主人公たちは「家事」や「普通のこと」が苦手 【親子で読みたい漫画】『デキる猫は今日も憂鬱』『君と宇宙を歩くために』
『月刊少年シリウス』の山口崇編集長に「親子で読んでもらいたい」5選。4回目は、生活能力が壊滅的なOLと飼い主に変わって家事を完璧にこなす大きめ黒猫のコメディー漫画『デキる猫は今日も憂鬱』(著:山田ヒツジ)と、「普通」のことが苦手な、正反対の2人の高校生の物語、『君と宇宙を歩くために』(著:泥ノ田犬彦)の2作品です。
【親子で読みたい漫画】『デキる猫は今日も憂鬱』『君と宇宙を歩くために』『月刊少年シリウス』の山口崇編集長が選ぶ、「親と子それぞれの観点で楽しめる」漫画5選。今回は2作品をまとめてご紹介。1作目は、家事に関わるすべての人、必読! 「こうだったらいいな」という理想をかたちにした大きな黒猫・諭吉が登場する『デキる猫は今日も憂鬱』(著:山田ヒツジ)。
2作目は、マンガ大賞2024受賞! 「普通」のことが苦手な正反対の高校生の物語、 『君と宇宙を歩くために』(著:泥ノ田犬彦)です。
デキる猫は今日も憂鬱
『デキる猫は今日も憂鬱』著:山田ヒツジ(講談社)
あらすじ
周囲からは“デキるOL”と認知されている福澤幸来は、実は生活能力が壊滅的。彼女の暮らしを支えているのは、人間ほどの背丈の大きな黒猫、諭吉だ。料理、洗濯、炊事、買い出し、ご近所づきあいまでなんでもパーフェクトにこなす諭吉こそ、まさに空前絶後の“デキる”猫! そんな諭吉と幸来の暮らしを描く。
ワーママにも専業主婦に響くキャラクター「諭吉」
山口崇編集長:お子さんの感想としては「諭吉、かわいい!」と思ってもらえれば十分(笑)。「ごはん、おいしそう」と思ってもらえたらよりラッキーだし、「諭吉のこれ、食べたい!」ということで好き嫌いが少しでも減ったらいいなと思っています。
そして親御さん的、とくに家事を担う方にはわかりみしかないと思います。諭吉はまさに“理想のハウスハズバンド”。家事を完璧にこなし、余計なことは言わず、大きな体で包み込んでくれる。
それがイヤという方もいらっしゃるかもしれませんが、おおむね皆さんが「いいな」と思う要素を諭吉は全て備えているのです! ワーママのみならず、専業主婦の方にも相当響くキャラクターではないでしょうか。
それに、一番の魅力は「家事をやってくれる人がいる」ことへの感謝があるということ。家事に関わる全ての人の理想のかたちが、諭吉だと思います。
【デキる猫は今日も憂鬱】1話目を読む
君と宇宙を歩くために
『君と宇宙を歩くために』著:泥ノ田犬彦(講談社)
あらすじ
勉強もバイトも続かずドロップアウトぎみのヤンキー、小林。ある日、彼のクラスに変わり者の宇野が転校してくる。小林が先輩から怪しげなバイトに誘われていたところを宇野に助けられ、二人の距離は縮まっていく。「普通」が苦手な2人が、各々の壁にぶつかりながらも楽しく生きようとする姿を描く友情物語。
“普通”が難しい主人公を真正面から描いた衝撃の作品
山口崇編集長:・この作品を初めて読んだとき、“普通”が苦手な、“普通”が難しい人たちのことを真っ向から描いている!と感動しました。あまりにも感動して、その足で担当編集を褒めちぎりに行ったほどです(笑)。
もちろんこれまでも、そういうキャラクターはさまざまな漫画に登場していて、あくまでも「そういう人、いるよね」でおさめていることが多いのですが、『君と宇宙を歩くために』は、真正面からそこに組み合っている人たちの話で、衝撃を受けました。
作品の中では、“普通”が難しい人のことを周りが受け入れ、理解しよう、向き合おうとする世界が描かれています。それをできるだけ平たく、キャラクターを通して物語が真っ直ぐに入ってくる作り方をしています。その配慮に僕は読んで思わず深呼吸し、背筋が伸びました。
当然フィクションではありますが、現実もこうあるべきだと僕は素直に受け取りました。だから「みんな、この作品を読むべき!」と声を大きくして言いたいです。
─◆─◆─◆─
山口編集長が選んだ、おすすめ5作品。ぜひ親子で読み、お互いに気がついたことなど、感想を言ったり、漫画を通して子どもの新しい感性や可能性を見つけるきっかけになるといいですね。
取材・文/木下千寿