「ガールズエンパワーメントプロジェクト」とは?スポーツを苦手な子もやめてしまった子も、みんなで楽しめるイベントづくりの秘訣
女子サッカー・なでしこリーグに所属する大和シルフィード(神奈川県大和市)では、『プレー・アカデミー with 大坂なおみ』のプログラムとしてローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団から助成を受け『ガールズエンパワーメントプロジェクト』を実施しています。
地域の小学生、U-15チームに所属する選手を中心とした中学生、トップチームの選手など、それぞれの立場で取り組み、“エンパワーメント”していくことを目指し、サッカーを楽しむイベントやワークショップ、将来の夢に向けたアクションを考えるプログラムなど、さまざまなことに取り組んでいます。
スポーツを通したこのプロジェクトの重要性、子どもたちや周囲の変化について、関係者にお話を伺いました。
『プレー・アカデミー with 大坂なおみ』とは
プレー・アカデミー with 大坂なおみは、大坂なおみ選手、ナイキ、ローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団のパートナーシップによってつくられたプログラムです。生涯を通して影響が続くと証明されている遊びとスポーツを、現代社会に浸透しているジェンダー格差を埋めるのに役に立つエンパワメントツールとして活用し、女の子の生活に変革をもたらすことを目的としています。しかし、多様なニーズに合った機会の欠如、女性コーチやロールモデルの不足、文化的な障壁は女の子が遊びとスポーツに参加する際に直面する数多くの課題のほんの一部に過ぎません。プレー・アカデミーは、地域コミュニティ団体に助成金やキャパシティ・ビルディング、研修の機会を提供することで、これらの課題に取り組み、楽しく前向きな遊び体験とジェンダー・インクルーシブなコーチング研修を受けた指導者の増加を重視しています。
大和シルフィードでは、2022年から助成を受け、地域の子どもたち向けのイベントを開催してきました。
選手と子どもたちとの距離が近いこうしたイベントは、普段あまりスポーツに親しんでいない子どもにも好評で、「〇〇選手に会いたいから参加したい」と毎年来る子もいるほどです。
女子サッカー選手だからこそ見せることのできるロールモデルとしての役割など、女の子のスポーツ環境にとって地域の女子スポーツチームが与えられる影響力の大きさ、今後の可能性を感じさせられます。
シルフィードとして『ガールズエンパワーメントプロジェクト』の意義
大和シルフィードとして、このプロジェクトに取り組む意義を代表の橋本紀代子さんにお伺いしました。
ーー『ガールズエンパワーメントプロジェクト』を始めたきっかけは?
橋本)大和シルフィードはスポーツや女子サッカーの力で、社会、地域、企業、女性を元気にする、というクラブのミッションを掲げさまざまなアクションに取り組んでいます。大和シルフィードは、もともと当時小学6年生でサッカーがとても上手な川澄選手・上尾野辺選手(2011W杯優勝メンバー)が中学生に上がるタイミングでサッカーをする場所がなく、まわりの大人たちが創設したクラブです。もとよりクラブの根底に、女の子たちがスポーツをする場所を作ろうという想い・歴史があります。
『プレー・アカデミー with 大坂なおみ』の持つ考えが私たちの目指すもの、やりたいアクションと重なっていたため、助成プログラムに応募しました。
ーー活動の意義をどのように感じているか?
橋本)小学生や中学生の子どもたちに対してというだけでなく、選手やスタッフもこのプログラムには重要な存在で、双方にエンパワーメントしあっていくことが重要です。この3年でファシリテーターとなって関わった選手の成長がみられたなと感じています。参加した子どもたちはプログラム参加後、シルフィードのホームゲームに来てくれたり、関わりができた子もいます。
長い目でみると、このプログラムの参加者(中学生、小学生たち)が将来、今の選手たちのような役割になり、次の世代の子どもたちにエンパワーメントしていく存在になったら嬉しいです。
ーー今後の活動の展望は?
橋本)本当にいいプロジェクトだと思っているので、参加者人数を増やしていきたいです。地域と連携をしながら、より多くの子どもたちにこの情報を届けつつ、今以上に、スポーツがあまり得意でない子や、イベントになかなか出てこられない子こそ参加してもらえるような形にしていきたいです。また、私たちが進めるだけでなく、企業や行政、団体などとご一緒しながら、さまざまな広がり、専門性を持って活動できればと思っています。
小学生Day!活動レポート
8月24日(土)学校法人大和学園聖セシリア小学校体育館で行われた小学生Dayには、午前・午後合わせて25名の子どもたちが参加しました。子どもたちの好き・夢を中学生、トップチームの選手たちが引き出しながら、一緒に楽しい一日を過ごした様子を写真とともに振り返ります!
トップチームの選手がファシリテーターとして誘導し、U-15の中学生が子どもたちに寄り添い一緒に楽しむ。時間が進むごとに楽しさやできた喜びがたくさん生まれ、盛り上がる空間になっていきます。
好き・夢を話すワークショップでは、選手たちが子どもたちの聞き役になります。子どもたちが夢に気づくだけでなく、選手たちがたくさんの話を引き出せるかも大きな“エンパワーメント”のポイントです。
用意されたシートは、子どもたちのたくさんの「好き」や「夢」でどんどん埋まっていきます。
編集後記
スポーツが「楽しい!」と思える場所をつくる。そして、子どもたちが「好きなこと」「夢」を見つける場所をつくる。
そんな想いが体現されているような一日になりました。好きなことや夢を一生懸命考えた子どもたちはもちろん、それを引き出してあげるために聞き役として活躍した中学生、全体を引っ張るトップチームの選手もそれぞれが前向きになり、「楽しい!」と思えたのではないかと、そのイキイキした表情から感じました。
さまざまな活動に取り組んでいる大和シルフィードから、こうした“笑顔になれる場”をつくる活動が今後も増えていくことを期待しています。