詩羽×PEDRO、新宿LOFTが仕掛ける異色のツーマン・ライブシリーズのトリを飾る2組が語る出会いからライブへの想いまで
新宿LOFTが全力でプッシュする、異色のツーマン・ライブシリーズの開催が目前に迫って来た。〈SHINJUKU LOFT PRESENTS『ATTACK FROM LIVEHOUSE』supported by e+〉は、新宿、渋谷、下北沢のライブハウス5会場を舞台に、バンド、ソロ、アイドル、DJ、ラッパーらが対バン形式で激突する、予測不可能な刺激と可能性に満ちた全11公演だ。その最終日、6月25日にZepp Shinjuku(TOKYO)に登場するのは、詩羽とPEDRO。方や、水曜日のカンパネラのボーカルによるソロプロジェクト、こなた、元BiSHのアユニ・Dによるロックバンド。一体どんな化学反応が起きるのか、普段から仲良しの二人に、出会いのことから互いの共通項、ライブの抱負まで、ざっくばらんに語ってもらった。
――お二人の最初の出会いって、覚えてますか。
詩羽:いつだろう? たぶんフェスだよね。アユニちゃんがBiSHの時に、フェスで一緒になることが意外とあって、でもお互い広場(アーティストの交流場)にいないから(笑)。私は広場のほうに行かないし、アユニちゃんも広場のほうに行かないから、会うことがなくて。最初はどこだっけ。
アユニ:2、3年前のアラバキかな。
詩羽:そうだった気がする。アラバキでご飯食べてる時に、アユニちゃんがいて、初めて会ったのはそこだった。
アユニ:でも私は詩羽ちゃんのこと、結構前から知ってたよ。ミスiDとか見てたんで。
詩羽:えー! なんで!(笑)
アユニ:ファッションアイコンとしてもアーティストとしても、群を抜いて惹きつける魅力がある方だなっていうのはずっと思っていて、会ってもそれはすごい感じた。あと、私がしんどいタイミングの時に詩羽ちゃんと会うことが多くて、その時もそうだったので、自分の中でメンタルスーパーヒーローみたいな存在です。
詩羽:私は全然音楽に詳しくないので、BiSHのことも詳しくなくて。だけどなんか、楽器を使わなくて、アイドルとも言い難いアーティストみたいな枠組みで言ったら、水曜日のカンパネラと近しいものはあるのかな?と思ってたこともあって、そこからBiSHを見ることがちょこちょこ増えたりして。でもBiSHのメンバーって人数も多いし、全然違いそうだし、女の子と関わることが今までの人生であんまりなかったから、近づくタイミングはその時までなかったけど、でもフェスとかでいろんな人がいる中で、話しかけなきゃ損だよなと思って、わーっと近づいてみたら――私は私で、ハキハキしてるタイプではあるけど、アユニちゃんは穏やかなタイプだったから、逆にマッチしたというか、話しやすかったから。私の中で、すごい穏やかっていうのが話しやすいポイントだったから、初手で話しかけて話せたのが嬉しかった。私、人と初手で話すのがすごい難しいタイプで、意外とちゃんと人見知りもしちゃうし、だからアラバキの時に話しかけてよかったなってすごい思ってる。
アユニ:嬉しい。
――お互いの共通点ってあります? 好きなものとか、性格とか。
アユニ:前は、ご近所さんでした。
詩羽:確かに(笑)。共通点で言えば、家は近かった。でも、何だろう? 違うタイプではあるなとは思うんだけど。
アユニ:めっちゃ思う。同じ学校だったら、たぶん仲良くなってない。たぶん私が、手が届かないかも。
詩羽:同じ学校だったら、私は話しかけるかなと思う。
アユニ:ほんと? すごい嬉しい。
詩羽:私もファッションがすごい好きだし、「いいな、素敵だな」って思う面が多かったりするし。でも、共通点って何だろうね。
アユニ:チッチ(セントチヒロ・チッチ)じゃない? そういうことじゃないか(笑)。
詩羽:確かに(笑)。でも、仲いい人が同じっていう、好きなものが同じっていうのは、すごい近い気がする。世の中に人間がたくさんいる中で、お互いチヒロちゃんとすごい仲いいし、チヒロちゃんからもアユニちゃんの話をちょこちょこ聞くし。
アユニ:嬉しい。
詩羽:性格的には、私は素直ではあるけど、本当に人を選んで自分のことを話すから。そういう意味では秘密主義者なところが似てる気がする。
アユニ:あー、似てる!
