「買取大吉バレーボールネーションズリーグ2024 福岡大会」開催記念!! 大山加奈×迫田さおり SPICE特別対談<第3回 VNLが北九州にやってくる>
4年に一度の五輪。そこに出られるか、出られないかの戦いはいつも熾烈を極めたものになる。そんな経験をできる選手は数えるほど。見る者も手に汗を握る試合は、選手にとっては想像できない過酷な戦いだ。日本代表として数多くの舞台を経験し、五輪の出場権が懸かる試合も経験してきた大山加奈、迫田さおりに聞いた。
――五輪の出場権が懸かる戦いというのは、どのようなものなんでしょうか。
大山加奈(以下、大山)「言い方が難しいですが、『生きるか、死ぬか』ぐらいのプレッシャーです。もしもこれに負けたらどうしよう、と考えてしまいます。私は日本のバレー界の未来がかかっていると感じていて、その責任と覚悟を背負っていましたね。特に、私が経験したアテネ五輪予選は、その前のシドニー五輪の出場を逃していたので、絶対に五輪に出ないといけないという状況でした。2大会連続で五輪を逃すと、もう女子バレーは終わってしまうんじゃないかと言われていましたので…。あの空気はピリピリしているというような言葉では言い表せないです。それこそ悲壮感が漂っているような空気でしたね」
迫田さおり(以下、迫田)「先輩方は、五輪の切符がかかった大会は毎日寝てない状態に近いじゃないかと思うぐらいでしたね。精神力で毎日を過ごしていたんだと思います。私もあまり眠ることができませんでした。あの独特の空気感、緊張感は会場の中だけでなく、会場の外にいても同じで、ずっとピリピリしている感じです。今後のバレー界のことも考えていて、日本の皆さんの思いを背負っていましたので、いろいろと考えてしまうんです。プラス思考でいかないといけないとわかっているんですけど、もしも負けたら、これからどうやって生活していったらいいんだろうとか色々考えながらやっていました。それほどの舞台です」
――想像を絶する重圧ですね。
大山「だからこそ皆さんに、選手たちの背中を会場で押してあげてほしいです。それだけのプレッシャーと戦いながらコートに立っているので、会場にお客さんが少ないと選手たちが力を出せないこともあります。お客さんがたくさん入っていると、やっぱり心強いんですよ」
迫田「『よっしゃ、やるぞ』ってコートに入ったときに、会場が盛り上がってくれると、鳥肌が立ってさらに奮い立たせてくれるんです。練習では出せなかったものが出せるんですよ。声援が、その最後の一押しをしてくれる感覚です。私たちだけじゃないんだ、みんな一緒に戦ってくれる仲間がいるんだと思えるんです」
大山「海外の選手たちも、満員で盛り上がっているあの空気感はやりづらいって言ってますからね」
迫田「絶対、海外の選手は嫌だと思います。あれだけ一致団結した応援はなかなかないですからね」
大山「そういう空気を作り出してほしいですね。皆さんも日本代表の一員です!」
――お二人が考える、今の日本代表の魅力はどんなところですか?
大山「ベテラン勢の力をすごく感じます。岩崎こよみ選手がトスを上げていて、渡辺彩選手が活躍したり、陰で山岸あかね選手が支えていたり、ベテラン勢の存在が大きいと思いますね。日本代表がいいチームになっている時は、ベテランと若手がしっかり融合している時です。このプレッシャーかかる大会で、いろんな経験を積んできた肝が据わったベテランがいるのは主将の古賀紗理那選手にとっても大きいと思います」
迫田「めちゃくちゃポテンシャルの高い選手がそろっている中で、それぞれの選手の色を真鍋監督がどう組み合わせるのかを見ることができるのも楽しいです。誰が入っても楽しめる、誰が入っても自分の色を出せる、そういうところもいいなと思います」
――そんな緊張感あふれる試合を観戦することができ、私たちの日本代表を応援することができるチケットがまだ買えるらしいですよ!
迫田「なんと、まあ!本当ですか?応援に行くのは今だと思います!できあがったチームを見て応援するのももちろん楽しいんですけど、踏ん張っている段階の日本代表を見て、あそこで踏ん張ったから今があるね、と言えるようになるチャンスです。その踏ん張っている段階を見ることができるのは今しかないです。選手たちが模索しながら、葛藤しながらやっている今の段階を見ると、『あの時のあの選手が』と思うことができますよね。それができるのは今しかないですよ!」
大山「五輪が懸かった試合が九州で、しかも北九州で見られるのはすごく大きいことだと思います。どうしてもこれまでは東京などの大都市でやることが多かったですから。今まで会場が遠いという理由で試合を実際に観戦するチャンスがなかった方にも見られる機会があるので、ぜひ見てほしいです。今のチームは五輪本大会でメダルにたどり着ける可能性が本当にあると思うので、そこを見据えた戦いという意味でも興味深いですし、それも含めて皆さんにも見てほしいですね!」
迫田「この五輪への切符を取るために、どこの国よりも一番練習してきたと思うんです。切符を取ることは簡単なことじゃないですけど、でもその難しいことをチームが一つとなってやっていて、それができるチームだと思います。その背中を押してあげて下さい!」
――鹿児島出身の迫田さんは、九州での開催をどう感じていますか。
迫田「福岡で観戦して、鹿児島の温泉に入って帰るということもできます。代表が合宿している薩摩川内まで新幹線が通ったので、あっという間に行けます。以前は簡単に行けるイメージがありませんでしたが、日帰りもできます。そういうところで国際大会があって、パリ五輪の出場権が懸かった試合があるのはすごいことです。私が鹿児島に住んでいるときは、そういう試合は会場が遠くて見に行けないものというイメージでした。でも、今回は鹿児島だけでなく、九州の人たちは行ける距離です。九州でこんなに大事な試合が行われることは、もう一生ないかもしれないので、行くしかないです!学校が終わってから新幹線に乗っても十分間に合います!私も学生の時に見に行きたかったなぁ…」
大山「バレーボールをやっている子どもたちが今回の試合を見ることは本当に価値がある体験になります。それに、福岡は食べ物がおいしいですから、バレー観戦以外にも楽しめますよね。屋台や明太子も魅力的ですし、個人的には糸島にずっと行きたいと思っているんです。九州から来る方も、他の地域から来る方も、そういう観光と組み合わせることができるので、絶対に楽しいです」
――今回は食事やドリンクが提供されるラウンジが使える特別体験付きチケットも販売されます。海外のバレー会場では食事を食べたり、ドリンクを飲みながら観戦できる席もありますが、日本の国際大会では初の試みです。さらに、選手のお見送りを最前列で体験できるチケットなど、様々な工夫があります。選手に直接声をかけたり、触れあったりできる可能性がありますね。
大山「自分のユニフォームやTシャツ、名前が入ったタオルを持ってくれていると、やっぱりうれしいですよね。目に留まります。試合に負けた後だと難しいかもしれませんが、対応することもあると思いますよ!」
迫田「自分のグッズを持っていると、わざわざ買ってくれたんだと思ってアイコンタクトしたり、タイミングが合えば写真撮ったり、サインしたりすることもあります。応援してもらえるのはうれしいですし、ありがたいですからね。日本初の試みでしたら、初めてそれを体験する皆さんで日本の新しい文化をつくっていってほしいです!」
文・写真:Masaki