「放浪記」の林芙美子命日に思いはせ 花柳紀寿郎さんから高田文化協会へ献花引き継ぐ
新潟県上越市の直江津にゆかりのある自伝小説「放浪記」の著者、林芙美子(1903~1951年)の命日となった2025年6月28日、同市の舞踊家で直江津駅前通りのカフェ「なおえつ茶屋」店主の花柳紀寿郎さん(85)らが荒川橋たもとにある「放浪記」の文学碑に集まり、手を合わせた。芙美子の命日には毎年、花柳さんが文学碑へ献花してきたが、今年9月にカフェを閉店して転居することから、来年度以降は高田文化協会が顕彰を引き継ぐことになった。
《画像:文学碑に手を合わせる参加者たち》
花柳さんは17歳のときに「放浪記」と出会って以来、すっかり芙美子に心酔した。16年前に開店したなおえつ茶屋では芙美子の作品や写真も置き、メニューに「芙美子ブレンド」と名付けたコーヒーを提供。ファンも集い、芙美子を偲ぶ会なども開いてきた。
2011年3月、荒川橋西詰めに「三八朝市周辺まちづくり協議会」が「放浪記」の文学碑を設置。花柳さんは毎年命日には欠かさず手を合わせてきた。2021年には生死をさまよう大病を患ったが「放浪記」は離さず、「めげている暇はない」と自身を鼓舞したという。
《画像:文学碑に触れ、芙美子への思いをはせる花柳さん》
この日の献花には高田文化協会の宮崎俊英事務局長らも参加。芙美子が生前好んだとされるアジサイの花や「放浪記」に登場する直江津名物の「継続だんご」、「芙美子ブレンド」などが供えられた。参加者たちもコーヒーを味わいながら芙美子への思いをはせた。
《画像:献花の後は「芙美子ブレンド」を味わった》
花柳さんは閉店後、芙美子が少女時代を過ごした広島県尾道市に移り住む。宮崎事務局長は、「(花柳さんが)毎年献花をされていたことは知っていた。(協会で)顕彰を引き継ぐことは当然の活動だと思う」と話した。
《画像:花柳さんから宮崎事務局長に「放浪記復元版」が手渡された》
花柳さんは今後も芙美子の顕彰が継続することについて「すごくうれしい」などと感謝の思いを語り、「芙美子に支えられてきた。店は終わるけれど、どこにいても芙美子への思いは変わらない」とほほ笑んだ。