レスパイトケアとは?簡単に解説!介護職が配慮すべきこと3つ
介護者の息抜きを行う支援「レスパイトケア」を徹底解説!
厚生労働省の調査によると、日本の65歳以上の人口割合は、2070年まで右肩上がりで増え続けると予想されています。高齢化率は、2020年時点で28.6%でしたが、2070年には38.7%と日本の総人口の約4割が高齢者となるのです。※
高齢者の増加に伴い、介護が必要な人もますます増加すると予想されるなか、介護する側(要介護者の家族など)の休息を目的とした「レスパイトケア」が注目されています。
この記事では、レスパイトケアとはそもそも何なのかであったり、レスパイトケアの目的、効果、サービスの種類など幅広く解説します。
出典:厚生労働省我が国の人口について
執筆者/専門家
古畑 佑奈
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/19
レスパイトケアとは?
長期間続く介護の負担を和らげる支援
レスパイトケアとは、介護をしている介護者が一時的に休息をとるために提供されるケアのことです。介護者に何かを行うのではなく、高齢者や障害を持つ方の介護を一時的に他の人が実施します。
介護から一時的に離れることで、リフレッシュすることができ、介護者の心身の健康を保つことができるでしょう。介護者の健康は不可欠です。
介護職とのかかわりが増え、助言も受けられる
介護の負担感は、急に大きくなるわけではありません。小さなことや、さまざまなことが蓄積された結果、負担に感じることが多いでしょう。そのため、これらの負担を軽減し、終わりの見えない介護生活を続けていくためには、レスパイトケアを活用していけるとよいでしょう。
また、レスパイトケアを受けることで介護職との関わりも増え、日々の介護に対する助言を受けることもできます。
レスパイトケアの目的
レスパイトとは小休止や延期といった意味のある言葉です。そのため、レスパイトケアの目的は、介護者が一息つくことができるようにサポートすることが挙げられます。
介護者が、一時的に休息をとることでリフレッシュをすると、より良いケアを継続的に行うことができます。レスパイトケアをおこない、介護職からのサポートを受けることで在宅での介護を継続していくことができます。
レスパイトケアで得られる効果
レスパイトケアで得ることができる効果は以下の通りです。
1.介護者のストレス軽減
2.社会的孤立の防止
3.介護を受ける側の精神的負担の軽減
4.介護者と要介護者の関係性改善
1.介護者のストレス軽減
介護者が一時的に介護から離れることで、休息をとることができ心身のリフレッシュに繋がります。リフレッシュがおこなえることで、介護の質が向上し、長期的に介護を続けやすくなるでしょう。
2.社会的孤立の防止
介護に専念していると、介護者が社会的に孤立してしまうケースがあります。そのためレスパイトケアを活用し、介護者の時間を作ることで、外出や趣味に専念でき、社会と繋がりを持ち続けることができます。
介護以外に興味のあることや、取り組めることがあると、孤独感やストレス軽減に繋がるでしょう。
3.介護を受ける側の精神的負担の軽減
介護者が休息をとれていると、介護を受ける側も安心することができるでしょう。「家族に迷惑をかけてしまっている」「自分のせいで家族が苦しんでいる」そう感じてしまうと、精神的な負担に繋がります。
レスパイトケアを活用し、家族や親戚が休息をとれている姿を見てもらうことで、介護を受ける人も安心感を持って過ごすことができます。
4.介護者と要介護者の関係性改善
介護者と介護を受ける人が、一定期間離れることで気持ちのリセットに繋がります。介護を日々続けていると、お互いに小さな不満が蓄積し関係性が崩れてしまうことがあります。
そのため、レスパイトケアを活用し、リフレッシュすることで、関係性を良好に保ち続けることができるでしょう。
レスパイトケアを提供するサービスの種類6選
レスパイトケアとして利用できる訪問サービス
●1.訪問介護
ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴、掃除などのサポートを行います。自宅でケアを受け続けたい要介護者におすすめのサービスです。
