三軒茶屋はなんで「たこ焼き」だらけやねん! 平らげながらその理由を探る
夜な夜な三軒茶屋の繁華街を歩いていると、目に留まる「たこ焼き」の4文字。ここまで軒を連ねている街は、東京広しと言えど、そうはあるまい! もしや、なにか理由があるのか? 平らげながら謎をひもといてゆく!
元たこ焼き屋がハマった“三軒蛸屋”
大阪のオバちゃんの家庭の味『立呑 たこ焼き なんば』
「ウチのつまみは、我が家の家庭の味」と、昭美ママ。銅板で焼かれた小ぶりなたこ焼きは、熱さを恐れずひと口で。こってりソースとそれを引き立てる出汁の芳香に、甘酸っぱいガリが合う。ガリチュウも流し込めばさらにサッパリ。次のひと口、進みまくりさ!
19:00~翌1:00(土は17:00~、日は17:00~23:00)、火休。
☎なし
酒飲みの舌に直撃する仕上がり!『三軒茶屋 天風』
「ウチのたこ焼き、いっちゃん旨いと思うんす」と、スタッフのせいやさん。セルフサービスのハイボールを注いで待っていると、フワフワのアツアツがお目見えした。舌の上にのせれば薄皮が溶けてトロトロが炸裂。出汁の風味と黒七味醤油の相性たるや。困るよ、酒が進みすぎる。
19:00~翌3:00、無休。
☎03-6804-0550
もはや飲むように食べられる『たこはる』
「いろいろな人の助言を咀嚼(そしゃく)しつつ、シンプルに仕上げました」と、店長のダイスケさん。焼きたてを箸でつまめば、とろけて落ちそうな柔らかさ。口の中に小籠包のごときアツアツのタネがドバ! 熱い! でも出汁の風味をしっかり感じられ、ハマるやつ。
17:00~翌2:00(金・土・祝前日は~翌5:00)、日休。
☎03-5432-0876
もしや三茶って、関西人が多いのか?
10年ほど前、たこ焼き酒場を任されていたことがある。来る日も来る日もたこ焼きを焼いていたから、地平線から転がってくる巨大なたこ焼きに押しつぶされる夢を毎晩見ていたもんさ。たこ焼き屋を見ると、そんな日々を思い出して懐かしくなる。で、三茶のたこ焼き屋密集具合を見て、妙にテンションが上がったわけ。
「僕が三茶に住んだのはここ1年だから分からんけど、オープンした頃はほとんどなかったらしいっすよ」とは『天風』のせいやさんだ。店自体はオーナーが2014年前に代官山で創業し、三軒茶屋店は2020年にオープンした。
そういや『なんば』の昭美ママも「ウチがオープンした後、ポツポツ増えたなあ」と言っていた。『なんば』のオープンは2019年。たこ焼き屋が増えたのは本当にここ数年の話なんだ!
それにしてもにぎやかだ。よくよく耳を傾ければ、関西弁の客が多いこと。
「私がコテコテの関西弁だから、みんな『故郷の言葉でしゃべれる』って喜ぶの」とママ。地元感に引き寄せられて関西人が集まってるというわけか。もしや三茶って、関西人が多いのか?
「そうかも」とは、『たこはる』のダイスケさん。彼自身は関東出身だ。
「お客さんから、『関西人はなぜか三茶に集う』と聞いたことがある。街の風情が似てるのかもしれないですね」
隣の客と肩がぶつかるほど狭い店がそこかしこにある。それが関西の立ち飲み文化に通じるのかもしれない。
まあ、「たこ焼きだらけ」の謎は解けなかったが、「たこ焼きの似合う街」だということは、分かった気がする。しかも、どこも激ウマだから「たこ焼き天国」と言っても過言ではあるまい。
三茶に降り立ったら、たこ焼きで一杯。これは間違いない飲み方ですぜ。
取材・文・撮影=どてらい堂
『散歩の達人』2025年1月号より
どてらい堂
熱血物書き
インタビュー記事を得意とするが、街頭調査やルポルタージュなど、体当たりな企画はより嬉々として勤しむ1984年生まれのB型男。主に『散歩の達人』で執筆。漫画・アニメ・格闘技オタクで、少年漫画脳な気質が文章にちらほら。たこ焼きの腕だけはプロ以上。