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【80年代アニメソング総選挙】クラブDJが再発見!アニソンの “レア・グルーヴ” に要注目

Re:minder

1982年10月07日 日本テレビ系アニメ「ときめきトゥナイト」放送開始日

アニソンとクラブミュージックの接点


現在ではアニソンをクラブやDJ Bar などでプレイする姿が全国各地で見られ、アニクラ(アニソン+クラブ)とかアニソンDJという文化が日本国内で一定の認知を得たように感じる。このような楽しみ方の拡散には2009年に秋葉原にオープンしたDJ Bar “MOGRA” の存在と、そこで開催されたアニソン系のDJイベントの影響が大きかったことは間違いないだろう。

しかし、アニソンとクラブミュージックの接点を遡ると90年には電気グルーヴが『あしたのジョー』(第1作)、スチャダラパーが『新オバケのQ太郎』や『サザエさん』などのアニソンからフレーズをサンプリングし、自らの楽曲にそれらの要素を取り入れた。同時期のクラブ黎明期には一部のDJが飛び道具的に『ルパン三世のテーマ』などを洋楽のディスコやジャズファンク系の曲に混ぜてプレイしていた。いずれも当時のプレイヤーたちが幼少期に観ていた70年代のアニメ作品がその中心である。

過去の楽曲にファンキーな感覚やダンスミュージックの要素を見出し、再発見・再評価されたものは “レア・グルーヴ”と称され、その新たな評価軸が80年代後半以降の音楽シーンで注目されるようになるのだが、前出のケースもこの “レア・グルーヴ”ムーヴメントの影響下にあるものといえるだろう。そして、90年代半ば以降になると80年代のアニメを観て育った世代がDJとしてクラブシーンで活動を繰り広げるようになり、“レア・グルーヴ”的解釈のもと80年代のアニソンのみでアナログ(レコード)プレイする者も登場する。かくいう筆者もその最初期の1人である。

クールな映像にジャストフィットな「スペースコブラ」主題歌


本稿では実際に筆者がクラブでプレイした楽曲を元に、“レア・グルーヴ”的観点で楽しめる80年代アニソンをご紹介しよう。

まずは寺沢武一原作『スペースコブラ』(82年)のオープニング主題歌、前野曜子が歌う「コブラ」を。『ルパン三世 』(第2シリーズ以降)やNHKアニメ『キャプテン・フューチャー』などの楽曲でおなじみ、大野雄二の作曲・編曲による楽曲だ。

出崎統監督のハードボイルドな演出が光るSFアクションにジャストフィットするスリリングなジャズファンクはディスコ系の楽曲とも相性良好。ホーン(管楽器)とストリングス(弦楽器)が艶めかしく絡み合うクールな音像、そして、中森明菜「TANGO NOIR」なども手掛けた浪漫派の冬杜花代子による男の生き様がほとばしる歌詞も秀逸だ。

加茂晴美が歌う「ときめきトゥナイト」はサンバ調のトロピカルディスコ


お次は池野恋による人気少女漫画が原作の『ときめきトゥナイト』(82年)の同名オープニング主題歌。楽曲は作詞・作曲は古田喜昭、編曲は大村雅朗、歌は加茂晴美が担当。前年に作詞・作曲を手掛けたシュガー「ウエディング・ベル」のヒットで作家として注目を浴びていた古田が初めて手掛けたアニメ主題歌で、オファー時に「(楽曲内容に)一切注文しないので、思った通りの曲を書いて欲しい」と言われ引き受けたという。

楽曲的には古田が幼少期から親しんだラテン音楽志向が色濃く出たサンバ調のトロピカル・ディスコ。当時UK発のトレンドだったファンカラティーナ(ヘアカット100、モダン・ロマンスなどのバンドが人気を博した)のサウンドにもシンクロするものだった。

また、テレビ放送バージョンの歌い出し「♪物理学的には 今の私 三角関係の一点なの」のフレーズで始まる歌詞は、コピーライター的なセンスで乙女心を描写。一度聴いたらクセになる意外性のある譜割りは作詞と作曲の分業制では生まれていなかっただろう。

高橋名人の爽やかな美声が最大の聴きどころ


80年代を代表するブームといえば「ファミコン」だが、ボタンを1秒間に16回連射するファミコン名人として当時のブームを牽引した高橋名人(高橋利幸)もアニソンを歌っていたのはご存知だろうか。

今回の『80年代アニメソング総選挙!ザ☆ベスト100』では、残念ながら楽曲エントリーから漏れてしまったが、高橋名人がモチーフのキャラクター、“高橋原人” を主人公にしたTVアニメ『Bugってハニー』(86年)の同名オープニング主題歌は、そのゆったりと甘くメロディアスなソウルテイストと流麗なアレンジが、まさに90年代にDJの間で愛された “レア・グルーヴ” 系ソウル楽曲の特徴にばっちりハマる内容。

制作の布陣は作詞:岡かすみ、作曲:小林亜星、編曲:筒井広志というもので、作曲・編曲の小林 × 筒井によるタッグは『プロゴルファー猿』などの名アニソンを手掛けており、サウンドの盤石さは折り紙つきだが、なんといっても高橋名人の爽やかな美声が本作の最大の聴きどころ。楽曲制作陣も名人の特徴的な声質を念頭に置いて曲調を決めていたというからその意気込みに驚かされる。

アニソンに秘められたレア・グルーヴを再発見


ここまで紹介した3曲とも、いずれも実に踊れるDJユースな作品で、実際に筆者が数多くのDJ現場でフロアを沸かせてきた珠玉のトラックだ。子どもの頃に何気なく観ていたアニメ主題歌の中には、大人になって音楽的な知識や経験を経た上でその魅力を再発見できる “レア・グルーヴ”な楽曲がまだまだ多くある。

あなたがかつて胸踊らせたアニソン、そこに秘められたグルーヴに改めて身も心も踊らされる瞬間が訪れるかもしれない。今回は紹介しきれなかったが『ビックリマン』や『悪魔くん』、『メイプルタウン物語』の主題歌などまた機会があればぜひその魅力を詳細とともに紹介できれば幸いだ。

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