なぜ、言葉や年齢の壁を超えて楽しめるのか?参加者に聞くJICAユニバーサルスポーツフェスティバル
2024年11月10日(日)、JICA東京体育館(渋谷区幡ヶ谷)にて「ユニバーサルスポーツフェスティバル2024」が開催されました。さまざまな年齢、国籍、障がいを持った方々が集い、風船バレー・卓球バレー・ボッチャの3種目を体験しました。
今回は、JICA東京(人間開発・計画調整課所属)の本郷さんとラオス出身でJICAのラオス事務所で勤務後、現在帝京大学で修士課程在学のナムホンさんにお話を伺います。
新入職員の海外研修でラオスに滞在していた本郷さん。帰国後、滞在時に出会ったナムホンさんが日本に滞在していることを知り、「ぜひユニバーサルスポーツフェスティバルに一緒に参加しませんか?」と声掛けをしたことで、参加が実現しました。
各チームに分かれて3種目のスポーツに取り組むユニバーサルスポーツフェスティバル。2回目の参加となる本郷さんはチームリーダーを務め、はじめて参加するナムホンさんは、最初緊張はあったものの充実した時間を過ごせたと言います。
地域の子どもたちの参加が増えた2024年
ーーまずはじめに本郷さんから今回JICAユニバーサルスポーツフェスティバルに参加した経緯を教えてください。
本郷)昨年に引き続き今年で2回目の参加となります。もともと私は学生時代から「ユニバーサルスポーツ」に興味・関心がありました。また、JICAでも「スポーツと開発」という分野に携わり、「スポーツと国際協力」「スポーツと障がい者支援」といったテーマにも強い関心を持っていました。
ーー2回目のJICAユニバーサルスポーツフェスティバルはいかがでしたか?
本郷)今年は、1人の参加者としてだけでなく、チームリーダーとしても関わらせていただきました。とくに印象的だったのは、参加者の年齢層の広さです。今年は若い方の参加が多く、子どもから高齢者まで幅広い層の方が参加しているように感じました。
ラオスでの出会いをきっかけに日本のユニバーサルスポーツフェスティバルに参加
ーー日曜日を開催したことや、地域の学校や自治体、PTAの協力のおかげもあったと伺いました。地域の方の協力のおかげで、さらにさまざまな方に参加いただいたのですね。ナムホンさんが今回ユニバーサルスポーツフェスティバルに参加した経緯も教えてください。
ナムホン)ラオスで勤務していた時に出会った本郷さんにお声がけいただき、今回参加することができました。最初は日本語での会話に不安があり、緊張していましたが、イベントに参加していく中ですぐに緊張はなくなりました。
ラオスで出会った、本郷さんとナムホンさんの様子 ラオスのお祭り・バーシー儀式体験 参加者に伝統的な糸や腕輪が贈られ、絆を深める機会となるようです。
ーー本郷さんとの素敵なご縁があったのですね!緊張がほぐれたきっかけは何だったのですか?
ナムホン)最初に会場に到着した際、JICAスタッフが優しく英語で会場案内をしてくれました。会場に入ったあとも、同年代の方や年上の方が優しく声をかけてくださり、自然と緊張がほぐれました。
ゲーム中は、チームリーダーや本郷さんが英語でルール説明を1回ごとに丁寧にしてくださったので、しっかりと内容を理解しながらゲームに参加することができました。何より、チームリーダーの方の積極的な声がけが一番良かったと感じています。
ーーユニバーサルスポーツフェスティバルでは、風船バレー・卓球バレー・ボッチャの3種類のスポーツが実施されましたが、2人がとくに「おもしろかった」「楽しかった」と感じたスポーツを教えてください。
本郷)私が一番楽しいと感じたのは、風船バレーです。風船バレーでは、プレー中にアイマスクをつけてプレーする場面がありました。私のチームでアイマスクの体験をした方は、「見えないことはとても怖く、孤立しているように感じた」と話していました。
積極的に声をかけたり名前を呼んだりするなど、風船バレーはチームワークが大切なスポーツです。視覚に頼れない状況でのスポーツは、チーム全体の連携を強く求められるもので、とても興味深い体験でした。
ナムホン)私も風船バレーです。コミュニケーションが重要なスポーツで、あとは障がいの有無に関わらず全員が貢献して、点を取り、一緒にプレーする。誰1人として取り残さず、みんなで協力してプレーするスポーツだと感じました。
ーー本郷さんは今回チームリーダーを務めたと伺いました。チームリーダーとして、印象的だったシーンがあれば教えてください。
本郷)私のチームには小学生の男の子が1人で参加していました。最初はお母さんとチームが離れてしまったこともあり、少し緊張しているように見えました。
ですが、ゲームを進めるうちに、チームの方々が積極的に声をかけてくれて、その男の子も徐々に表情が柔らかくなってきました。ゲーム中に得点を取る場面があるとみんなでハイタッチをして盛り上がり、その小学生の男の子も自然とまわりの参加者とハイタッチを交わしていて、みんなで一緒に楽しんでいる姿がとても印象に残っています。
「勝つため」ではなく、「みんなで楽しむため」
ーーユニバーサルスポーツフェスティバルらしい、素敵な光景がイメージできました!ナムホンさんは印象的なシーンはありますか?
