世界で1000羽まで減った水鳥<クロツラヘラサギ> 東京の干潟で出会える?
クロツラヘラサギという鳥を知っていますか。長いヘラのようなくちばしが特徴の水鳥です。
その特徴的なくちばし以外は正直地味な見た目をしており、記憶には残りにくい鳥と言えるかもしれません。しかし、彼らは日本において見られること自体が珍しい、とても貴重な鳥なのです。
動物園などではよく見かけるクロツラヘラサギなのですが、自然の中でお目にかかることは滅多にありません。野生の彼らはどんな風に過ごしているのでしょうか。
クロツラヘラサギとは?
クロツラヘラサギはペリカン目トキ科に属する水鳥です。「サギ」とつきますが、トキに近い仲間です。
主に東アジアに生息し、日本には冬季に越冬のためやってくる渡り鳥。夏は朝鮮半島西海岸や中国遼東半島沿岸などの離島で繁殖します。
筆者が思う推しポイントは、その何とも言えない“トボケ顔”。
くちばしが尖っていたらカッコイイ鳥と認識していたような気もしますが、先端がヘラのようになっているためか、途端にカワイイ鳥と認識してしまいます。
クロツラヘラサギの魅力はこのカワイイ顔だけではなく、その希少性にもあります。
クロツラヘラサギは絶滅危惧種に指定されている希少種で、その数は世界で約6000羽のみ。そんな非常に数の少ない鳥を、日本の干潟でも見ることができるのです。
ちなみにこれでも個体数は回復した方で、2002年の多摩動物公園のニュース記事には「世界で約950羽しかいない」と書かれていました。
ツルよりコウノトリよりクロツラヘラサギ
筆者が初めてクロツラヘラサギに出会ったのは、東京都にある水族館「葛西臨海水族園」。2025年5月現在はリニューアル中で見ることはできませんが、本館とは別の場所にあった<水辺の自然エリア>にクロツラヘラサギは展示されていました。
大学生の時に同園で飼育実習をさせていただいたことがあり、その際にクロツラヘラサギについて詳しく教えてもらいました。
同じ展示場にタンチョウとコウノトリも展示されていましたが、その2羽と比べると知名度の差があります。しかし、私はその2羽よりも、この小さくて地味な、だけれどとってもカワイイ希少な渡り鳥のことが忘れられなくなったのです。
動物園にはたくさんいるけど……
この記事を読んでいる皆さんも、実は知らず知らずのうちにクロツラヘラサギに出会っているかもしれません。
というのも、クロツラヘラサギは日本の動物園でかなりの数が飼育されており、また繁殖もしているのです。特に多摩動物公園では、2024年10月25日時点で69羽が飼育されていたようです。
もし見たことがあっても、意識していないと中々覚えていないかもしれません。次に動物園を訪れる機会があった際は、ぜひとも意識して探してみてください。
ようやく会えた! しかし……
そんなクロツラヘラサギの野生個体ですが、実は東京にも飛来することがあります。
葛西臨海水族園がある葛西臨海公園内には、鳥たちのサンクチュアリ「鳥類園」と「東なぎさ・西なぎさ」があり、野生のクロツラヘラサギが飛来してくるのです。
4月ごろの朝早い時間には東なぎさの干潟で探食をし、昼頃には鳥類園の池の杭の上で休憩することが多いそうです。
その情報を聞いた私は、長年憧れていたクロツラヘラサギに会うため、鳥類園を訪れてみました。つい先日、カメラを新調したばかりでもあり、このカメラで同種を撮影したいと思ったのです。
飛来するというポイントにたどり着くと……
訪問した日はすっかり春らしい陽気で暖かく、気温の上昇に伴って増えたのか、やけにハチが多く飛んでいました。彼らを刺激しないよう、回避しながら奥まで進んでいきます。
そしてついに、彼らが休んでいるという池の杭が見られるポイントまでやってきました。そこには……。
いました! ついに念願かなって、野生のクロツラヘラサギを見つけることができました!
が、しかし……。全く満足するようなカットは撮れませんでした……。
想像していた数十倍は距離が遠く、いくら筆者のカメラが高性能でも望遠レンズがないと満足に撮れる状況ではありませんでした。寝ているようで、顔を拝むこともできません。
果たして、これは本当にクロツラヘラサギなのか。
不安に思って鳥類園のスタッフさんに聞いてみましたが、間違いなくクロツラヘラサギとのお墨付きをいただきました。私が撮影したのは若鳥たちで、他の大人のクロツラヘラサギはすでに飛び去った後だったようです。
鳥類園の展望台に望遠鏡があったため、悔しくて望遠鏡にスマホを直接当てて一枚撮りました。
またクロツラヘラサギに会いに行く
クロツラヘラサギに会うという目標は達成できましたが、満足に観察できなかったのが心残りでした。
価格も高く、すぐに買うことはできませんが、いずれ高性能な望遠レンズを手に入れたら、またクロツラヘラサギを観察しに鳥類園へ出向こうと思います。
その時にはさらにクロツラヘラサギの個体数が増えていることを願います。
ただ、観察だけならカメラは無くても十分に可能です。鳥類園ウォッチングセンターでは、双眼鏡の貸出も行っていますので、水族園を訪れるついでに鳥類園でクロツラヘラサギをはじめとした水鳥を観察してみてくださいね。
(サカナトライター:みのり)
参考文献
クロツラヘラサギの個体の交換-東京ズーネット