“水が、あぶない”「PFAS問題」に声をあげる女性たちの姿を描く『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』
平良いずみ監督(『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記』)のドキュメンタリー最新作『ウナイ 透明な闇 PFAS汚染に立ち向かう』が、7月26日(土)より、沖縄・桜坂劇場にて先行公開、8月16日(土)よりポレポレ東中野ほか全国公開される。
タイトルの“ウナイ”は沖縄の言葉で“女性たち”という意味
“PFAS”とは、有機フッ素化合物の総称。水や油をはじく特性をいかし焦げ付かないフライパンや防水スプレー、半導体、泡消火剤などあらゆる生活用品に使われてきた。PFASの中でもPFOSやPFOAなどは、発がん性など人体への有害性が指摘され、世界では毒性を重く見て規制が進む。
すべては2016年に沖縄県が開いた会見から始まった。「県民45万人に供給する水道の水に化学物質PFASが含まれていた」—との発表を受けて、多くの人々の反応は「PFASって何?」というもの。すぐに関心が高まったわけではなかった。やがて立ち上がる女性たちも当初は他人事だった。しかし、米国ではすでに、がん、低体重出生……などの健康影響が確認されていた。その深刻さに女性たちは気づいていく。「他のお母さんたちにも知らせなきゃ」と、彼女たちは街頭で涙ながらに訴え、調査や浄化を求める。しかし、沖縄では汚染発覚から9年経ってなお、汚染源の特定すら出来ない。なぜか!?汚染源とみられる基地への立ち入り調査を米軍が拒み続けるから。それでも、子どもたちのために諦めるわけにはいかないと徒手空拳の闘いを続ける女性たちは国連を目指す。一方、米国や欧州ではPFASの毒性を重くみて規制の波が押し寄せる。その波を起こしたのは女性たちだった。こうした国の人々は、彼女たちの声に耳を傾け、現実を変えてきた。日本人は何をしてきたか?
6月26日、イタリア北東部ヴェネト州ビチェンツァでは、PFAS汚染をめぐり、三菱商事の元関連会社役員らへ有罪判決が下された。本作の中でも、本汚染問題についての取材をしており、現地の当事者たちの声も記録されている。
「私は、執念深い」 監督である私の告白から始まる映画になりました。映画をご覧になるみなさんが凍りついてしまわないか今から気が気でないですが、笑ってもらえたら嬉しいです。この映画は、私が5年に渡り追ってきた“PFAS汚染”についての記録です。起点となったのは9年前、沖縄県民45万人が飲んできた水道水にPFAS・有機フッ素化合物が含まれていたこと。生まれたばかりの息子に水道水でつくったミルクを与えていた私は、「絶対、許さない」—そう思いました。そうして気付いた時には、世界の至る所で汚染問題の解決を求め立ち上がった女性たちに出会い、言葉の壁を越え想いが通じ合う瞬間を何度も経験しました。汚染問題に直面した彼女たちはどう生きたか……。この先、この社会がきらいになりそうな人にこそ見てほしい。絶望の涙を、ひとしずくの希望にかえて立つ女性たちの姿を。
(監督・平良いずみ)