天才・落合陽一氏の母に聞く「好き」を「強み」に変える育て方
人気メディアプロデューサー・落合陽一氏の母・落合ひろみ氏インタビュー。子どもの可能性を伸ばす「好き」との出会いと親のかかわり方を取材。(全2回の2回目)
【画像ギャラリー】母・落合ひろみさんと幼少期の陽一さんを見る落合陽一氏の母・落合ひろみさんへの子育てインタビュー。2回目では、メディアアーティストとしての現在の活動に繫がるパソコンとの出会いから、子どもの可能性を広げる親のかかわり方までお聞きしました。
50万円のパソコンセットがほしくて祖父にプレゼン
──小学生のころには、友だちがゲームに夢中になっている中で、陽一さんは早々に飽きて、当時まだ非常に高価だったパソコンを欲しがったそうですね。
落合ひろみさん(以下、ひろみさん):当時はウィンドウズ95が発売されたばかりで、パソコンの本体とプリンターなどセットで50万円近くしていたと思います。さすがに子どもにそんな高価なものはと、私は反対しようとしました。しかし祖父(私の父)は、「まず陽一の話を聞こうじゃないか」と。
すると陽一は、「これからコンピューターの時代になります。通信だって、電話ではなく、このコンピューターからできるようになるし、ゲームをやって遊ぶのではなく、僕がもっと面白いゲームをつくることもできます」と堂々とプレゼンテーションをしたんです。
それを聞いて「陽一君の将来に投資をしよう」と買い与えてくれました。陽一が小学2年生のときでした。
「こちらは3年生のころ。パソコンに夢中でしたが、絵を描くことも好きでずっと続けていました」(ひろみさん)。 写真提供:落合ひろみ
パソコンはすべて自分ひとりでセッティングした
──まだスマホはおろか、携帯電話も普及していない時代に、小学校2年生にして、すでにコンピューターの可能性を理解していたんですね!
ひろみさん:本で読んだのか、テレビか何かで知ったのでしょうね。でも家族は、皆パソコンのことなんてさっぱりわかりませんから、届いた後はセッティングから何からすべて自分一人でやっていました。
難しい漢字を辞書で調べながらマニュアルを何度も読み返して、時にはコールセンターに電話したりもして(笑)。あっという間に使いこなすようになって、気が付いたら簡単なプログラムまで作れるようになっていましたね。
落合陽一さんの母・落合ひろみさん。子育て中も国際的に忙しく働き続けていました。
ひろみさん:子どもって、興味のあることはどんどん学ぶし、放っておいても自分で突き進んでいきます。そのころから今に至るまで、試行錯誤しながら自分なりに答えを探したり、ものを作り上げたりするのが楽しくてしょうがないのだと思います。陽一自身も「中2から成長していない」なんて言っていますから(笑)。
「好き」を突き詰められる環境が「天才」を育てる
小学6年生のころの陽一氏と。 写真提供:落合ひろみ
──やりたいことにのめり込むというのは良いことだと思いつつ、そればかりだと不安に感じたり、バランスよくやってほしいと思ったりする親御さんは多いと思います。また、生活リズムを考えて、夢中になっていることを遮ってしまうこともありますよね。
ひろみさん:私はもっと世の中が「天才」だらけになったらいいと思っているんです。もっといろんな「天才」がいていいんじゃないかな、と。
そのためには、自分の好きなことをとことん突き詰められる環境が必要です。親が勝手に「普通でいい」「どうせ一流にはなれない」なんて決めつけるのは、子どもに失礼。一つのジャンルで1番を目指そうとする気持ちを、大人が邪魔をしてはいけないと思っています。
何かに夢中になって、食事の時間に呼んでも手を止めないなら、「冷めたら後で温めて食べてね」などと会話をすればいいんです。
子どもを大人の思いどおりにさせるのではなく、まず子どもの声を聞いてあげてほしい。親御さんでも、子どもを一人の人間として尊重してあげてほしいなと思います。
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子どもの「好き」を伸ばすことの大切さとかかわり方をひろみさんから教えていただきました。
最後に、子育て中のママパパへ向けたメッセージを。
「子どもにとって親は特別な存在です。いつも明るい笑顔で笑っていてください。とはいえ、疲れていたり、ストレスが溜まっていると顔に出ちゃいますよね。それに子育て中は手がいくつあっても足りません。ご自分の笑顔をキープするために、可能な範囲でご両親やまわりにどんどん頼ってください。私も子育ては自分ひとりではなく、親や妹、習い事の先生など、たくさんの方に頼ってきました。
本当に子育ての時間はあっという間です。振り返っても子育てほど楽しいことはなかったので、毎日を大切に過ごしてくださいね」(ひろみさん)。
撮影/安田光優
取材・文/北京子