展」が開催中です。気になる方はぜひ足を運んでみてください。

陶芸家

後藤 奈々 Nana Goto

1982年新潟市生まれ。文教大学文学部を卒業後、京都府立陶工高等技術専門校で陶芸を学ぶ。茨城県笠間焼窯元「桧佐陶工房」に勤務した後、新潟に戻り、2008年から陶芸家としての活動をはじめる。

「職人になりたい」。就職氷河期に見つけた、自分の道。

——後藤さんは、京都の学校で陶芸の技術を学ばれたそうですね。

後藤さん:はい、でも大学はぜんぜん違うジャンルで、文学部を卒業しています。当時はまだ就職難で、「就職できればどこでもいい」「やりたいことを選んでる場合じゃない」って感じだったんですよ。

——私も後藤さんと同じ世代なので、よくわかります。

後藤さん:でもやっぱり好きな仕事をしたかったんですね。私は、手を動かしてものを作る「職人さん」に憧れていました。それで大学を卒業してすぐに、京都の職業訓練校に進学したんです。

——そちらで陶芸を学ばれたんですね。

後藤さん:清水焼の職人を養成する学校です。京都は職人の世界なので、器を作る人と絵付けをする人とで役割がはっきり分かれています。それぞれの職人を育成するための学校で、私は成形科を修了しました。やっぱり「つくる方」をやりたくて。

——職人を目指されていたそうですが、陶芸以外の選択肢もあったんですか?

後藤さん:いくつか体験してみたんですけど、陶芸がいちばん性格に合っているように思えたんですよ。無心になれるといいますか、集中できる感覚がすごく気持ちよくて。

——学校生活はどうでした?

後藤さん:できないことが多すぎてまさに「修業」って感じでした(笑)。合格がもらえるまで、ずっと同じ課題を続けなくちゃいけないんです。例えば、2週間ずっと朝から晩まで「土練り」に取り組むとか。そのときは、全身筋肉痛で起き上がるのが大変なくらいでした。

——「とんでもないところに来ちゃった」って思いませんでした?

後藤さん:そうは思いませんでした。むしろ「居場所を見つけられた」って感じがしました。周りの仲間たちも同じところを目指しているし、感性も似ているんです。年代も出身地もバラバラでしたけど、学生生活は楽しかったですね。

——専門的に学ばれた後はどうされたんでしょう?

後藤さん:京都に就職しようと思ったんですけどなかなか求人がなかったんですよね。まだ力がついていなかったので、陶芸をもっと勉強できるところはないだろうかといろいろ調べて、笠間焼の窯元で3年弱働きました。

陶芸尽くしの毎日が訪れるまで。

——いずれは今のような作家活動をしたいと思っていたんでしょうか?

後藤さん:実は、社会に出る時点ではそうは思っていませんでした。「職人になりたい」と思っていましたので。でも笠間では「最終的に陶芸家になりたい」という気持ちで勉強している方が多かったですし、職人として一生やっていける時代ではないのかなというのもあって。

——それで、ご自身の活動をはじめられたわけですね。

後藤さん:そうですね。新潟に戻ってすぐの頃は、窯を買うお金も、窯を貸してくれるところもなかったので、陶芸ができる環境ではありませんでした。働きながら、ちょっとずつ道具や設備を揃えていったんです。

——陶芸一本で生活できるようになるまで、どんな取り組みをされたんでしょう?

後藤さん:展示会やクラフトフェアのお誘いが増えて、仕事が休みの日に各地に行く機会が多くなりました。その頃、自分の中でひとつの目標だった「クラフトフェアまつもと」への出展が決まったんです。同時期にもうひとつの企画も決まって、「陶芸のことしか考えられない」くらい忙しくなりました。

——まさしく転機が訪れたんですね。

後藤さん:新潟に戻って4年目だったと思います。それで仕事をやめる決意をしました。

——「クラフトフェアまつもと」には何度かチャレンジしたんですか?

後藤さん:出店が決まったのは、2回目の応募だったでしょうか。合格してから、むくむくとビジョンが広がっていく感覚がありましたね。

作品ひとつひとつを調和させ、空間を作る。

——「後藤作品」の特徴は、どんなところにあるんでしょう?

後藤さん:形はシンプルで、絵付けもなく。「きれいなフォルムを作りたい」と思っています。私、ロクロを使って形を作るのがとにかく好きなんです。同じ釉薬を使っていても、焼きあがりに違いがあるところもおもしろいんですよ。そういう変化が出るように、自分で調合した釉薬を使っています。硬質ながらもあたたかみのある雰囲気を出したいと思って、素材には半磁土を使っています。

——経験を積む中で今の作り方になったんですか?

後藤さん:使う素材や作り方、作品の形などは、制作しながら変わっていったと思います。だんだん自分の作りたいものがわかってきて。「もっとこうしたい」を追いかけていたら、今のかたちになりました。

——県外での展示会も多いんでしょうか?

後藤さん:毎年8月に「SHIRONE PRESSO」さんで個展を開かせてもらっています。県内では他に、年に数回作品展の機会があります。でも、県外での開催が多いかもしれません。

——展示会続きでしょうから、まさに職人さんのように、そうとうな数の作品を作られているのでは。

後藤さん:そう思います(笑)。「職人になりたい」って夢は半分くらい叶っているのかもしれません。職人と作家の中間の感覚でいます。作ることができて幸せです。展示会で器を見ていただけることもすごく刺激になります。こういった場で作品を見ていただけることは、すごく刺激になります。ひとりでは狭い世界に閉じこもってしまうので、いいかどうかも自分の基準でしか測れなくなっちゃいますから。

——後藤さんは、とにかく手を動かすことが好きなんだなってすごく感じました。

後藤さん:ロクロを前に手を動かせているだけで、すごく楽しいです。もともと「表現したい」って気持ちはありませんでしたけど、展示会をさせてもらえるようになってから、そういう気持ちが出てきたと思います。

——その表現したいものってなんでしょう?

後藤さん:そのときによって違うんですけど、作品ひとつだけではなくて、トータルで空間を作るというか、展示する作品すべてに調和が取れていることも意識しています。今回の展示会は夏の開催ですので、爽やかな色味の器が多いですけど、秋冬にはもう少し暖かみのある黄色や茶色の器も登場しますよ。

後藤 奈々

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