アインシュタインが量子力学を「痛烈に批判」した理由とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話】
科学においては「神はサイコロを振らない!」
「量子フルーツを測定したらアップルかバナナになるかはランダムに決まるだって?そんなふざけた話はない!」。量子フルーツの話を聞いたアインシュタインは激怒しました。アインシュタインは生涯、量子力学が不完全なものだと考えており、量子力学のいくつかの考え方に猛反発していました。確かにバナップルの話には少し魔法が入っているように見えるので、もう一度整理してみましょう。
バナップルをかじる(測定)とバナナかアップルのどちらかになる。100個かじるとだいたい 50個がアップルになるが、アップルが出てくるタイミングはランダム。これが量子力学の考え方。
1つ目の疑問は、この「測定」です。かじられただけで変身するというのは、まるでバナップルが「かじられた!」と反応した感情のようです。またはバナップルの意思ではなく、超能力を持ったわたしたちが、重ね合わせのバナップルを、アップルかバナナに決めてしまうようにも思えるわけです。
2つ目の疑問は、アップルかバナナのどちらになるかは完全にランダムだということです。ランダム性というのは、物理学では通常あり得ないことです。たとえばニュートン力学を使うと、投げたボールの速度と方向がわかれば、そのあとどのように飛んでいくかが計算でき、同じ結果が毎回出るというのが物理学の本質です。なので、ランダムに出てくるというのは物理の法則とはほど遠く、ただの気まぐれに見えます。アインシュタインは特にこの点について、「神はサイコロを振らない!」という言葉を使って量子力学を痛烈に批判しました。
「量子力学は不完全だ」と考えていたアインシュタインは、「隠れた変数」というアイデアを支持しました。わたしたちからは見えないこの「隠れた変数」には、「アップルになるかバナナになるかを決める原因がちゃんとあるのだけど、わたしたちが見つけられてないからランダムに見えてしまう」という主張です。
量子力学が正しいと信じていたニールス・ボーアは、アインシュタインと激論を交わします。彼らの議論は大きく反響を呼び、その結果、量子力学の発展に多大な貢献をしたのです。いまでは多くの実験で量子力学の正しさが示されていて、ほとんどの物理学者がアインシュタインの疑問を理解しながらも、量子力学は間違っていないと思っています。
神はサイコロを振らない!
どちらかランダムに起こる
物理学ではランダム性はあり得ない?
アルベルト・アインシュタイン(1879〜1955年)
ドイツ生まれ。特殊相対性理論や一般相対性理論などを提唱した理論物理学者。1921年ノーベル物理学賞受賞。
ニールス・ボーア(1885〜1962年)
デンマーク生まれ。量子力学確立に貢献した理論物理学者。1922年ノーベル物理学賞受賞。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 量子の話』著:久富隆佑、やまざき れきしゅう