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「最終章は、第1章から第3章までのすべてを内包しているのかなと思いました」『チ。 ―地球の運動について―』アルベルト役・石毛翔弥さんインタビュー|ラファウから始まったこの物語の終着点を見届けてほしい

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

多くの人々が「天動説」が正しいと信じていた時代に、異教徒と呼ばれ、弾圧を受けながらも「地動説」の解明に命を賭けてきた人々を描いたアニメ『チ。―地球の運動について―』(原作:魚豊)。

2024年10月に放送を開始し、第1章から第3章を経て、最終章に突入しましたが、3月15日(日)の第25話の放送でついに最終回を迎えます。

壮大な物語がどんなラストを迎えるのか注目が集まる中、最終章のメインキャラクター、アルベルト役の石毛翔弥さんへインタビュー!

作品の魅力や、アルベルトを演じるにあたって意識した点、第24話を振り返っての感想、そして最終話の放送へ向けたメッセージなどを語っていただきました。

 

 

【写真】『チ。 ―地球の運動について―』石毛翔弥が最終章から感じたもの/インタビュー

二度目の挑戦で念願が叶う。オーディションでは、ほぼすべてのシーンを演じた!?

──『チ。―地球の運動について―』の原作を読んだ印象と魅力を感じた点をお聞かせください。

石毛翔弥さん(以下、石毛):第一章のラファウから始まって登場人物全員に信念があり、命をかけてでもやり遂げようとする力強さや美しさを感じました。アルベルトもそうですが、人との出会いが運命を変えたり、尊いものであることが描かれていることが魅力的だなと思いました。

 

 

──各章に主人公がいて、それぞれ次の章に物語が繋がっていますが、単体の物語としても見応えがあるのがすごいですね。

石毛:一見歴史ものに見えながらも、実はフィクションだからこそできる構成や展開かもしれませんね。それぞれの人物の想いや心情の描写もすごくリアルなので引き付けられます。

──第1話冒頭の拷問シーンが終わったら、ラファウのコメディっぽいシーンがあったり、緊張と緩和、ギャップの大きさも特色の1つかなと。

石毛:セリフの言葉遣いもおもしろいですよね。ラファウが「チョレ~~~!」と言っていましたが、あの時代には多分なかったでしょうし。作品に流れるシリアスな空気感を緩和してくれる役割も果たしているのかなと思います。

──フベルト役の速水 奨さんも「今の日本の感覚や言葉をうまく取り入れていて、それが物語の悲しみや残酷さを緩和しつつ、言葉では緩和できない感情がずっと色濃く表現されているのが素晴らしいなと思った」とおっしゃっていました。

石毛:そうですよね。普通は、中世っぽい世界観の中で、キャラクターが「マジ!?」とか「チョレ~!」という言葉遣いをしたら、「その時代はそんな言葉遣いしないから!」とツッコミが入りそうですが、原作がそういう言葉遣いを選択しているので、僕らもすんなり受け入れることができました。

 

 

──オーディションにはどのような気持ちで臨まれたのでしょうか?

石毛:オーディションはほぼすべてのシーンを演じましたが、アルベルトが持つ鬱々としたものや現状の葛藤などがウソにならないように、なるべく観てくださる方に実感してもらえるようにという部分を強く意識して臨みました。

──決まった時の感想は?

石毛:すごく嬉しかったです。実は一度別の役でオーディションも受けていたんですが、その時は残念ながら受かることができなくて。いち視聴者として楽しもうかなと思っていたところに、アルベルト役のオーディションのお話をいただいて受かることができたので、喜びもひとしおでした。

──物語を締める最終章のメインキャラクターを演じることへのプレッシャーはありませんでしたか?

石毛:もちろん、ありました。ラファウもオクジーもドゥラカもどなたが演じるのか知っていましたし、更に他の章のキャラクターとはほぼ関わることがないので、「最後の最後に出てきて、メインを担当するのか」というプレッシャーは感じました。

 

セリフはもちろん、一つ一つの息遣いまで、かなり繊細なお芝居を求められた収録

──演じるアルベルトの印象や魅力を感じる点をお聞かせください。

石毛:非常に考える能力が高いというか、元々好奇心が旺盛で、学びたいという知識欲も強くて。学ぶことを止めてしまうきっかけになる悲しい出来事があって、知識欲や探究心に蓋をしてしまったけれど、思考をすることは絶対に止めることはなかったと思うんです。学びはしなくても、日常生活の中で思考能力を働かせていて。教会の告解室での出来事が再び学び始めるきっかけでしたが、もしそれがなくても、いずれは自分で選択して、前へ進んでいたんじゃないかなと原作を読んでいても、演じていても思いました。

──ご自身と比べて似ている点や共感できる点はありますか?

