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メンバー全員移住者の社会人サッカーチームが爆速昇格継続中! 和歌山県上富田町の地方創生・町おこしがすごい!

田舎暮らしの本

メンバー全員移住者の社会人サッカーチームが爆速昇格継続中! 和歌山県上富田町の地方創生・町おこしがすごい!

和歌山県南部の紀南地域に位置する西牟婁郡(にしむろぐん)上富田町(かみとんだちょう)は、黒潮の影響で気温は年平均18度と温暖な気候に恵まれ、世界遺産である熊野古道の「中辺路」の入り口に当たることから「口熊野(くちくまの)」と呼ばれる歴史ある町。この町では現在、スポーツによる町おこしが積極的に行なわれています。その一つ、創設3年で社会人サッカーリーグの3部から1部に昇格した躍進中のクラブがあります。

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移住者を中心にしたサッカークラブで地方創生を実現する

新体制で“再始動”

 2022年に創設し、和歌山県社会人サッカーリーグ3部参入から、2年で1部に昇格した南紀オレンジサンライズFCは、メンバー全員が県外からの移住者によるサッカークラブです。今季から新体制となり、“再始動”を掲げるクラブの代表、本目(もとめ)淳朗さんにクラブの近況と今後の取り組みについて伺いました。

 クラブはこれまで、「サッカー×移住×農業」というコンセプトで活動が続けられていましたが、2024年11月に新体制となり代表に本目さんが就任しました。

「新体制前は農業とスポーツによる移住のイメージがチームにあったと思います。私が引き継いだ当時、実際のところは、農業をやっている選手はすごく少なかった。もっと町をあげての就業や、仕事にしても農業にはこだわらず、それぞれにあった仕事が選べる。もっと多面的に、いろんなところでこの地域にお役に立てるよう、みんなから愛される、そんなクラブにしたいという思いがありまして、『プロ意識×地域貢献×優遇制度』を新たなコンセプトとしました」(本目さん)

メンバー全員が移住者

 この地域は、もともと小学生のサッカーが盛んです。しかし、中学・高校と上がるにつれ、レベルアップのため選手が県外に出ていくという状況です。サッカーへの関心は高く、積極的に人材を受け入れる地元企業も多いため、現在のメンバー全員が県外からの移住者で構成されています。選手はさまざまな職業に就いていますが、今後は地元・和歌山県出身の選手も積極的に受け入れ、地域に根ざしたクラブとしてさらに成長していきたいと考えています。

3社協定により、町とスポーツの関係が強固に

地域と深く結びついた活動

 2024年9月、上富田町と南紀オレンジサンライズFC、そして、プロ野球関西独立リーグの和歌山ウェイブスによるスポーツ協定が締結されました。

「企業版のふるさと納税で入ってきた原資を、それぞれのチームに運営費として入れていただいています。町に対しては、社会福祉協議会が行なうイベントや、教育委員会を絡めて各町内の保育園でサッカー教室に行かせていただく活動でお返ししています。どうしても若者の力が少なくなっているので、そこを全力で盛り上げています」(本目さん)

サッカーがより好きになった

 町全体のバックアップにより、選手たちにとってはサッカーに専念できる環境が整っています。チーム創設からキャプテンを務める水本龍之介選手が、現在の環境を語ってくれました。

 水本選手は東大阪市出身で、大学は当時、医療大学では唯一関西学生リーグに加盟していた森ノ宮医療大学でサッカー部のキャプテンを務め、卒業のタイミングで和歌山に移住しました。現在は介護職として、高齢者の利用者の筋力の維持のため、リハビリで機能訓練、筋力トレーニングなど、生活指導と運動指導を行っています。

「地元の新聞でよく僕たちの試合の結果を取り上げてもらいます。こちらの人は新聞を端から端まで読まれているので、記事を見て、『試合勝ったんやね』とか、『今度試合頑張ってね』と声をかけてくれます。僕は職場では支える立場なんですけど、サッカーでは逆に元気をもらっています。こっちで試合があるときは、直接グランドまで応援に駆けつけてくれる利用者の方もいて、僕の力になっています。

仕事も両立できる環境を整えてくれているので、本当にサッカーが好きになれる。サッカーに対して熱量を持っている人なら、このクラブでサッカーをやれば、サッカー選手としても人間としても成長できると思います」(水本選手)

自分のためのサッカーではなく「誰かのために」

クラブのスローガン

 新体制への移行とともに、新たに今西晃一監督が就任しました。今西監督が一番大事にしていることが、「誰かのためにやろう」という気持ちです。クラブのスローガンも「誰かのために」を掲げています。

「自分のためにサッカーするのではなくて、支えてくれる誰かのためにやるというのを、みんなの中で持っていこうということです。応援してもらい、声援をもらえることで、普段だったら届かないところが届いたり、きつい時の一歩が出るというのは、みんな実感しています。みんなのために頑張ろうという、チーム作りを今やっているところです」(本目さん)

 この気持ちは、キャプテンの水本選手も実感しており、新たにチャレンジしてくれる選手に対してもメッセージを送ります。

「僕たちはプロサッカーチームではないし、プロサッカー選手でもないんですけど、サッカーを通じて、応援してくださる人たちに、元気とか感動を与えられることを実感しています。紀南地方は人と横のつながりが強い地域なので、そういう意味でも温かい。大好きなサッカーを本気で頑張るだけで、多くの人たちが笑顔になれたり、逆に『頑張ってね』って声をかけてもらって、さらにまた頑張ろうと思わせてくれるのは、本当にこの地域だけなんじゃないかなって思います」(水本選手)

地域リーグ昇格と百人メンバー

 和歌山から関西へ。本目さんは今後のチームの目標として、地域リーグへの昇格をあげています。

「SNSで活動内容を発信しています。練習に参加したいとか、チームに入りたいですと問い合わせが来るパターンはあります。そして、シーズンオフに社会人クラブに入りたい選手たちが集まって、いろんなクラブがうちに来ませんかって声かけをするロードセレクションがありまして、そこに私たちも参加しています。来る前とかは、すごく田舎というか。何もない印象で来られる方がほとんどですけれど、実際来てみたら、人とのつながりや温かさが良かったと、定住する方もいます。メンバーは将来、百人を目指しています」(本目さん)

 本目さんはさらに、南海、東南海地震といった有事の際に備えて、自身を含め、メンバーも防災士の資格を取って役に立つ存在になっていきたいとも考えています。「有事の時に若い力があるのは心強い」とクラブの在り方は、サッカーだけには留まりません。

 大好きなサッカーも、地域の活動も真剣に取り組むことで、楽しさがより実感できる。その選手の姿は、地元の子どもたちの憧れとなり、若い力の流出の歯止めになるかもしれません。大好きなサッカーを続けることが、「誰かのため」になる――。南紀オレンジサンライズFCは想いをひとつに関西、そして全国の舞台へと駆け上がるに違いありません。

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