『マダム・ウェブ』不振は「マスコミが酷評したから」とソニーCEO ─ 『クレイヴン・ザ・ハンター』失敗「理解できない、悪い映画ではないはずだ」
ソニー・ピクチャーズのマーベル映画や『クレイヴン・ザ・ハンター』が不振となったのは、マスコミや批評家のせいである。ソニー・ピクチャーズCEOのトニー・ヴィンシクエラが米でメディアを断罪した。
ヴィンシクエラは2017年5月よりソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントのCEOに就任、数々のヒット作を手がけた。LA Timesのインタビューで任期中の作品のパフォーマンスについて所感を尋ねられると、「ほとんどが非常に良い結果を出しています」としながら、最新作『クレイヴン・ザ・ハンター』について「残念ながら、過去7年半の間で最悪のスタートとなっており、うまく行きませんでした」とコメント。『クレイヴン・ザ・ハンター』が受け入れられなかったことについて、「私は未だに理解できません。なぜなら、悪い映画ではないからです」と困惑をあらわにした。
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スパイダーマンの宿敵として知られる最強ハンターをアーロン・テイラー=ジョンソン主演で映画化した『クレイヴン・ザ・ハンター』は2024年12月13日に公開されると、米初週末興収はわずか1,100万ドルでスタート。これはソニー・ピクチャーズのマーベル映画として最低額だ。
さらに2週目には72.3%の大幅下落となり、現時点で世界興収は4,400万ドル程度。1億3,000万ドルとされる製作費の回収すら絶望的だ。レビューサイトのRotten Tomatoesでは、批評家スコアわずか16%となっている。
ヴィンシクエラは、一連のソニー/マーベル映画の不振はメディアにおけるネガティブキャンペーンが原因であると考えているようだ。「少し『マダム・ウェブ』にも触れておきましょう」と続けると、「『マダム・ウェブ』劇場興行の不振は、マスコミが酷評したためです。あれは悪い映画ではなかった。ではうまくいっています」と非難。「どういうわけか、マスコミは我々に『クレイヴン』や『マダム・ウェブ』のような映画を作って欲しくないと決め込んで、批評家たちがぶち壊したのです。『ヴェノム』でも同じことをされましたが、でも観客は『ヴェノム』を気に入ってくれて、おかげで『ヴェノム』は大ヒットになりました。これらの映画はひどい作品ではありません。どういうわけか、メディアの批評家によって破壊されただけです」と擁護した。
ダコタ・ジョンソン主演『マダム・ウェブ』は、未来予知能力を持つコミックのキャラクターを映画化した2024年の作品。予告編が公開された当時、ジョンソンによる妙に説明口調のセリフ回しが一部のネットユーザーの間でミーム化。以降、映画を面白おかしく見る流れが出来上がってしまった。
こうした風潮は、同シリーズ前作『モービウス』(2022)も一端を担っているはずだ。ジャレッド・レト主演、ヴァンパイアのアンチヒーローを描いた作品だが、作品に隙があったためか、ネット上では架空のセリフ「It’s Morbin’ Time」(『パワーレンジャー』セリフのパロディ)がミーム化して作品がネタにされ始める。この頃から、ソニー・ピクチャーズのマーベル映画は一部で好奇の目で見られるようになった。
『マダム・ウェブ』がこうした煽りを受けたというのも、部分的には事実だろう。メディアやSNS、YouTubeなどでネタとして消費され、作品についての本質的な議論が埋もれてしまうのは、確かに悪しき風潮である。
一方、『クレイヴン・ザ・ハンター』がメディアによって叩き潰されたという言説には、あえて反対意見も述べておきたい。
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そもそもソニー・ピクチャーズは『クレイヴン・ザ・ハンター』のレビュー解禁を、12月13日の公開直前である11日まで制限している(事前に悪評が広まることを恐れたスタジオ側の自信のなさを示しているとも言える)。批評家たちの声やRotten Tomatoesの低スコアぶりは、果たしてどれほど一般層に速やかに浸透したのだろうか?
また、解禁後に登場した海外批評家らのレビューは確かに否定的なものが多かったが、批判内容としてはそこまで的外れでもない。『クレイヴン・ザ・ハンター』には独自の魅力もあるが、一方で欠点も多い映画であり、いかなる映画もその(適切な)指摘から免れることはできないはずだ。
ともあれ2024年は、メディアやSNSと作品の不都合な関係がこれまで以上に浮き彫りになった。ソニー・ピクチャーズのみならず、ワーナー・ブラザースの『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』も、メディアによる否定的な論調が動員に響いたのではないかとする見方もある。
作品を面白おかしく揶揄してネタ化することは、実は簡単なことであり、それでいてページビューや再生回数を集めやすい。しかし批評や評論へと昇華させるためには、さらなる技術や知識が求められるものだ。もしも過激な揶揄によって知らずのうちにネガティブ・キャンペーンの一端を担ってしまい、結果として映画製作を衰退させていたとしたら?
もちろん製作側の自己責任も大きい。「ソニー最大の問題は品質管理の欠如」とする意見から、実際の映画の仕上がりを完全に擁護することは難しい。現代において、ネットの口コミが持つ影響力に適応するのは、彼らにとって宿命であるはずだ。
しかしながらヴィンシクエラCEOは、今後の『スパイダーマン』ユニバース戦略について、メディアでの酷評が大きく響いていることを次のように示唆している。「参っています。再考する必要がある。もし今後何かリリースしたとしても、作品の良し悪しに関係なく、また破壊されてしまうだろうから」。
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