「中学受験」5年生が押さえるべき「単元」 6年生がひと伸びする「秘訣」 気鋭の算数専門塾・塾長が伝授
中学受験算数専門塾「フォトン算数クラブ」塾長・武井信達先生に聞く、算数が得意になる方法連載3回目。今回は、中学受験に向けた必ず押さえておくべき算数の重要単元について、教育ジャーナリスト・佐野倫子さんが伺いました。全3回の3回目。
不登校の子どもたちへ助言…「親にあきらめてもらうことが大切」 教育ジャーナリスト・おおたとしまさ教育ジャーナリスト・佐野倫子です。
「中学受験伴走(サポート)」シリーズの算数編の最終回。テーマは「必ず押さえておく単元」についてです。今回も、気鋭の算数専門塾として注目を集めている「フォトン算数クラブ」塾長の武井信達先生に直撃してきました!
佐野倫子(さの・みちこ)
東京生まれ、早稲田大学卒。航空業界・出版社勤務を経て作家・教育ジャーナリストに。おもな著書に『天現寺ウォーズ』、『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(イカロス出版)。2人の男の子の母。
武井信達(たけい・のぶたつ)
フォトン算数クラブ塾長。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了(同大学卒業)。中学受験算数指導歴30年以上。2007年に東京・自由が丘にて、算数1科のみの中学受験塾「フォトン算数クラブ」を1人で創業。現在は、自由が丘・白金高輪・日本橋の3エリアに3教室を構える。
「割合」「旅人算」
──5年生は重要な単元が目白押しですが、特に注意した方がよいという単元はどこでしょうか?
「割合」「旅人算」
武井信達先生(以下、武井先生):「割合」は、算数に苦手意識を持つきっかけになりやすい単元です。それまでの単元は結構、目に見える事象の話だったと思うのですが、抽象度が増すために、つまずいてしまうことがあります。割合は、「ある数がある数の何倍か」というシンプルな話なんですが、混乱しやすい。ここは授業をしっかり聞いて、わからなければ何度も質問にいきましょう。
次に「旅人算」は、入試の最頻出と言っても過言ではないので、演習をしっかりやるといいですね。実はとてもタイムパフォーマンスがいい単元が旅人算です。小さい単元のわりに、相当な確率で入試に出ますから、しっかり練習しておけば得点につながりますよ。
「5年生の重要単元は入試に出るものが多いですね」(武井先生)。
「場合の数」「立体」
武井先生:苦手な単元として挙げる子も多い「場合の数」は、とにかく注意深くやること。なぜなら、間違えた答えもあたかも正解のようにすぐに出てくるからです。他の単元なら間違えると変な分数になったりしますが、この単元は間違えてもきれいな整数になります。間違いに気づきにくいのが「場合の数」の難点ですが、緻密に解くという心構えで取り組むように、ご家庭でも繰り返し解き直しをしてください。
あとは「立体」ですね。立体が苦手なお子さんも多いと思いますが、それは立体で考えようとするから。立体は平面に落とし込んで考えるのが入試の王道です。解き方をしっかり理解してから、やり方を覚えていきましょう。
図形は描けるようにする
──文章問題を解くときの注意点はありますか?
武井先生:図や式を書いて整理しないで、やみくもに解こうとすると、5年生の内容ではもう厳しいですね。手を動かしつつ、条件を整理しながら解いていかないと。これはひらめきというよりも、訓練である程度できるようになります。
──図形問題は、ひらめきの勝負なのかなと思っていました。
武井先生:図形はクイズのようにとらえると面白く感じてきますよ! フォトンでは、フリーハンドで、ノートに立方体や多角形をさっと描けるように、低学年で相当練習させていきます。描けないことには構造がわからないと思うからです。ご家庭でもぜひ、さっと形をとれるようになるまで練習してみてください。これはきっと効果があると思います。
フォトン算数クラブの教室では、生徒が授業に集中できるように、電灯の明るさのルクスや色味にもこだわって設定しています。
問題文を1文字も読みもらさない
武井先生:あとは重要単元ではありませんが、問題文を1文字も落とすことなく読むことも、とても大切です。高学年で算数が苦手なお子さんのタイプで、「国語が得意で、読むのが速いがゆえに問題文をさらっと読んでいる」場合がよくあります。
算数の文章題は物語文ではなく、一字一句が大切な俳句や詩に近い。どういうことかというと、1文字も無駄はなく、意味があり、凝縮されているのです。
問題文が数行に渡っていると、それをさらっと読んでしまうお子さんは、大変なことになります。目を凝らして、線をひいて、条件をひとつも漏らさない気迫で読むことが大事になってきます。これもすごく重要なポイントですね。
「椅子の座り心地や、全熱交換機を使って計画的に換気するなど、教室内の環境も徹底的にこだわっています」と武井先生。家庭でも集中できる環境を大切にしたいですね。
6年生の最後にひと伸びするその秘訣とは?
──では6年生の夏休み以降、過去問に取り組みだしている6年生に向けて、先生からアドバイスはありますか?
武井先生:6年生後期でも算数は伸びますよ! 子どもの可能性ってすごいんです。大人の常識なんて超える子、私は何人も見てきました。
もちろん6年生の後期は、理科や社会などの、特に暗記の分野に力を入れたほうがいいと思います。算数は、間違えた問題を広い単元からピックアップしてコツコツ繰り返し解き直しつつ、過去問などを使って初見の問題を解くことを同時並行で行ってください。
入試は満点を取らなくてもいい!
武井先生:前回でもお伝えしましたが、入試は満点を取る必要はありません。
テストですべての問題に手をつけるように言って、親御さんが下手に焦って子どもをつぶすようなことがあってはいけません。また、子どもですから、9月以降の模試で急に点が下がることもあります。それは事故みたいなものです。ある日突然学力が落ちることはありません。
そこで𠮟ったり心配しすぎたりしないように。それよりもやるべきことを積み上げましょう。
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「センスが重要」だとイメージしていた算数ですが、武井先生のお話で、記憶や反復も大切な要素だとわかりました。苦手でも根気よく復習して、定着を目指せば志望する学校への合格にぐっと近づきそうです。
伴走中の保護者の皆さん、受験生がいい波に乗れるように、精一杯プラスの言葉をかけていきましょう。応援しています!
撮影・安田光優
文/佐野倫子
『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』著:佐野倫子(イカロス出版)