詩羽:二人とも、あんまり自分のことを言いたくないタイプな気がする。言えないし、言うことに躊躇するという意味を含めた上で、自分を守るためにも自分のことを人に教えないっていうのが、すごい近しいのかなとは思う。
アユニ:言われてみればそうかも。だからこそ、好きなものを身にまとって固めたりするのかもしれない。芯を貫き通してる根源って、そういうところかもしれない。秘密主義というのは。
――さっきの、「しんどいタイミングの時に詩羽ちゃんと会うことが多くて」という話、よかったら聞かせてください。
アユニ:私が、メンタルも体調もすごく落ちてた時があったんです。去年とか。その時に詩羽ちゃんが連絡くれて、ご飯食べに家に来てくれて。その時期は、全世界が敵だと思い込んでしまってた時期で、その時に手を差し伸べてくれたのが詩羽ちゃんだった。でも、それ以上深入りはして来ないんですよ。
詩羽:あはは(笑)。
アユニ:必要以上に私のフィールド内に入って来なくて、でもすごい素直に、たぶん気を使ってくれてたのかもしれないですけど、すごい自由に接してくれてるように見えたんです。笑いたい時に笑って、笑いたくない時には笑わなくて、みたいな。それがすごい嬉しくて、こんなふうに鬱陶しくなさを持ち合わせつつ、人と接する力は私にはないので。
詩羽:えー。そうかな。
アユニ:めちゃめちゃ気を使って、めちゃめちゃ必要以上に挙動不審になっちゃったりするんで。だから、そこにすごい救われましたね。そのあと、体調が良くなった理由も、詩羽ちゃんのおかげもあるかもしれない。
詩羽:お鍋食べたよね。あの時。
アユニ:本当に嬉しかった。
詩羽:私はSNSを結構見るほうだから、アユニちゃんのSNSを見てる中で、元気ないんだろうなって思ったの。それまで一緒に遊ぶとかも、ご飯とかも全然なかったけど、これは確実に元気がないだろうなっていうのが見えてたから。で、近しいからこそ言えないことってたくさんあるし、そもそも人に相談できる人とできない人って明確にあるから、どっちがいいか?というのもそれぞれ違うから。でも私だったら、本当に元気がない時にたぶん一番嬉しいのは、心身ともに一番健康に繋がる方法は、「飯食おう!」「どっか行こう!」とか、そういうことなのね。「解決に向かって一緒に話し合おう」とか、そういうのじゃなくて、「飯食おう!」「どっか行こう!」っていうのが、私は一番人が健康になる方法として有効なのかなと思っていたので。
アユニ:その考え方、好き。
詩羽:私が聞いて、何かできることがあるかどうかもわからない話をたくさん聞くよりは、「とりあえず飯食おう!」っていう、それだったら私はできるよなと思って、「飯食おう!」って誘いましたね。その時は。
――とっても素敵です。詩羽さんらしい。
詩羽:やっぱり、元気でいてほしいからね。できるだけ人に元気でいてほしいし、自分たちにできることなんて、みんな限られてるし、「ここは飯かな」とは思ったね。
アユニ:いやー、勉強になる。
――詩羽さんがステージでやってることって、まさにそれでしょう。
詩羽:私がステージに立つのが楽しいのって、自分のことを見てくれる人たちがくれるものがあるから返せるっていう思いが、自分の中にも当たり前にあるので。「ライブに来て元気になった」っていうのはすごい嬉しいし、私の放つ元気なパワーを、私もすごい好きだから。そこは自分の長所だって自分でわかってるからこそ、ステージでもそれができるんだなと思いますね。
――アユニさんはステージで、どんなパワーをお客さんに向けて放ちたいと思ってますか。
アユニ:私は、ステージに立つエネルギーが基本的に怒りだったり意地だったりで、日頃口に出せないことも、音楽というフィルターを通せば口に出せるっていう、アーティストとしての技を使って、そこにめちゃくちゃ甘えてステージに立っていて、だからこそ、元々はお客さんに元気をあげようと思って立ってなかったんです。でもその時にお客さんから、「アユニちゃんの音楽に救われました」とか言われて、自分の中で革命が起きて、お客さんが私の音楽から元気を見出してくれて、みんなの暮らしとか人生に重ねてくれて、「負のエネルギーが素敵なエネルギーになることってあるんだ」って思って、それが自分のステージに立つ意味に今はなりました。
――方法論はまったく違うけれど、放つパワーの強さと方向は共通しているような気がします。ちなみに、お互いのライブの印象というと?