訪問看護、訪問リハビリ、訪問入浴といったサービスも訪問サービスにはあるため、介護者の大変さや利用者の状態によっては、訪問介護の一択ではなく、適切なサービスを選べるように進めるとよいでしょう。
レスパイトケアとして利用できる通所サービス
●2.通所介護(デイサービス)
介護施設に日帰りで通い、食事や入浴、リハビリなどのサービスを受けます。基本的には自宅から介護施設までの送迎も含まれているため、介護者にとっては自宅での見送りと出迎えだけで、あとは自由な時間を過ごせるケースがほとんどでしょう。
●3.認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
デイサービス同様に、日帰りで通い、食事や入浴などの日常生活に関するサービスを受けます。また、これらに加えて認知症に特化したスタッフが多いため、専門的なケアを受けることができたり、認知症の進行を遅らせるプログラムを受けたりすることができます。
また、介護者にとっても専門的な介護職から、認知症に関する知識や接し方などを学ぶことができ、日々の介護の質を高めることができます。
レスパイトケアとして利用できる施設サービス
●4.小規模多機能型居宅介護
小規模多機能型居宅介護は、地域密着型サービスで、通い・訪問・泊まりのサービスを一体的に行っている施設です。それぞれを組み合わせて利用できるため、介護者や介護を受ける人の状況やニーズに応じて柔軟に対応ができます。
また、地域密着型であるため、介護を受ける人にとっても住み慣れた環境で介護サービスを受けることができるといったメリットもあります。
●5.短期入所介護・短期入所療養介護(ショートステイ)
介護を受ける人が、短期間施設に入所するサービスです。基本的には数日~数週間の利用が一般的で、日帰りのサービスより長く介護者が休息をとることができます。
また、ショートステイは介護サービスの体験のような役割も果たします。入居型の施設に入るか迷っている方や、施設に対して抵抗がある介護を受ける人にとって、短い期間だけ入所をしてみると、介護施設の過ごしやすさや、ケアの質の高さに驚き、前向きな気持ちになることができる場合があります。
●6.レスパイト入院
介護者の急な病気や冠婚葬祭などで、一時的に在宅での介護が難しい場合に利用されます。医師や看護師がいる医療機関で短期入院をすることで、専門的なケアを受けることができます。
また、介護者にとっても専門的な医療機関でケアを受けさせることができるため、安心して過ごすことができるでしょう。
レスパイトケア利用時に押さえておきたいポイント3つ
1.レスパイトケアの目的を正しく理解し、ネガティブな利用ではないことを認識する
レスパイトケアの目的を理解できていないと、親を預けて介護を休んでよいのか?や、周りにさぼっていると思われるのではないかといった気持ちから、余計に精神的に疲弊してしまう場合があります。
先述しましたが、レスパイトケアの目的は「介護者が一息つくことができるようにサポートすること」です。介護者がしっかり休むことで、介護を受ける側も質の高い介護を受け続けることができ、長く在宅介護を行うことができます。このように、目的をしっかり理解したうえで、レスパイトケアを活用していけるとよいでしょう。
2.予約が必要で、急な利用は不可
レスパイトケアの利用には、予約が必要です。受け入れ側は介護において必要な情報を確認し、サービス提供の可否を検討します。
また、レスパイトケアを利用するためにはケアマネージャーや地域包括支援センターの職員によるケアプランの作成も必要です。ケアの利用を希望する際は、担当のケアマネージャーや地域包括支援センターに相談してみるとよいでしょう。
3.環境の変化によるリスクを考慮する
レスパイトケアを利用することで、介護を受ける本人が心身ともに状態が変化してしまうリスクを知っておく必要があります。
慣れない環境や、知らない人からケアを受けることは、本人にとって精神的な負担となる可能性があります。また、精神的に疲弊してしまうことから身体面の不調にも繋がる場合があるでしょう。これらのリスクを把握したうえで、本人の不安に思う点は解消したうえで、レスパイトケアを利用していけるとよいでしょう。
