井田中ノ町伊藤さん 地域の思い出、後世に残す 自宅の蔵に記録を収集
昭和30年代の古いモノクロ写真には、未舗装の尻手黒川道路と市バスの井田営業所が写る――。井田中ノ町の伊藤稔さん(80)が自宅の蔵を改装し、写真や古道具などをコレクションしている。
「昭和の時代に急速に街が発展し、昔の面影がなくなってしまった。もっとこの地域のことを知ってもらうために、思い出の品を残していきたいと考え、収集を始めました」と伊藤さん。コロナ禍に余裕ができた時間を利用し、先祖や家族が残した昔の写真をはじめ、火鉢、きね、穀物の選別やちり取りのように利用した竹で編んだ民具「箕(み)」など、実際に使われ蔵の中に眠っていた道具を整理することにしたという。
終点だった昭和32年の未舗装の井田バス停、尻手黒川道路から井田病院に上がっていく入口のところに工事用のトロッコのレールが残る昭和30年の風景、市の名所だった井田堤の桜を楽しむ人々の写真などが壁一面に飾られている。「ずいぶん昔のように感じるが、わずか70年ほど前のこと。誰かが残していかなければ、このままでは忘れられてしまうという危機感を感じている」。蔵の中には、まだまだたくさんの「昭和のお宝」が眠る。
コレクションは一般に公開はしていないが、残していくことで後世に伝えていきたいと伊藤さんは願う。