石毛:登場時の青年アルベルトには共感しかありません。幼少期の好奇心にあふれていたアルベルト、告解室でのやり取りを経た後のアルベルトは僕自身とは重ならないなと思いましたが、告解室でとつとつとしている様子は自分に近しいなと。

でもアルベルトのように好きなことが否定されたり、止めなくてはいけなくなるのは誰にでも起こりえることで。だからこそ、アルベルトが学びをやめた理由を描いたシーンは、共感した視聴者の方も多かったんじゃないかなと思います。

 

 

──石毛さんは、勉強や学ぶことはお好きでしたか?

石毛:僕は高校で演劇部に入ってお芝居をするようになってから、どう演じるか考えたり、他の人の演じ方を観察したりと好奇心や探究心が旺盛になりましたが、それ以前は子供ながらに青年アルベルトみたいでした(笑)。好きなこともなければ、何をしたいのかもわからなくて。

中高生時代って自分のアイデンティティみたいなものを探しているところがありますよね。「どうしたらいいんだろう?」とか「自分っていったい何なんだろう?」などという疑問が芽生えてくる時期ですが、僕の場合はそれがより強く出ていて、結構鬱々とした幼少期でした(笑)。

──石毛さんとお芝居との出会いが、アルベルトにとっての告解室だったと。

石毛:芝居と出会っても明るくなったわけではありませんでしたけど(笑)。でも、「どうやったら芝居がうまくなるんだろう?」というところから始まって、演じ方や技術を磨いていきたいなという気持ちがどんどん強まっていきました。

 

 

──アルベルトを演じる上で意識した点や苦戦した点、また収録前や収録中に受けた説明やディレクションで印象的だったものを教えてください。

石毛:第23話の収録で初めて参加した時に言われたのは、「アルベルトだけということではなく、全員のキャラクターに関しても仰々しくなるお芝居をせず、自然なセリフまわしで進んでいく作品だから、劇的なセリフまわしにしなくていいですよ」と。それを意識してテストの段階から演じさせていただきました。自分なりに感情やニュアンスなどを入れないようにしたつもりでしたが、「もっとなくていい」と。アルベルトとしてどこまで引いていくか、温度感も大切に収録させていただきました。

──お芝居では感情やニュアンスをのせていく「足し算」よりも「引いていく」ことのほうが難しそうですし、かなり繊細なお芝居が求められたのでは?

石毛:デリケートでしたね。セリフ以外のことでいうと、台本上で息に関する記載がたくさんあっても、収録する時になくした部分もたくさんあって。それでも要所要所で必要な息はあるので、「形式的な息ではない息」や「日常的な息遣い」を求められる時は、自分ではほとんど音を発しないように意識したつもりでも「もっと小さくていいです」と言われたりして。一つひとつの細かい息遣いを含めて、すごく繊細なお芝居を求められる収録でした。

 

 

収録での心強い味方は、ヨレンタ役の仁見紗綾さん!?

──収録の雰囲気はどんな感じだったのでしょうか?

石毛:最終章は登場人物がとても少なくて、アルベルトが関わるのは告解室でのレフくらいで。1対1の対話の形が多かったので、ある種心地いい緊張感の中で粛々と収録させていただきました。

──シリアスなお話でも、休憩中や収録後には和やかにしているというお話はよく聞きますが、ここではそんな感じでもなく?

石毛:シーンに沿った感じかもしれません。現場も静かで、教会の中のようにとつとつと厳かな感じでした(笑)。

──そんな収録の中で話せる裏話はありますか?

石毛:ヨレンタ役の仁見(紗綾)さんは初回から参加されていて僕が収録する回にもいてくださったので、音響監督の小泉(紀介)さんからも「仁見さんが1話からすべて把握しているから、何か困ったら彼女に聞きなさい」と言われました(笑)。少しではありますが実際にお話しさせていただいたり、収録の雰囲気も聞けたので心強かったです。

 

 

──第24話ではラファウとの掛け合いもありましたが、坂本真綾さんからもお話を聞いたりされたのでしょうか?

石毛:掛け合いのシーンは少年期でしたし、収録自体も残念ながらほとんど別だったのであまりお話はできませんでした。なのでこの第24話のオンエアをご覧になって、どう思われたのかなとちょっとソワソワしています(笑)。

──ちなみに、原作者の魚豊先生とはお会いされましたか?

石毛:最終話(第25話)の収録に来てくださいました。収録が終わって、スタジオの扉を開けたらスタッフさんたちが並んでいて、その中に魚豊先生もいらっしゃったので、「ありがとうございました」とご挨拶させていただきました。ただ、ゆっくりお話しさせていただく時間はなくて。

──魚豊先生にインタビューさせていただいた時、大学の哲学科出身ということで身構えて行ったら気さくで楽しい方で、「この方がこんな壮大で、重厚な物語を生み出したのか」と驚いたことを覚えています。

石毛:そうなんですね。僕がご挨拶した時もとても優しく迎え入れていただきました。

 

