【静岡県知事選挙】投票率は52.47% 前回より低下の“必然” 効果薄い安易な対策
■前浜松市長の鈴木康友氏が当選 投票率0.46ポイント低下
5月26日に投開票された静岡県知事選挙は、前浜松市長の鈴木康友さんが初当選を果たした。史上最多となる6人が立候補し、リニア中央新幹線工事や県政の刷新といった争点が投票率を上げると期待されたが、3年前の前回を下回る52.47%だった。各陣営の投票を呼びかけや、選挙管理委員会は俳優やインフルエンサーの啓発キャラクター起用は効果が表れたとは言えない結果となった。
静岡県知事選挙は前浜松市長で、立憲民主党と国民民主党から推薦を受けた無所属の鈴木康友さんが、自民党推薦で元副知事の大村慎一さんらを抑えて当選した。静岡県選挙管理委員会は開票結果を発表している。
【静岡県知事選挙の開票結果】
鈴木康友 72万8500票
大村慎一 65万1013票
森大介 10万7979票
濱中都己 2万4315票
村上猛 1万5106票
横山正文 9263票
鈴木さんは選挙戦で浜松市長時代の実績をアピールし、県内全域でも企業誘致やスタートアップ企業の育成による地域経済の活性化を訴えた。リニア中央新幹線の推進も掲げている。
今回の知事選は川勝平太前知事の突然の辞職や史上最多となる6人が立候補したことなどから、各陣営や県選挙管理委員会は投票率が上がると期待していた。しかし、投票率は、かろうじて半数を超える52.47%。3年前の前回選挙から0.46ポイント低下した。
■俳優やインフルエンサー起用 啓発キャラクター投票につながらず
投票率が下がった理由について、川勝前知事が任期途中で突如退任したため準備期間が短く、選挙の周知を広げる難しさを挙げる声がある。だが、スマートフォンを見れば知事選の情報が流れ、まちを歩けば候補者の写真が貼られた掲示板が目に入る。
辞職のきっかけとなった川勝前知事の不適切な発言は社会的な関心を集めたことから、むしろ今までの知事選よりも選挙の周知は容易だった。県議会議員の静岡市清水区補欠選挙や藤枝市長選・市議選も同じ日が投票日となり、相乗効果も一定数見込まれる。
県選管や市町の選管は静岡県にゆかりのある俳優やインフルエンサーらを啓発キャラクターに起用し、投票率アップを図った。しかし、投票率は50%を超えるのがやっとだった。
近年、静岡県内の選挙では知事選に限らず、啓発キャラクターに著名人やユーチューバー、インフルエンサーを抜擢し、投票率が特に低い若い世代に投票を呼びかける取り組みが多い。決して少なくはない税金を投入しているが、過去最低の投票率を記録する選挙もあり、成果が出ているとは言い難い。
■「薄っぺらい啓発は響かない」、「税金の無駄遣い」
また、啓発キャラクター起用の検証結果も公表されないまま、同様のPR方法を続けている。有権者からは疑問の声が数多く挙がる。
「普段から政治に関心があるとは思えないタレントやインフルエンサーに、選挙期間だけ投票を呼びかけられても何のメッセージも感じない。むしろ逆効果」
「選挙に行こう、大切な1票、意思を示そうと薄っぺらい啓発をされても響かない。選挙が決まってから投票を呼びかけるのではなく、投票に行きたくなるように政治家や行政の活動を普段から分かりやすく発信する必要がある」
「タレントやインフルエンサーを起用すると選挙が行われる告知にはなるかもしれない。ただ、その内容を見て投票に行こうとは思わない。啓発キャラクターは税金の無駄遣いに感じてしまう」
「スマホから投票できるならまだしも、わざわざ投票所に行くほど投票したい候補者はいない。誰が選ばれても大差はないので」
今回の知事選は政党間の対決が色濃く表れた。投票率は何とか50%を超えたが、自民党をはじめとする各党や連合静岡を中心とする支援団体の組織票が数字を押し上げたとみられる。誰が当選するかによって何らかの利害関係のある票を除外し、候補者の政策や人柄などから判断する“純粋な”投票率は、おそらく30%にも満たないだろう。
今や投票に行く人は少数派と言える。「なぜ選挙に行かないのか?」という疑問は、「なぜ選挙に行くないといけないのか?」という問いに変わっている。安易に啓発キャラクターを起用して情報を拡散しても、投票行動にはつながらない。日頃から政治への関心を高める根本的な課題と向き合い、現状を変えてくれる期待を抱かせる候補者が現れない限り、投票率の低迷に歯止めはかからない。
(SHIZUOKA Life編集部)