政治とカネ問題で「香典」が使われる理由とは?
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、7月22日の放送で「香典の負の連鎖と裏金」というテーマを扱い、『日刊ゲンダイ』第一編集局長・小塚かおるが解説に登場した。
鈴木純子(文化放送アナウンサー)「自民党の堀井学衆議院議員が秘書らを通じて有権者に香典を提供したとされる疑いで、東京地検特捜部の強制捜査を受けました。派閥裏金事件の逆風がやまない岸田総理にとって新たな痛手となる政治とカネの問題、野党は『自民の体質』と総理を批判しています」
長野智子「すごく氷山の一角感がありますね」
小塚かおる「本当にそうなんです。昔から『選挙の票のため』といったら、あまりにあけすけですけど……。要するに有権者の心をつかむ、人心掌握術として、田中角栄さんなんかが『冠婚葬祭は大事にしろ』という中でも、結婚式は行けなくても新郎新婦に後日会って挨拶できると。でも亡くなったときはお葬式やお通夜、そのときしか行けない。どちらかを大事にするのならお葬式なんだ、みたいな」
長野「田中角栄さんから来ているんですね」
小塚「自民党だけではないと思いますけど、やっぱり自民党の中で、お葬式に行く、香典を渡す、というのが習慣、慣習のようになっていて。一応、公職選挙法では、本人が葬儀に参列したときは例外的に認められるんです。本人が行くならいいじゃないか、お悔やみの気持ちがあって行くんだ、みたいなことで例外になったんじゃないか、と思うんですけど、本人以外はダメだ、公職選挙法違反だ、となるわけじゃないですか」
長野「はい」
小塚「初めは本人が行くんですけど、だんだん、あの人も行かなきゃ、この人も行かなきゃ、と。有権者のほうからも『あの人のところには来たのにうちには来なかった』と言われると選挙のマイナスになる、とか。そういうことを考えるうちに『あそこも、ここも』としていたら全部は行けない。自分が行ったことにして秘書の人、家族の人に行ってもらう。負の連鎖なんです」
長野「そうなりますよね」
小塚「そうなっているのが自民党のいまのお金の使い方だと。もちろん全員ではないと思いますけど。実際に2000年代に小野寺(五典)さんが線香を配って、公職選挙法違反で公民権停止3年となって議員辞職している。つい最近も菅原一秀さんという元・経産大臣が辞めましたよね。ダメだということはある程度浸透しているんでしょうけど、結局選挙を考えたらやめられないという。有権者側が『それはダメよ』という意識も必要なのかもしれないし。冠婚葬祭で票を稼ぐみたいな、ステージの中身が裏金を生むような政治土壌になったんじゃないか、と考える部分が必要だというのもあると思います」