【かねもクラシックコンサート最終回「CURTAIN CALLー最後のカルテット」】掛川の「茶屋コンサート」が99回で幕。13年間の歴史を振り返った「ありがとうの会」
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は掛川市の「茶の蔵かねも」内「ティーカルチャーホール」で7月26日に開かれた「かねもクラシックコンサート」の最終回「CURTAIN CALLー最後のカルテット」を題材に。
掛川市で13年続いたシリーズコンサートが幕を下ろした。99回目の最終回は、地元掛川市出身のピアニスト佐藤元洋さんを中心にバイオリニストの坪井夏美さん、石原悠企さん、チェリスト広田勇樹さんが集った。
チケットは完売。約130人の観客が最後のコンサートを見守った。かつてお茶の倉庫だった空間が、心地よいサロンコンサートの会場になっていた。
主催したのは「若いアーティストを育てる演奏会実行委員会」(高橋恭子代表)。2006年に活動を開始し、縁あって2012年からティーカルチャーホールで演奏会の開催を続けた。今回の一区切りは、「茶の蔵かねも」の移転によるものという。演奏会終了後の「ありがとうの会」では、長く会場を提供した同店オーナーへの感謝の言葉も聞かれた。
「ありがとうの会」では、同コンサートシリーズへの出演歴がある演奏家からの動画メッセージが披露された。ピアニストの弓張美季さん、今田篤さん(掛川市出身)、實川風さん、佐藤卓史さん、バイオリニストの長尾春花さん(掛川市出身)…。そろって口にしたのが、かつてこの演奏会で使用していたベーゼンドルファーのピアノのことだった。
ドイツの名ピアニスト、ウィルヘルム・バックハウス(1884~1969年)が使っていた1898年製。2014年から2022年までこの会場に置かれ、コンサートで使用していた。アレクセイ・リュビモフ、ベンジャミン・フリスら、海外のピアニストたちも「バックハウスのベーゼンドルファー」に引かれてこの場所を訪れた。世界中の音楽ファンの目が、掛川を捉えていた。
高橋代表は何度も、観客に謝意を述べた。「毎回のアンケートで『幸せな時間をありがとう』という言葉をたくさんいただいた。お客さまの集中力があって、演奏家それに応える。その二つが一体化する経験を何度もさせてもらった」
ピアノ、会場、そしてコンサートの企画者、観客。全てが地域の文化資産だった。ピアノ、会場は失われたが残りの二つはまだ健在だ。高橋代表は「(コンサートは)いったん休止とするが、またどこかで皆さんとお目にかかれるよう、場所を探していきたい」と話した。
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