「共助」で工夫、防災対策 安全・安心に貢献
地震などの災害時、「公助」が行き届く前、地域に求められる「共助」。地域によって課題に違いがある中、さまざまな工夫で地域の「安全、安心」を守るための取組が区内で見られている。元日の能登半島地震から間もなく1年。区内各地の防災対策を取材した。
避難者情報管理にスマホ活用試行
折本小学校で行われた地域防災拠点運営委員会による防災訓練では、同委員会の管理情報班が中心となり、避難者情報の管理にITを活用する方法を試行した。
同班では、これまでの防災訓練の経験を踏まえ、避難所での避難者情報の管理を、紙への記入からスマホへの入力に移行することで、災害時に限られた人員を必要な場所に充てられる、と委員会の役員らに提案。同班の宮下善行さんは「電気が復旧するまでは紙での記入は必要だが、復旧後はITでできる事はITに任せ、手・足・頭を使うことに人員を割ける」とIT活用の意義を語る。
地域にはスマートフォンなどに不慣れな高齢者も多く、試行に対して理解を得るのに時間がかかったというが、同班では粘り強く交渉。宮下さん自身で入力用のソフトを自作するなどし、試行にこぎつけた。
11月24日の防災訓練では、233人の参加者の内、56人がスマートフォンから自身の情報を入力した。宮下さんによると試行は「概ね好評」で「入力方法を聞きに来てくれる高齢者もいた」という。今回の試行を通じ、ITの必要性には一定の理解が得られたと手応えを感じた一方、「タブレット端末があると便利なので、端末の貸与や横浜市の『避難ナビ』に追加してほしい機能など、地域だけでは解決できない課題も見つかった。できる範囲で行政や教育委員会などとも意見交換できれば」と思いを語った。
OCで情報共有防犯対策にも活用
東山田四丁目町内会では、役員間の連絡ツールで利用していたオープンチャット(OC)を、11月の防災訓練にあわせ「防災情報」の共有に活用する取り組みを始めた。
同町内会の課題の一つが「要援護者」の安否確認。出川由夫副会長によると、災害時には名前や住所が記された「要援護者支援リスト」を頼りに一軒一軒安否確認する予定だが、人手も時間も要するため、「助かる命も助けられなくなる」と感じていたという。また「役員の半数以上は仕事を持っており、災害時すぐに自宅や町内に戻ることは困難。住民の中には『避難所で自分が対応できるか不安』という意見もあり、情報を共有するツールになれば」とOCを防災用にも開設することにした。
約380世帯の同自治会で、11月14日の時点で41人が参加。24日の防災訓練当日には参加者は59人にまで増加した。
同自治会では、青葉区で起きた強殺事件を受け、OCを防犯情報の共有にも活用。「地域の目」による犯罪抑止を狙ったポスター=写真=の作成や掲示など、新しい動きにもつなげている。出川副会長は「このような活動を機に町内会に興味を持ってもらい、加入者を増やし、担い手不足解消につなげたい」と期待を寄せた。
公民館に発電設備町内会の電源確保
東山田一丁目町内会では、災害時の拠点となる公民館の屋根に、市の補助金を活用し太陽光発電システムと蓄電池を設置した。
太陽光発電システムは、横浜市が推進する自治会町内会館の脱炭素化推進事業の補助金で設置。同町内会では、脱炭素化はもちろん、災害時の多様な電源確保につなげたいとの思いで、役員会に設置を提案。総会で了承を得た。8月に補助金の交付が決定し、10月15日に設置が完了した。同補助金を利用し、太陽光発電や蓄電池を設置した自治会は、都筑区では同町内会だけだった。東山田連合町内会の中で最多の480世帯を抱える同町内会。役員の笠謙新さんは「一丁目町内会は、災害時でも24時間365日電気のない環境を作らない」と力を込めた。
設置した太陽光パネルの発電量は7・9kW、蓄電容量は12・7kW。3、4人家族の5日分の電力に相当する。設備総額286万円のうち、市からの補助金は3分の2の約190万円。自治会負担は約100万円だったが、積立金を取り崩したため、町内会の追加負担はなかったという。
11月24日には住民らを招き完成披露会を開催。市の担当課長らが出席し、設置の意義などを説明した。