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挫折の連続だった発達障害息子の習い事。不登校の日々で出合った「一生モノの趣味」とは?

LITALICO発達ナビ

挫折の連続だった発達障害息子の習い事。不登校の日々で出合った「一生モノの趣味」とは?

監修:藤井明子

小児科専門医 /小児神経専門医/てんかん専門医/どんぐり発達クリニック院長

「こんな子に育ってくれたらいいな……」親のエゴで習わせ始めたリトミックでいきなり出鼻をくじかれる(汗)

コチ丸が保育園の年少に上がる前、私は早くも「何か習い事はできないかな」と考えていました。最初に体験教室に連れて行ったのはリトミックでした。私自身、幼稚園の頃からピアノを20年くらい習っており、その後もバンド活動をしたり、好きなアーティストのライブに通っていたりと、音楽は私の中で生活と切っては切れないもので、音楽が好きな子になると良いなぁという親の勝手なエゴと安易な考えからでした(笑)。

同時にリトミックなら「周りの友だちとも協調性ができるのではないかな」と、期待もありました。私自身が幼稚園〜中学生頃まで場面緘黙で学校では一切口をきけず、友だちをつくることができなかったという経験があり、わが子には、早いうちから人との関わりに慣れてほしいという願いもありました。

実際に教室に行ってみると、コチ丸は私の横から頑なに離れることなく、1か月間あった体験教室は一度も友だちの輪に入ることなく終了しました(汗)。

その後、精神的な強さや礼儀の大切さが身につきそうな柔道はどうかと思い、そちらにも体験教室に行ってみましたが、やはり1か月、コチ丸は私の隣から離れることはなく、ずっと泣き通しの地獄絵図のような時間を親子で過ごすのみ……。柔道も続けることはあきらめ、習い事への淡い夢は、私の中でそっと幕を下ろしました。

当時まだ、コチ丸は発達障害の診断も受けておらず、「じっとできない子」という程度にしか捉えていなかった私には、思い通りにいかなかったこの習い事への挫折はなかなか大きなものでした。

1か月もあれば、スタートがコチ丸と同じような状態でも、大体の子は少しずつ輪の中に入っていくのですが、コチ丸の頑固さといったら……。でも周りの変化に敏感なコチ丸にしてみたら、知らない環境に突然入れられて、苦痛で仕方なかったことと思います。もう少し後だったら、本人の意思も聞かず、私の希望だけで決めるなんてことはしないのですが、当時はやっぱり、初めての子育てに「こんなふうに育ってくれたらいいな」という夢もあったんだと思います。

今となってはそんなことに必死だったなんて……と過去の自分を笑い飛ばせますが、当時は理想と現実とのギャップに相当疲弊していました。

自分の意思で始めた剣道。レールに収まるのはやっぱり苦手……

その後、コチ丸は小学生になり、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けました。ちょうどその頃、コチ丸が「剣道を習いたい」と自発的に言い出しました。

学校にも行かなくなりつつあった頃だったので、何か外との接点が持てることがあればと思い、当時通っていた小学校の体育館を借りて、練習を行っている道場に通い始めました。同級生の子も何人か習っていたので、ちょっとやってみるか……と言う軽い気持ちで始めてみました。

保育園の頃のように周りに馴染めないということもなく、友だちもすぐでき、自分がやりたいと始めたことだったので最初は楽しそうにやっていました。が、入った後に知ったのですが、そこは全国大会を目指しているような、かなり本気な道場だったのでした(大汗)。先生も厳しく、親同士の上下関係、体調が悪くても休みづらい稽古……。もともと体育会系でもなかった私ですがコチ丸の意思があるなら、と気合いだけで続けておりました。しかし、先に根をあげたのはコチ丸のほうでした(笑)。

毎回習い事の始まる頃になるとお腹が痛くなりはじめ、行きたくないと言い出すのですが、先に書いた通り、体調が悪くても休みづらい道場。週4回の練習のたびに「今日は体調が悪くて……」と連絡をすることが苦痛で仕方なかったです。コチ丸は剣を持つことは好きでしたが、ガチガチに決められたプログラムの中で教えてもらうことやバテバテになるほどやりたいわけではないようでした。

何万円もかけて防具を一式買い揃えましたが、1年も経たないうちに終了しました。私も、強い言葉で生徒たちの自尊心を傷つけるような昔ながらの指導法に違和感を持っていたので、私たち親子にとってはすぐ辞めて正解だったのかなと思っています。自由人な2人にはガチガチに固められたプログラムや上下関係のキツさは合わなかったんだと思います(笑)。

そのほかにも、習い事の定番ですが、小2の頃からスイミングも習い始めました。こちらは4年ほど続け、大きく何かが変わったということもないのですが、級が上がればそれなりにうれしかったようですし、泳げるようになったのは良かったのではないかなと思っています。学校を休んでいても、スイミングで週1回は必ず体を動かすことができたので、運動にもなっていたと思います。

好きなことをとことん!先生との相性もマッチして、自分の人生を生きていくための武器に!

剣道をやめてしばらく経ち、次にコチ丸が習いたいと言い出したのはドラムでした。小学校の先生から、音楽の時間に「コチ丸くんはリズム感もあるしドラムをやったら?」と言われたらしく「やってみたい!」という本人の希望から始まったものでした。

ドラムを始めたのはコチ丸が小6の時で、その頃にはほぼ小学校には行っていませんでした。私としては、剣道と同じく外への接点を持ってほしいという思いもありましたが、それ以上に音楽は世界共通のものなので、どこにでも持っていける武器になるという期待もありました。

コチ丸はドラムを中学卒業まで習いました。何が良かったかと振り返ると、一番は先生との相性だと思います。先生はとても穏やかな方で、音楽の趣味もコチ丸とあっていたので「次何やる?」と言われた時にコチ丸の持ってくるマニアック(笑)な曲にも対応してくれ、練習を怠っても怒ることもなく、穏やかにその時やれることを教えてくれていたようです。好きなことを好きなように、無理なく。自分の興味関心を黙々と追求するコチ丸には合っていたのかもしれません。

そして、そこそこドラムが叩けるようになってくると、どんどん夢中になって、自分でスタジオを借りて練習するまでになりました。中学では軽音楽部に入り、先輩たちに混じって活躍しました。

勉強は本当にできませんでしたが、ドラムという趣味と特技を一つ持ったおかげで、コチ丸は小学校の時から失いつつあった自信を取り戻し、自分が周囲に必要とされる存在だと思えるようになり、自己肯定感も上がりました。高校に入って北海道に行くためにドラムを習うことは辞めましたが、ドラムは学校まで送り(送料……汗)、今でも文化祭の時期になると大活躍しています。

執筆/あき

(監修:藤井先生より)
あきさんがコチ丸さんのために良かれと始めた習い事は、年齢が幼いこともあり、長続きしなかったようですが、それがあったからこそ、コチ丸さんが自分で好きな習い事にたどり着けたような気がします。社会性を少しでも身につけさせたいとチーム競技の習い事に入れたり、体力をつけるために運動をと思っても、それはお子さんの気持ちがあってこそのことです。また、指導にあたる先生の方針と、親御さんが習い事に求めること、お子さんが習い事で求めることがなるべく同じ方向を向いているのが望ましいと思います。ドラムを通じて、文化祭で活躍するまでに成長された姿がとても良いと思いながら読みました。ありがとうございました。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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