介護職の視点で、利用者やご家族に対して配慮すべきこと3つ
1.環境が変わることでの混乱に注意
利用者さんで、特に認知症のある方にとっては、環境が急に変わることは混乱を発生させ、せん妄や妄想などの精神症状に繋がってしまう場合があります。
レスパイトケアを利用する際には、本人の自宅での生活リズム・食事量・排泄のリズムなどをよく把握し、できる限りそれらを継続することが大切です。
また、自宅へ帰ってから混乱することもあるので、利用後の様子にも注意が必要です。
2.理想論だけを述べない
介護者から相談を受けた際は、まず十分に話を聞きます。 何に困っていて、どんな気持ちなのかを聞き、すぐに助言をするのではなく介護者が望ましい生活をするためにどうしていくことがよいのかを一緒に考えます。
その際、つい介護の理想論を伝えてしまいたくなるかもしれませんが、介護者が知りたいのは理想ではなくどのように今の状況を回避すればよいのかという現実的な生活の工夫である場合が多いです。
そうした気持ちを理解し、具体的で実用的な助言を行うことを心がけましょう。
3.介護者を気遣う言葉がけ
介護者が心身ともに健康でなければ、在宅での介護は成り立ちません。 介護者への声かけには、負担感を和らげる役割もあります。家族の体調や睡眠時間、健康についてさりげなく聞き取り、表情や様子から、今困っていることはないか、何か不安なことはないかを確認してみましょう。
介護者は、申し訳ないという気持ちを感じ要望や悩みを言うことを遠慮していたり、サービスを利用している間も不安を感じていたりする場合があります。これらの不安を解消するためにも、積極的にコミュニケーションをとるよう意識しましょう。
レスパイトケアの課題
1.急なサービス利用に対応しづらい
介護保険サービスを利用する場合、サービスを利用するためには事業所の調整や契約、担当者会議等の手順を踏む流れとなっています。
そのため、家族の急な体調不良や突発的なサービス利用については対応しづらい現状があります。
ケアマネジャーが介護者についても適切にアセスメントを行い、計画的に利用できる状態を作っておく必要があります。
2.介護者の訴えがあるまで気づきにくい
介護者の中には、日々の介護の中で、自分の時間がなくてもそれを当たり前と感じてしまい、気づいたら自分を追い込んでいる人や、自分でやらなくてはいけないという強い責任感で疲弊してしまう人が少なくありません。
ケアマネジャーの訪問で直接会えなかったり、本人の様子だけを話して介護者についてはあまり話せなかったりということが重なると、知らないうちに1人で負担や悩みを抱え込んでしまうこともあります。
かかわるサービス事業者それぞれが、介護者の様子も気にかけ、介護への負担感を大きく感じているようであればレスパイトケアの促しを行うために、ケアマネジャーへの相談が必要です。
3.利用者さん主体のサービスを提供する
レスパイトケアは介護者の休息を目的としてはいるものの、ケアの主体はあくまでも利用者さんご本人です。 レスパイトケアのためのサービス利用の場合、本人は望んでいないが、介護者の事情でサービスを利用せざるを得ないというケースがほとんどではないでしょうか。
しかし視点を変えると、自宅の外へ出て介護者以外の人とかかわるという機会は、社会生活を送るうえで利用者さんにとってもプラスとなる場合が多いです。サービスの利用で、介護者にとってメリットがあるだけではなく、利用者さん自らが利用したい、利用してよかった、と思うようなサービスの提供を行えるようにすることが、介護職の使命であると思います。
まとめ:レスパイトケアを活用し、より質の高い介護を行っていきましょう!
レスパイトケアの適切な活用は、介護者にとっても、介護を受ける側にとってもメリットがあるということがわかりました。
誰かに頼る、誰かに悩みを打ち明けるというのはハードルが高いように感じる場合もありますが、レスパイトケアについて、目的をしっかり把握し、継続的な在宅介護が行えるよう、適宜活用していけるとよいでしょう。1人で抱え込まないこと、これだけは忘れないように介護生活を送ってください。
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