全盲者が描く似顔絵と心 南区のNPOが企画
全盲の吉田良二さん(44)が絵の具で似顔絵や心を描く「ArtInTheDARK」が11月2日と3日、横浜・象の鼻パークで行われた。「新しい社会参画のきっかけを提供する」を理念とし、南区を拠点に障害者アート事業を運営するNPO法人ソーシャルアート市場(島田皇代表理事)が企画した。
吉田さんは小学校1年生で全盲に。色の概念はあるが正確な物の色は分からないという。サポーターに濃淡や「柔らかい」などのイメージを伝えて色を作ってもらい、相手の声のトーンや大事にしていること、人となりなどを聞き、連想した物を描いていく。参加者はアイマスクで視覚を遮断。どんな絵になるか想像しながら完成を待つ。作品を見て「自分より自分の本質を捉えてくれている」「どうして私のラッキーカラーが分かったのか」と驚いていた。
視覚障害を価値に
同法人の島田代表は、昨今注目される障害者アートで成功しているのは一部の人、という課題を感じていた。障害特性がある誰もが活躍できる場をつくりたいと元同僚の吉田さんに声をかけた。吉田さんは「絵を描いたことはなかったが、味がある絵だと言われるとうれしい。視覚障害を価値の一つと捉えてもらえたら」と話す。
島田代表は「アーティスト、サポーター、参加者、全員で絵が完成する。障害分野は当事者にフォーカスされがちだが、周りの人も社会参画意識が必要。アートを通じてそのきっかけを提供し、少しだけ隣の人に優しくなれる社会ができれば」と語る。将来的には障害者アーティストとユーザーが直接つながるアートプラットホームの構築を目指し、思いに賛同してくれる全盲者や弱視の人を募集している。