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ミニバンを使って、どこでも開店しちゃう本屋さん「ひもすがら文庫」。

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ミニバンを使って、どこでも開店しちゃう本屋さん「ひもすがら文庫」。

キッチンカーをはじめ様々な移動販売があるなかで、今回はちょっと珍しい本の移動販売車「ひもすがら文庫」を紹介します。待ち合わせ場所に現れた何の変哲もないミニバンが、あっという間に本屋さんへ早変わり。店主の高見澤さんからいろいろなお話を聞いてきました。

ひもすがら文庫

高見澤 心暖 Kokoro Takamizawa

2000年見附市生まれ。大学卒業と同時に結婚し、カフェでバリスタを務めるかたわら、2023年に「ひもすがら文庫」をはじめる。いずれは長野県に移住する予定。趣味は山登りや編み物。

どんないきさつで本の移動販売を始めたのか。

——高見澤さんは、昔から本がお好きだったんでしょうか?

高見澤さん:はい、将来は本屋さんになりたいと思っていました。ただ本屋さんで働くことはできても、自分で本屋さんをはじめるのは難しいだろうと諦めていたんです。

——そんな高見澤さんが、本の移動販売をはじめたのは、何かきっかけがあったんですか?

高見澤さん:子どもの頃に「一箱古本市」を見たことがあったんですけど、歩行者天国の道路で箱のなかに本を並べて売っている光景がシュール過ぎて、これはずっと夢で見たことだと思い込んでいたんですよ。でも数年前に再び「一箱古本市」を見て、その光景が現実のものだったと知りました(笑)

——言われてみれば、シュールな光景に見えるかもしれませんね(笑)。高見澤さんも「一箱古本市」に参加するようになったんでしょうか?

高見澤さん:はい、将来は夫の実家である長野で暮らすことが決まっているんですけど、その土地には本屋さんがないので、私が開業しようと思っているんです。そのためのステップとして「一箱古本市」に参加してみました。

——ちなみに「ひもすがら文庫」というのは、どういう思いを込めた名称なんですか?

高見澤さん:「ひもすがら」というのは「一日中」という意味なんです。「朝から晩まで皆さんが本に触れることのできる環境を守りたい」という思いでつけました。

——なるほど。それにしても、車を使った移動書店というのはいいアイデアですね。

高見澤さん:山登りのときに更衣室として使ったり、車中泊をしたりする目的で購入した車だったんです。車内で寝られるよう板を敷いてフラットになるよう改造したら、本棚を置いて本屋さんをオープンできることに気がついたんですよ(笑)。

本屋のないところで、本屋をオープンする。

——どんなところで本の移動販売をしているんでしょうか?

高見澤さん:古本関係のイベントはもちろんですけど、「本屋さんのないところで本屋さんを開く」というコンセプトがあるので、カフェやコーヒーショップ、寺院の境内でも営業してきました。「本屋さんのないところで」といいつつ、書店の脇で営業したこともあるんですけどね(笑)

——そういうお店や施設には、高見澤さんが出店のお願いしているんですか?

高見澤さん:そうですね。「ここで出店してみたい」と思ったカフェやコーヒーショップへは、しばらくお客として通うんです。オーナーさんとお話できるようになったら、それとなく移動販売の本屋さんをやっていることを告げて、遠慮がちにお願いをしています(笑)

——カフェやコーヒーショップで営業するのはどうしてなんですか?

高見澤さん:私が好きだからです(笑)。カフェでバリスタとしても働いているんですよ。「ひもすがら文庫」でもときどきドリップコーヒーを販売しています。

——そういうお店でも本は売れるのか気になります。

高見澤さん:もちろん本好きなお客様ばかりじゃないですけど、本に興味のある方は意外と多いんですよ。そのことに気づけただけでも、営業させてもらってよかったと思います。どうしたらもっと本に興味を持ってもらえるのかが今後の課題ですね。

——イベント出店もしているんですよね。

高見澤さん:はい、前年のイベントで本を購入してくれたお客様が「あなたに薦めてもらった本を読んでみたら、とても良かったので今年も来てみた」と言ってくださったんです。私を目的にイベントへ来てくださる方がいるとは思わなかったので、とっても嬉しかったですね。それと同時に「続けること」の大切さに気づきました。

売り方にこだわることで、いろいろな可能性を提案していく。

——「ひもすがら文庫」では、どんな本を売っているんでしょうか?

高見澤さん:新書や古書、ZINE(ジン)の販売をしています。売れ筋の商品よりも自分の気持ちにフィットしたものを選びがちなので、かなり偏ったセレクトになっていると思いますが、自分のカラーを出していくことが個人店ならではの魅力になってくれたらいいですね。

——どんな本が多くなりがちですか?

高見澤さん:自分の名前と同じように、心が暖かくなるようなものが多いです。私の好きな本に共感してくれて「あなたの選んだ本はなんでも読んでみたい」と言ってもらえたときは本当に嬉しかったですね。

——それは、もはやファンじゃないですか。ところで「ZINE」って何のことですか?

高見澤さん:「MAGAZINE(雑誌)」「FANZINE(ファン雑誌)」が語源になっている、個人やグループが自由なテーマや手法で作る冊子のことです。綴じていない蛇腹折りだけのものでも、ノートに手書きしたものでも「これはZINEです」といえばZINEなので、とても自由度が高く奥深い世界なんですよ。

——「ひもすがら文庫」でもZINEを扱っているんですか。

高見澤さん:とはいっても自分の作品なんですけどね(笑)。ゆくゆくはいろんな人の作ったZINEを販売したいと思っているので、お客様の反応を見るために自分で作ってみたんですよ。

——どんな内容なんでしょうか?

高見澤さん:私の日記をまとめたものなんです。自分が新潟で暮らした証を残したいので、地域名は明記するように心がけています。しっかり読んでいただくものでもないので、あえて粗めのリソグラフ印刷をしてぼんやりした雰囲気にしてあるんですよ(笑)

——これからはどのように営業していきたいですか?

高見澤さん:いずれは長野で暮らすことになりますが、新潟での出店も続けていきたいので、呼んでいただけるような下地を作っていきたいです。その上で自分にしかできないような本の売り方をしていきたいですね。例えば弥彦山を登山しながら本を売ったりとか(笑)

——なかなか攻めた売り方ですね(笑)

高見澤さん:個人店はただ本を売るだけじゃなくて、売り方にこだわることに意味があると思うんです。変わった売り方をすることで色々な可能性を提案していきたいし、本に興味を持ってもらうための取っ掛かりになってくれたら嬉しいですね。

ひもすがら文庫

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