ひとりじゃない健康づくり!社会全体で支える「新時代のヘルスケア」とは?
健康寿命を延ばすには正しい生活習慣など日々の積み重ねが大事。その努力を個人任せにせず、社会で取り組む時代が始まっています。
教えてくれたのは…
千葉大学予防医学センター センター長 櫻井健一さん 千葉大学予防医学センターは健康関連の調査・研究 を社会に還元する研究拠点です
自然に健康になれる環境づくりとは
良好な食生活や運動を心掛けること、検診などで生活習慣病の早期発見や重症化を防ぐこと。
健康意識の高い人には届くこれらのメッセージも、関心のない人には響かないのが現状です。
関心があっても経済状況や住環境などから生まれる「健康格差」によって、健康的な生活を送れない人もいます。
そこで「健康日本21(第三次)」(下記参照)では、個人に働きかけるだけでなく、社会環境を整えることで国民の健康レベルの底上げをしようとしています。
健康日本21とは
健康寿命の延伸と健康格差の縮小を目指す国の施策。第三次は2024年から2033年まで実施され、誰一人取り残さない健康づくり実現のため、自治体や企業と連携して社会環境の整備に取り組みます。同時に、胎児期から高齢期までの各段階で必要な生活習慣の改善や健康支援を行います。
具体的な取り組みの一つが「かよいの場」づくり。
気軽に集える場があると社会とのつながりができ、活動量が上がってフレイル(虚弱※1)予防にも。
※1…フレイル…筋力や認知機能が低下した、健康と要介護の間の状態
自分の町を「住みやすくて良い地域だ」と感じること自体が健康に良いという研究報告(※2)もあります。
※2…「健康な街」の条件―場所に着目した健康行動と社会関係資本の分析(埴淵知哉、近藤克則、村田陽平、平井寛)
「思わず歩きたくなるような街」づくりにも注目。
健康のためではなく「楽しいから」「ポイントが付くから」などの理由で歩いた結果健康になる…という仕掛けで、一部の自治体で取り組みが始まっています。
面白そうな企画から参加してみてはいかがでしょう。
あなたの取り組みが次世代の健康に
20年ほど前から、過去の環境や生活習慣が後の健康状態に影響するという考え方が浸透。
過去には胎児期も含まれ、生前から良い環境をつくることが重要とされます。
つまり皆さんの健康は自分だけでなく将来世代の健康にも影響する可能性があるということ。
そう考えると、やはり基本的な生活習慣の改善は大事!毎日コツコツ頑張りましょう。
次世代に健康をつなぐエコチル調査とは?
全国約10万組が参加の大規模調査
エコチル調査は、環境省が2011年から実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査」です。
調査の目的は、子どもの成長・発達に影響を与える環境要因を明らかし、子どもたちが健やかに成長できる環境をつくること。
化学物質、生活習慣、社会や家庭の環境、遺伝子など多角的な視点から、それらが子どもの健康状況にどう影響するかを分析します。
全国約10万組(千葉県では約6千組)の親子を対象に、母親の妊娠中から定期的に健康状態を確認し、子どもが40歳になるまで追跡調査を行っています(2050年頃終了予定)。
かつて先進国を中心に、環境と子どもの健康について調べる調査への機運が高まったものの、事情により頓挫した国もある中、日本では本格的な調査を継続中。
得られたデータを基に、子どもたちが健やかに成長できる環境や、安心して子育てができる社会の実現に役立てることが期待されています。