「そうなったら、この世界を去る時」。「フースーヤ」が胸に秘める覚悟
デビュー当初からキャッチーなネタで注目されてきたお笑いコンビ「フースーヤ」。昨年のNHK上方漫才コンテストで優勝するなど着実に歩みを進めています。2月16日に放送された「ytv漫才新人賞」のROUND3で勝ち残り、来月開催の決勝進出も決めました。田中ショータイムさん(31)、谷口理さん(31)が語る漫才への果てなき思い。そして「そうなったら、この世界を去る」という秘めたる覚悟とは。
左から田中ショータイム、谷口理
―ROUND3を勝ち上がり、決勝進出を決めました。
谷口:「ytv漫才新人賞」には悔しいくらい縁がなかったというか、昨年チャレンジしたもののウソみたいに結果が出なくて。
昨年で言うと、NHKの賞レースでは優勝できましたし、大阪・なんばグランド花月での単独イベントも開催できた。いろいろとプラスの結果を残せた年でもあったんですけど、本当に「ytv―」だけがダメだったというか。
なので、今回決勝に進むことができたので、何としても結果を出す。リベンジというか、他の賞レース以上に「絶対に取るぞ」という思いが強い場にもなっていますね。
田中:本当に優勝しかない。それだけを考えています。しっかりと勝ち切って、その上で「どうだ!」じゃないですけど、やっと悔しさをクリアできる。そんな思いもあります。
―「どうだ!」と言うためには、まず優勝しないと成立しませんもんね。
田中:昨年、一昨年と「М-1グランプリ」でも準決勝までは進んで、敗者復活戦に挑むことにもなりました。自分で言うのは本当にアレなんですけど、これまでよりは“実力派”みたいな感じで見てもらうことも多くはなったと感じています。
ただ、事実として今年になってからこれまで以上にネタも作っていますし、作ったネタを舞台に出て磨き上げる。その精度もより高くやっているつもりです。
ありがたい話、少しはネタを評価していただけるようになったのかもしれませんけど、自分たちとしては全く満足していない。それがあるからこそ、これまで以上に、トレーニングの強度を上げています。
やっていてつくづく思うんですけど、漫才には果てがない。いつまでいっても終わりがない。「これでいい」と思ったら、それはもうこの世界を去る時だと思っています。
―以前、オール巨人さんに取材をした際にも「もう70歳を超えているんやけど、まだまだうまくなりたいと思っています」とおっしゃっていました。漫才というのは、ゴールテープを切ってしまったら、終わってしまうものなのかもしれませんね。そもそもの話、ゴールテープなんてものがないのか。
田中:本当にその通りで、ゴールテープは永遠に切れないものだと思います。それでも、ずっと見えないゴールテープを追い続ける。それがこの仕事なんだろうなと。
谷口:…今、完全に「ゴールテープ」というワードを中西さんからもらったよな(笑)。
田中:いやいや、ゴールテープについては常々考えてますから(笑)。 言ってしまえば、漫才って宇宙みたいなものだとも思うんです。真っ暗な中で、永遠に広がり続けて、見えているのはお客さんの笑いという小さな光のみ。そこを頼りに進んでいく。本当にそんなものだと感じています。
―そのあたりについて、谷口さんはいかがですか?
谷口:そうですねぇ、僕はTikTokもやっているんですけど、そこでも何が正解か分からない。それは感じています。いわば、真っ暗な中を進んでいくようなものだし、それをやり続けないといけない競技だとも思っているんです。その中にある唯一の光が見てくださっている人の喜び。それを探しながら、見えないゴールテープを目指すというか。
―コンビ仲、いいですねぇ(笑)。
二人:そら、そうなりますよね(笑)。今の流れだったら。
―でも、いろいろな芸人さんにお話をうかがいますけど、本当に暗闇というか、何が正解か分からない。「この道を200キロ走ったところにゴールがあります」と言われたら、這ってでもゴールを目指すけど、どっちにゴールがあるのか。どれくらい走ったらゴールなのか。それが分からないのが難しい。よく芸人さんから聞く言葉ではあります。
谷口:本当にそうだとリアルに思っていて、これが本当に分からないんです。だからこそ、結局何が大事なのか。それを考えた時に思うのが「『この道で合っているはずだ』と思い込む力」なんだろうなと。自分の道を信じる力。それをやり切る力。それが一番のカギなのかなと感じています。
田中:まじめな話になりましたけど(笑)、本当にそうだと思いますし、その道を進んでいく。それしかないんだろうなと思っています。
■フースーヤ
1993年7月10日生まれの田中ショータイムと、93年5月1日生まれの谷口理が2016年にコンビ結成。ともに兵庫県出身。吉本興業所属。高校の同級生として出会い、NSC大阪校に38期生として入学する。フジテレビ「新しい波24」、CBCテレビ「本能Z」などでデビュー直後からリズミカルでキャッチーな芸風で注目を集める。昨年、NHK上方漫才コンテストで優勝。今年3月に開催される「ytv漫才新人賞決定戦」に出場する。