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横田めぐみさんの弟 拓也さん、中学で講演 拉致「自分事として考えて」

タウンニュース

スライドを映しながら講演する横田拓也さん

北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさんの弟の横田拓也さん(56)が11月22日、市立王禅寺中央中学校(麻生区/高橋泉校長)を訪れ、全校生徒約340人に向けて講演した。拓也さんは、拉致問題の早期解決を望む切実な胸の内を明かすとともに、生徒たちに対して「拉致問題を自分に置き換えて、自分たちの問題として考えてほしい」と訴えた。

「この写真を見ると、ものすごく心が苦しくなる」。めぐみさんが拉致された後、北朝鮮国内で撮影されたという一枚の写真をスライドで示し、拓也さんは語った。「このような悲しい顔をした姉は見たことがない。この目から皆さんが何を感じ取るか。横田めぐみではなく皆さん自身だったら何を考えるか。誰かの話ではなく自分だったらどうしなくてはいけないのか、我が事に置き換えて聞いて欲しい」

めぐみさんは、中学1年生だった47年前の1977年11月15日、新潟市にある学校から帰宅する途中で、北朝鮮の工作員に拉致された。

当時9歳だった拓也さんは、母親の早紀江さんと弟と3人で帰宅の遅いめぐみさんを探しにいった。しかし、めぐみさんが見つかることはなかった。「幸せに暮らしていた家庭が、拉致という暴力によって一瞬にして引き裂かれた」。その日から横田家の拉致事件が始まった。

両親は子どもたちに苦しむ様子を見せなかった。だが、拓也さんは一度だけ、父親の滋さんが風呂場で息を殺して泣いている姿を見た。「なぜ父親がこんな思いをしなくてはいけないのだと、苦しくてならなかった」

問題は現在進行形

拓也さんは「拉致事件は主権国家である日本の国民一人一人に突き付けられている問題。自由や人権、平和は自分たちが責任をもって作っていくものだと考えてほしい」と言葉に力を込めた。そして「さまざまなニュースソースを見ながら、この問題が歴史の話ではない現在進行形の未解決の拉致事件なのだということを感じ、自分たちの意思表示をしてほしい」と生徒たちに呼びかけた。

応援の声、勇気に

講演後の質疑応答で、会場にいる生徒から「活動を続ける中で支えは」と問われた拓也さんは、「私たちに対する一人一人の(応援の)声が勇気になっている」と答え、「拉致問題に限らず、周りで困っている人を見かけたら声をかけてあげるということは、何にも変えがたい力になる」と話した。また、「めぐみさんが帰った時に一緒にしたいことは」との問いには、「一言目はおかえりではなく、ごめんなさいと伝える」とし、「国民の一人として、47年間の自由のない時間を強いてしまっていることに、まず謝る」と述べた。

講演会は、カワサキ・ユース・ミーティング〜拉致問題をきっかけに人権を考える〜「ある日突然、あなたのクラス・家族から1人いなくなったら」として市と市教育委員会が主催。講演の様子はオンラインで市内の生田中、大師中、南河原中、玉川中、高津中、有馬中と、一般市民にも同時配信された。講演後には拉致問題に関する中学生サミット川崎市代表生徒の大村智哉さん(王禅寺中央中3年)の作文発表も動画で流された。

同校の高橋校長は講演を振り返って、「未来を作っていくのは子どもたち。そのためにも人権について考えるきっかけをいただいた」と話した。

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