【静岡の高校サッカー戦後史Vol.62】元柏レイソルの伊達倫央らを擁する清水商業(現清水桜が丘)が1983年度、全国総体4強入り
【清水商⑦】総体準決勝 PK戦で涙
※2011年3月〜11月に「静岡の高校サッカー 戦後の球跡」のタイトルで静岡新聞に掲載した連載を再掲しています。年齢等も掲載当時のままです。静岡サッカー応援アプリ「シズサカ」でまとめてご覧いただけます。
1979年(昭和54年)度総体8強、81年度選手権4強に続き、83年度の清水商は総体で4強入りし、全国上位常連校としての地位を確固たるものにする。
愛知県開催の総体本番は上位に食い込んだが、県予選は主将の芦沢敏之(東芝)ら主力にけが人が続出し、苦しい布陣での戦いを強いられた。それでも、準決勝まで無失点と踏ん張り、決勝に進出した。
三浦泰年や向島建らの静岡学園と激闘
決勝の相手は、三浦泰年(J北九州監督)、向島建(J川崎スタッフ)らを擁する静岡学園だった。試合は静岡学園が前評判通りの強さを発揮し、清水商は防戦に追われた。「とにかく苦しかった」と左サイドバックの望月敬之(ヘアーサロンハルカ)。
だが後半18分、ワンチャンスを逃さず、佐々木健三(静岡銀行)が決勝ゴールをたたき出して、1−0で競り勝った。V決戦も無失点で切り抜け、スイーパーを務めた伊達倫央(J清水スタッフ)は「しのいで勝った」と振り返る。
苦しみながらの県予選突破に、監督の大滝雅良(静岡市清水区在住)は「頑張れば道は開けることを教えてくれた」と受け止めた。控えに回った3年生の存在も大きかった。2年生のスタメン組だった杉山広晃(焼津市役所)は、「いつも後押ししてくれたから下級生が思いきりプレーできた」と強調する。
四日市中央工との準決勝は…
全国総体はけが人も戦列に戻った。1回戦で盛岡商(岩手)を4−1で圧倒し、その後、前橋工(群馬)守山(滋賀)真岡(栃木)と連破して4強入りした。
ここまでは順調な歩みをみせたが、準決勝の四日市中央工(三重)戦は立ち上がりから守勢に回り、「気が付いたら」(伊達)スコアは0−3。しかし、前半終了直前、交代出場の1年生、江尻篤彦(日本サッカー協会)がゴールを奪った。この1点でムードは一転。後半18分の伊達の一撃で詰め寄り、江尻が再び終了直前に決めて、PK戦に持ち込んだ。
PK戦も譲らず、迎えたサドンデスの6人目、望月敬の失敗で激闘に終止符が打たれた。望月敬は県予選決勝で静岡学園の同点ゴールを阻止して、窮地を救ったのに「話題になるのはPKのことだけ」と苦笑する。
四日市中央工は、水戸商(茨城)との決勝も競り勝って、総体初優勝を飾った。清水商は2年後、四日市中央工と今度は全国選手権の舞台で、またも相まみえることになる。(敬称略)