詩羽:ソロのほうではできるだけ頑張って素直でいようと努力はしてるんですけど、私は本当に素直になるのが苦手で――ステージに立つと、個人の詩羽である前にアーティスト・詩羽で身を包んで、自分のことを守ってしまうのが私の中の守り方で。だから私は、怒りだったり悲しみだったり、そういう素直さを人に出すことが本当に得意じゃなくて、だからこそそれができる人たちの音楽を見ると、かっこいいなって憧れるし、自分の代わりに怒ってくれる人、自分の代わりに嘆いてくれる人、自分の代わりに悔しくてもがいてくれる人がいて、それで自分も救われるっていうお客さんの気持ちがすごいわかるので。そういう怒りだったり、苦しみだったり、悔しさだったり、感情を素直に吐露できるアーティスト像が、私の中でアユニちゃんに憧れる一つのポイントだなとは思いますね。
アユニ:ありがとう。いいように言ってくれて。
詩羽:本当に思ってるよ(笑)。
アユニ:自分のコンプレックスを、すごい嬉しい言葉で言ってくれたから。私は詩羽ちゃんのライブを、ソロのほうはまだしっかり見たことはないんですけど、まさに今の話の逆もしかりで、詩羽ちゃんがいろんな自分の「好き」を追求して、それに身を包んで、しっかりドレスアップして、表現者としてステージに立ってくれた時に、背中を押してもらえるっていうか、たくましいからついていきたくなる感覚があるんですね。たぶん私のお客さんって、私を見て守りたくなるみたいな感覚だと思うんですよ。でも詩羽ちゃんのライブを見てると、ついていきたくなる感覚がすごいあって、私はそういう人に憧れがあるので、エネルギーをいっぱいもらえる印象がありますね。「なんでこんなこと言えるんだろう」「なんでこんな佇まいができるんだろう」って思うんですけども、それをやるために自分の中で積み上げてきたものがしっかりあって、自分のことに目を背けないで、自己分析したりとか、一つ一つ積み上げてきたからこそ表現できる形なんだろうなってすごく思います。羨ましいです。かっこいいと思います。
――音楽的には、詩羽さんのソロとPEDROはわりと近い場所にいますよね。バンドサウンドという点で。
詩羽:そうですね。バンドサウンドっていう面と、バンドメンバーに、昔から音楽を激アツでやってる人が入ってるっていう面だったりとか、そういう意味で近いところはあるのかなと私も思います。
――それって、好きな音楽のルーツが似ているということですかね。
詩羽:いや、そもそも私がそんなに音楽に詳しくないのでーー。
アユニ:私も全然詳しくなくて、それこそPEDROが始まって、サポートメンバーを(田渕)ひさ子さんにお願いさせてもらったのがきっかけで、いろんな音楽を掘り出したりしたので。でもたぶん、詩羽ちゃんも私も、世間からしたらお騒がせガールズなので。
詩羽:そうなんだ。
アユニ:いや、わかんないけど(笑)。好きなことをいっぱいしたくなっちゃう人だから。だから私は、たぶん自分が同世代の子、例えば学生からの友達で音楽やろうぜってバンドを組んだら、絶対すぐ解散してたと思うんですよ。誰も私のことが手に負えなくて。だから今、レジェンドたちにサポートメンバーとして囲まれてる環境っていうのが、音楽を好きになるきっかけだったと思うし、音楽を探求したくなるきっかけだったなって思います。ちょっと質問とずれちゃいましたけど。
――そしてついに、共演ライブが決まりました。新宿LOFTが送るツーマンシリーズ。詩羽さん、去年新宿LOFTでソロのライブをやりましたけど、ライブハウスってどんな印象がありますか。
詩羽:私は結構ライブハウスが好きで、水曜日のカンパネラではホールツアーを初めて回らせてもらったんですけど、ホールツアーはお客さんの顔もはっきり見えるし、いいところはたくさんあるんですけど、ライブハウスのステージから見た、お客さんがぎゅうぎゅうになって必死にその音楽に夢中になってる姿を見るのが私は好きだから、ライブハウスは好きですね。
アユニ:ライブハウスは天国だと思います。日頃の生活の中で、道端でいきなり叫んだりしたらもちろん怒られるじゃないですか。そういう日々の感情を全部チャラにして、全部この場に置いて、同じものを好きな人たちと楽しめる空間、ライブハウスってそういう場所だと思います。物理的な話で、人との距離が近ければ近いほど、熱量とかナマ物感っていうのは如実に見えると思うので、人の匂いとか、音楽の体温とか、そういうものはライブハウスでしか味わえないと思います。
――6月25日、Zepp Shinjuku。どんなライブになりそうですか。
詩羽:お互いのお客さんの感じは、遠からずな気がするので。PEDROのファンの人も、私のソロでファンになってくれてる人たちも、やっぱり情熱的というか、心の内にぐちゃぐちゃがある人たちがすごい多いのかなとは思うので、そういう意味で遠くない気はするからこそ、どっちのお客さんにもとてもいい日になるんじゃないかなと思ってます。
アユニ:特別な日にします。したいです。自分も普通にお客さんとして見に行きたいライブだなってすごい思います。それをできる立場として、めちゃくちゃ楽しみたいと思ってます。
――もしかして、絡みはありそうですかね。
詩羽:どうなんだろう。何も決まってないから。何ができるんだろう?
アユニ:コラボってどうなんですかね。みんな楽しみなのかな。
詩羽:わかんない。ファンの気持ちは(笑)。
アユニ:どんなスタンスで向き合うか、それぞれ考えてみたいと思います。期待されてるから絶対やらない、みたいな選択肢もあるんで。
詩羽:前向きに検討させていただきます(笑)。
――最後に、お互いへエールをぜひ。
アユニ:詩羽ちゃんは、ソロだし、好きなように思う存分してほしい。それだけです。
詩羽:うん。私もアユニちゃんは、いつものようにステージで暴れてくれれば、それがいいライブになると思ってるので。
アユニ:「遊ぶ」っていう表現が合ってるのかわからないけど、久しぶりに全力で遊ぶので。頑張ります。
詩羽:頑張りまーす。
取材・文=宮本英夫 撮影=大塚秀美