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いざという時も安心!“フェーズフリー”な東池袋の防災公園「イケ・サンパーク」を散歩してみよう!

さんたつ

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東京都豊島区東池袋にある「としまみどりの防災公園」。この公園は「IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク)」の愛称で親しまれ、普段はたくさんの人が散歩やスポーツなどを楽しんだり、イベントが行われたりするなど憩いとにぎわいの場になっています。一方で、非常時には一時避難場所やヘリポート、災害物資の集積所として活用されます。園内には、防火樹林帯や井戸水を使用したトイレ、かまどベンチなど「フェーズフリー」を意識した工夫がいくつもあります。巨大地震などの災害はいつ発生するか分かりません。イケ・サンパークで楽しみながら防災について考える散歩をしてみませんか?

「いつも」と「もしも」を兼ね備えた防災公園。開放的な原っぱはヘリポートに!?

「フェーズフリー」ということばをご存じでしょうか?

これは、日常と非常時(災害時)との壁をなくして、普段使っている物やサービスを非常時にも役立つように工夫しようという防災の概念です。「備えない防災」とも呼ばれています。

「イケ・サンパーク」は、散歩やあそびを楽しむために「いつも」集まる公園でありながら、地震などの「もしも」の事態が起こった時にも役立つ機能を備えています。

園内にはきれいな並木道がありますが、ここにいざという時に役立つ秘密があります。両脇に並ぶ木は、燃えにくい性質のあるシラカシの木。公園の向かい側は住宅が密集する地域で、木造の住宅も多く含まれていますが、火事が発生した場合はシラカシが延焼を防ぐ「防災樹」としての役割を担ってくれるのです。曲がりくねった並木道はおしゃれな雰囲気を味わえますが、防火の役割を備えているとは驚きです。

一見、普通の並木道に見えるが……。
シラカシには、災害時に恐ろしい火災の延焼を防ぐ役割がある。大きくなるとドングリがたくさん実る木でもあります。
園内には64本のシラカシが植樹されている。夜はライトアップして大人な雰囲気に。

日曜日の午後、園内の大きな原っぱではピクニックなどを楽しむ人でにぎわっていましたが、実はここ、非常時はヘリポートとして機能します。

ヘリコプターは災害時に道路が遮断されている場合は支援物資を運んだり、怪我をした人を救急搬送したりするときに活躍します。ヘリコプターが安定して着陸できるように、ヘリポート内は強い力で土を固めて芝生を植え、頑丈な造りになっているとのこと。さらに、ヘリの着陸や大型車両が入る時に邪魔にならないように、園灯や木などの固定物は極力少なく設計されているそうです。

非常に強い力で土を固めて芝生を植え、ヘリコプターが着陸する時に転倒するなどの事故を防ぐ。

疲れたら……ちょっとベンチで一休み。災害時には「かまど」に変身! 

散歩に疲れたら、ちょっとベンチに座って一休みしたいですよね。こちらのベンチは、特別変わった雰囲気はないように見えますが、防災の工夫が隠れています。

これは「かまどベンチ」といって、座席が蓋のように開くようになっていて、中には組み立て式のかまどが入っているのです。イケ・サンパークが一時避難場所として開放される時に、炊き出しなど火が必要な場合に活用できるようになっています。

ベンチの中にある組み立て式のかまど。全部で8基あり、お湯を沸かす、煮炊きをするなど災害時に使える(写真提供=イケ・サンパーク)。

非常時の温かい食事はとても貴重なものです。普段はなかなか気づきにくい機能ですが、いざという時に役立つことを知っていると安心ですね。

ほかにも園内にはいざという時に命を守る防災機能がまだまだあります。たとえば、災害時に必要不可欠な水を十分に蓄える装置も備えられています。「応急給水施設」には、大規模災害時に100tもの飲み水を蓄えることができ、非常時に園内へ避難してきた人が飲めるようになっています。

災害時、水は生命を維持するために絶対に欠かせない。水道管と直結していて常に新鮮な水が流れている。

また、東京消防庁が設置する防災用の「深井戸」もあります。芝生広場の下には約200mまで井戸が掘られていて、消火に使用する水が貯められています。公園の近くで大規模な火災が発生したときに速やかに消火に当たることができるようになっているのです。

広い通りの理由は……?

テントが並んでにぎわう広い通りにも防災機能が備わっています。注目すべきは地面です。災害時などには区内の方に物資を配るため、10tクラスの大きな車両が園内に乗り入れます。大型車両が走っても地面がガタガタしないように非常に強固な作りに設計されているのです。

撮影時にはファーマーズマーケットが開催されてにぎわっていた※2024年11月現在はイチョウ並木にて開催。
普通の道に見えるが、ここにも安全を守る機能が!

ほかにも、災害時に逃げ込んできた人がトイレをスムーズに利用できるように、普段は解放していない「臨時トイレ」が設置されていたり、非常用公衆電話や災害時の活動に必要な「備蓄倉庫」、停電時にも使用できる「非常用発電機」も備わっていたりするなど、いざという時に私たちが安心できるようにさまざまな対策が取られています。

首都直下地震に備えて私たちにできること

イケ・サンパークのある首都圏では、今後30年以内にマグニチュード7クラスの巨大地震の発生する確率が70%と想定されています。地震の発生を正確に予測することは難しく、災害はいつ発生するか分かりません。人口の密集する首都圏で大地震が起きると、大勢の人が一気に集中することで動けなくなり、人が折り重なって倒れる「群衆雪崩」の危険があるほか、木造密集地域では大規模な火災の発生するリスクもあります。

散歩をする時も、もしもに備えておく必要はありますが、そうはいっても防災のために何かをするのはなかなか難しいことですよね。改めて備えをしなくとも、普段から災害時も動きやすい靴を履く、非常時も役立つグッズを入れた防災ボトルや防災ポーチを持つなどフェーズフリーを意識した習慣を身に着けておけば安心できます。

そして、もしもの時に逃げ込めるイケ・サンパークのような防災公園の存在を知っておくことも、まさかの事態の時にはとても役立ちます。

園内では防災機能が備わっているだけでなく、桜やアジサイ、紅葉など四季折々の植物も楽しめます。季節の移ろいを楽しみながら防災について考える散歩をしてみませんか?

春には桜の花の下、お花見を楽しむ散歩も良さそう。
「豊島区の木」でもあるソメイヨシノ。イケ・サンパーク以前にこの地にあった造幣局のシンボル。

文=片山美紀 画像=イケ・サンパーク、片山美紀

参考HP:
IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク) https://ikesunpark.jp/
内閣府 防災情報のページ/地震災害 https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/jishin.html

片山美紀
気象予報士
大阪府出身。大学卒業後、放送局での勤務を経て気象予報士、気象キャスターに。街歩きをしながらお天気ネタを探すのが趣味。空を眺めようと上を向きがちです。NHK総合「首都圏ネットワーク」などに出演中。

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