各キャラクターの心情や想いが身近に感じられる“生々しさ”が詰まった第24話

──第24話について、振り返ってみた感想をお聞かせください。

石毛:第23話(「同じ時代を作った仲間」)は、ドゥラカたちが最期を迎えた後にアルベルトが登場する、いわばお披露目みたいな感じでした(笑)。そこから第24話で、「この章はこんな感じです」と提示されるので、視聴者の皆さんにいろいろな想像をしてもらえる回になったのではと思います。

──これまでの章とは違う、静かな始まり方だなと思いました。

石毛:第1章冒頭の拷問シーンのような残虐さがあるわけでもなく、コミカルさや明るさがあるわけでもなく、何気ない日常生活の一コマを描いているような時間の進み方でしたね。

──最初のアルベルトと親方との会話で、親方が職人としての気持ちを語っていたシーンは心に刺さりました。働く人誰もが共感できるような、いいセリフだなと。

石毛:石毛翔弥としては「良いこと言っているな」と思いましたが、アルベルトとしては「それは納得できないな」と、2つの想いを持ちながら演じていました(笑)。親方の懐の深さを感じたシーンでした。パン屋さんにいる時のシーンでも、アルベルトがお客さんに尋ねられて言葉に詰まっている時に「パンが焼けたよ!」と叫んでくれて。あれは意図的に助けてくれたと思うし、アルベルトのことを気にかけてくれているんだなと感じました。第25話でも親方が良いことを言ってくれるので楽しみにしていてください(笑)。

 

 

──そしてアルベルトにとって、気持ちを揺さぶるような出会いもありました。

石毛:アルベルトはレフとの会話で劇的に心情が変化したとは思っていなくて、あくまで最後の一押しをしてくれたのかなと。それもひとつの出会いですし、教会にパンを届けるように親方から言われて、到着したら誰もいなくて。あの時パンを置いて帰ることもできたけど、運命的でとても良い選択をしてよかったです(笑)。

──あと家庭教師としてラファウが登場したのも驚きました。しかも少し成長していたような?

石毛:第1章と繋がっていることへの喜びもあるし、今までは「15世紀前期のP王国」と表記されていましたが、この最終章から「1468年ポーランド王国」と明記されて「これはどういうことなんだろう?」と頭の中で想像が巡ったり、感情が乱れてしまう方もいたかもしれませんね。

僕個人の想像ですが、この第24話と第25話は、第1章から第3章までのすべてを内包しているのかなと思いました。この物語はフィクションですが、第3章でアントニがノヴァクに対して「君らは歴史上の人物ではない」と言ったり、アルベルトという人物を登場させたりと、視聴者の方の推測を曖昧にさせるところがおもしろいなと思いました。

 

 

──第24話で印象的だったシーンを挙げるとしたら?

石毛:アルベルトがとつとつと自分の生い立ちなどをしゃべり出したことと、しゃべった内容は印象深かったです。教会にパンを置いていく時に「まあ、いいか」と言ったところの空気感が好きです。

『チ。』のすごいところは、僕らが生きる現代よりも遥か昔として描かれているけれど、各キャラクターの心情や想いが身近に感じられるのがリアルなんですよね。その生々しさが第24話にはふんだんにあって、そこがすごく印象に残っていますし、演じていても楽しかったです。

 

この物語がどのような終着点に行きつくのか見届けてほしい

──ご自身が演じるアルベルト以外で、お気に入りのキャラクターを教えてください。

石毛:原作を読んだ時に好きになったのはオクジーとノヴァクで、アニメで好きになったのはシュミットです。ノヴァクは悪役ではなく、『チ。』の中で一番普通の人じゃないかなと。

 

 

──ノヴァク役の津田健次郎さんも、「ノヴァクは生活人で、拷問も当たり前の仕事としてやっていると思う」とおっしゃっていました。

石毛:そういう温度感も相まって、リアルな人間描写がされていて。最後の死に際も一番人間臭い気がしたので、好きになりました。

オクジーはあの性格に共感しやすいですし、シュミットは、演じる日野(聡)さんのお芝居も相まって、とても素敵でした。ドゥラカたちと一緒に追い詰められた時に、コインを裏表にして「これで決めていいんだな」とみんなで逃げることを選んで。そこからコインを返して、「君が逃げろ。我々が守る」と言うんですよね。最初のシュミットとドゥラカの出会いのシーンで馬車の中で信念の話をしていく中で、神に託すのではなく、自分で選択して、自分で散り際を決めて。ヒーロー然としていないからこそ、カッコよさを感じて、すごく好きになりました。

 

 

──アニメ『チ。』も残すところ、第25話のみとなりました。ここまでご覧になってくださった皆さんへメッセージをお願いします。

石毛:ここまでアニメを観てくださった方には、僕から「ここが見どころです」と紹介をする必要はもはやないと思います。ラファウから始まった『チ。』という作品の物語が、どのような終着点に行きつくのかを見届けていただきたいです。

最終章は短い話数ではありますが、視聴者の方の数だけ、感じ方が違うと思います。考察なども含めて最後まで楽しんでいただけたら幸いです。

[文・永井和幸]
 

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