ナムホン)私のチームもお母さんと一緒に小さな女の子も参加していました。年齢はおそらく3〜4歳くらい、もしかするともっと小さいかもしれません。
ゲーム中に、パスを受けたあとに得点を決めるのは簡単ではないと皆さんもわかっていましたが、それでもその子が楽しめるようにパスを回していて、とても温かい雰囲気でした。参加者の皆さんが「勝つため」ではなく、「みんなで楽しむため」にプレーしていたことが印象的でした。
ーーユニバーサルスポーツを通じて、幅広い年齢の方や多様なバックグラウンドを持つ方との交流をすることで、日々の生活に繋がる学びもたくさんあったと思います。
本郷)いろいろな年齢層の方々と1つのチームで活動することは、普段の職場ではなかなか経験できない貴重な学びでした。子どもから高齢者まで関わることで、コミュニケーションの大切さを実感しました。
また、スポーツにはコミュニケーションの“入口”になる力があると強く感じました。最初は緊張していた参加者も、スポーツを一緒に楽しむ中で打ち解け、イベント終了時には友だちのように話している姿が印象的でした。短い時間でも、スポーツが生む絆の強さを目の当たりにしました。
ナムホン)ユニバーサルスポーツを通じてたくさんのことを学びました。よいコミュニケーション、チームワーク、他の方々を理解すること、怒らないこと、そして、他人をジャッジしないこと。
また、今回の参加を通して、「勝つため」ではなく「楽しむこと」が大切だと実感しました。障がいの有無に関係なく、誰1人取り残されることなく、全員がチームワークを築いてプレイすることができ、価値ある体験が生まれたと感じました。
楽しいだけではなく、学びも多いユニバーサルスポーツ
ーこのユニバーサルスポーツフェスティバルは他の地域でも開催されていて、JICA東京ではまた来年も開催予定でもあると思います。「こんな人に参加してみてほしい!」というメッセージがあれば教えてください。
本郷)私は以前東京パラリンピックの運営に関わったこともあり、『ユニバーサルスポーツ』には馴染みがありますが、日本全体ではまだまだ認知度が低いと感じています。
ユニバーサルスポーツは、スポーツが得意な人も苦手な人も楽しめる、誰にでも開かれたスポーツです。言語や性別、障がいの有無といった壁を超えて、誰もが一緒に楽しめるイベントだと思うので、ぜひ多くの方に参加してほしいです。
また、現在、JICAでは「スポーツと開発」という分野を強化する動きがあります。スポーツをツールとして国際協力や社会課題の解決に役立てる取り組みが進められており、特に紛争国での平和構築などにスポーツの力が活かされようとしています。
私自身も所属部署で、スポーツをどのように社会課題の解決に結びつけるかを考える研修を担当しています。スポーツは単なる遊びの要素にとどまらず、多くの可能性を秘めていると感じており、個人的にもこの分野に強い興味を持っています。将来的には、このような取り組みに引き続き携わっていきたいと考えています。
ーー素敵な想いですね!ユニバーサルスポーツでのご経験も、本郷さんがこれから取り組んでいきたいことに繋がっていきそうです。ナムホンさんもぜひ、メッセージをお願いします。
ナムホン)今年初めてユニバーサルスポーツフェスティバルに参加しましたが、来年もぜひ参加したいと思います。
ユニバーサルスポーツは、パラスポーツにも通じるものがあり、挑戦してみたい方にとてもおすすめです。また、さまざまな人と関わり、新しい経験をしたい方にもぴったりだと思います。ぜひ参加してみてください。
ーありがとうございました!