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元朝の脅威的な「郵便システム」 〜知られざる元朝の功績とは

草の実堂

画像 : 元朝の郵便システムイメージ 草の実堂作成

元朝とは

画像 : 元朝の版図(1330年) wiki c SY

歴史の授業で中国史を学ぶ際、「」という王朝に触れることは少なくない。

しかし、元朝について詳しく掘り下げられることは少ない印象である。なぜ、元朝は重要視されないのだろうか。

元朝は1271年に成立し、1368年に滅亡するまで、約100年にわたって中国を統治した。
この期間は、明朝(1368年~1644年)や清朝(1644年~1912年)といった、200年以上続いた王朝と比べると短命であったことが、まず理由の一つであろう。

さらに、元朝はモンゴル帝国の一部として成立したことから、異民族支配という側面が強い。
特に漢民族の視点からは「征服王朝」として認識されることが多く、民族的感情や文化的価値観も影響していると考えられる。

そのため、漢文化の継承や発展という点においては、他王朝に比べて相対的に評価が低くなる傾向にある。

また、元朝に関する研究が十分に進んでいないことも理由として挙げられる。

元朝の記録はモンゴル語やペルシャ語を含む多言語で書かれたものが多く、漢字で書かれた史料に比べて研究のハードルが高いとされる。
ただし、これらの言語による記録は、交易や文化交流の多様性を示しており、近年では重要な研究対象となっている。

このように歴史的背景や文化的評価に影響を受けた元朝だが、注目すべき功績も多い。

その代表的なものが「郵便システム」である。

今回は、元朝の郵便システムについて詳しく見ていこう。

馬の活躍

画像 : 馬 イメージ

モンゴル人は遊牧民族として馬を巧みに扱い、その文化は元朝の時代にも引き継がれた。

馬は非常に重要な役割を果たし、軍事や通信、運送など生活のあらゆる場面で活躍した。

軍事面では騎兵が戦力の中心を担い、戦闘に特化した優れた馬が元朝の支配力を支えた。
多様な品種の馬が飼育され、速さや耐久性といった特徴を持つ馬が重視された。

また、馬は情報伝達や行政の面でも欠かせない存在であった。

元朝は広大な領土を統治する中で、情報の迅速な伝達を重視し、中央集権的な政治を目指していた。

こうした馬を活用した「郵便システム」により、遠隔地から中央政府への情報伝達が迅速に行われ、円滑な政治運営が実現されたのである。

元朝の郵便システム

画像 : 驛所 イメージ 草の実堂作成

元朝は広大な領土を効率的に統治するため、全国に驛所(えきしょ)を整備し、郵便システムを確立した。

驛所とは、人馬の継立や宿泊、運送などの便をはかるために設置された施設である。

驛所は各主要地域に設置され、使者が情報を素早く伝えるための中継点として機能した。各驛所には約400頭の馬が常備されており、長距離を走る馬の疲労を防ぐため、必要に応じて馬を交換する仕組みが取られていた。

さらに、驛所には馬の飼育者が配置され、馬の健康状態が常に管理されていた。

驛所と驛所の距離は約40kmに設定され、馬が無理なく移動できる範囲を考慮したルートや、約5kmごとに小休止できる場所も設けられており、使者が短い休憩を取ることもできた。

また、宿泊施設も備えられており、食事も十分に用意されていた。

この驛所制度は日本の「宿場」制度とも共通点がある。

日本の宿場も主要な街道沿いに設置され、交通や通信、運送の拠点として機能した。また、文化や経済の中心地としても発展し、利用者が多岐にわたる点でも類似している。

驛所の他の役割

画像 : 元朝の郵便システムイメージ 草の実堂作成

驛所は、通信以外の役割も果たしていた。

初期段階では前述したように情報を伝達するために使用されていたが、やがてその機能は拡大していった。

商人たちにも活用され、商品輸送の拠点となっていったのだ。

これにより、驛所は商業活動の中心地としても発展し、遠隔地から情報や商品がもたらされ、文化的な交流の場としての側面も持つようになった。

元朝時代に確立された驛所制度は、その後の明朝や清朝にも受け継がれ、さらに発展を遂げることとなる。

このように、元朝の驛所制度は中国全土にわたる統治と、経済の基盤として大きな意義を持っていたのである。

参考 : 『元朝の驛站制度 南華大学』他
文 / 草の実堂編集部

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