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【2025年しずおか連詩の会、創作進む】1999年の第1回。口火を切ったのは故・谷川俊太郎さんだった

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市駿河区のグランシップで創作が進む「2025年しずおか連詩の会」を題材に。(文=論説委員・橋爪充、写真=写真部・坂本豊)

1999年に始まった「しずおか連詩の会」は、毎秋の開催を重ね、今回が26回目となる。この間、毎年40編(2016年は32編)からなる「しずおか連詩」が生み出された。

11月7日付の本紙コラムにも書いたが、1999年の第1回の第1編を担当したのは、昨年11月13日に亡くなった谷川俊太郎さんだ。以下に、その5行詩を引用する。

 笑いながら昇ってきた太陽の熱い視線に
 山は夜の青白い顔を赤らめる
 もうすぐぼくらの子どももあがってくる
 君たちの子どもが潜っている夢の海から
 闇にひそむ光 光にひそむ闇にみちびかれて
 俊太郎

谷川さんは発表会で、“発句”について「駿河湾を見渡し、富士山を望めるすばらしい(詩作の)情景」を活写し、子どもを通じて「地球のこちら側(日本)とあちら側(ドイツ)のつながり」を暗示したと説明した。この年は発起人の大岡信さん(三島市出身)、谷川さん、高橋順子さん、ドイツからウリ・ベッカーさん、ドゥルス・グリュンバインさんが参加した。

第1回から26年が経過した。「しずおか連詩の会」は2025年も開催されていて、きょう11月8日は創作3日目に当たる。

写真部記者から創作初日(11月6日)の表情を切り取った写真が届いた。緊張と和やかさが入り交じった室内の様子が感じ取れると思う。8日午前11時までに26編が仕上がったとの情報がある。

連詩は大岡さん、谷川さんら「櫂」同人の「遊び」から発展した。今年の参加詩人各位もあと少しの時間、存分に「遊び」を楽しんでいただきたい。

詩人 野村喜和夫さん 
 1951年埼玉県生まれ。戦後世代を代表する詩人の一人として、現代詩の先端を走り続ける。詩集「風の配分」(高見順賞)など著訳書多数。英訳選詩集「Spectacle & Pigsty」で「2012 Best Translated Book Award in Poetry」(米国)を受賞するなど、海外での評価も高い。

詩人 川口晴美さん
 1962年福井県小浜市生まれ。詩集に「半島の地図」(第10回山本健吉文学賞)「Tiger is here.」(第46回高見順賞)「やがて魔女の森になる」(第30回萩原朔太郎賞)など。社会人向け詩の講座の講師、アンソロジー詩集の編さんも手がける。

詩人 水沢なおさん
 長泉町出身。2020年、第1詩集「美しいからだよ」(思潮社)で第25回中原中也賞。22年に第2詩集「シー」(思潮社)、23年に小説集「うみみたい」(河出書房新社)を刊行。24年に「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」の一人に選ばれた。

小説家 星野智幸さん
 1965年生まれ。2年半の新聞記者勤めの後、メキシコ留学。97年「最後の吐息」でデビュー。「俺俺」(大江健三郎賞)「夜は終わらない」(読売文学賞)「?」(谷崎潤一郎賞)「だまされ屋さん」「植物忌」「ひとでなし」(サッカー本大賞)など。

ラッパー 環ROYさん
 1981年、宮城県生まれ。これまでに6枚の音楽アルバムを発表。ミュージックビデオ「ことの次第」が第21回文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品入選。11月15日に絵本「ようようしょうてんがい」(福音館書店)を刊行する。

<DATA>
■「2025年しずおか連詩の会」発表会
出演:野村喜和夫(詩人)、川口晴美(詩人)、水沢なお(詩人)、星野智幸(小説家)、環ROY(ラッパー)
会場: グランシップ 11階会議ホール・風
住所:静岡市駿河区東静岡2-3-1
入場料:一般1500円、子ども・学生1000円(28歳以下の学生)※未就学児入場不可
日時:11月9日(日)午後2時開演
問い合わせ:054-289-9000(グランシップチケットセンター)

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