市教委傍聴動員 「公開裁判の趣旨に反する」 弁護士チームが調査報告
横浜市教育委員会が教員による4つの性犯罪事件の公判に職員を動員し、一般傍聴人を締め出していた問題で、弁護士チームによる検証報告書が7月26日に公表された。この中で動員を「公開裁判の原則の趣旨に反する」と結論付けた。
3人の弁護士による検証チームは、職員などへの聞き取り調査を実施。報告書によると、1件目の事案は18年に発生。被害者側から「(支援を受ける)NPOや市教委で傍聴席を埋め尽くしたい。特に再発防止マニュアルを作る人には参加してほしい」と要望があった。それを受け、19年の公判前に方面別学校事務所が主導して動員依頼を各部署に出した。同様の依頼は判決公判まで3回行っていた。
被害者側に伝達せず
その後、23年7月から9月に3件続けてわいせつ事件が発覚。対応する職員が1件目の事案で使われた資料を基に、動員依頼の文書を作成。しかし、動員は被害者側に伝えられておらず、公判後に保護者から「傍聴者が多く、保護者も入れないところだった」と言われたこともあった。3、4件目の事案でも1件目での対応と資料を基にした動員が繰り返された。
動員について、当初から職員の中に疑問視する声があったが、「問題点を真剣に議論された形跡はない」とされた。
調査を踏まえ、動員を憲法が定める公開裁判の原則からして「趣旨に反する」としたが、「憲法違反とまでは言えない」と結論付けた。動員の意思決定は当時の教育長らに責任があると判断したが、法的な責任は「結論を得るに至らず」とした。最後に再発防止策として、組織内での情報共有などを挙げた。
検証チームは傍聴の際の旅費や給与の返還義務はないとしたが、旅費相当額の12万7622円を前教育長らが自主的に返納した。