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好きになった人には彼女がいて…社内の男性を好きになった女性の略奪愛とそのリアル

ウレぴあ総研

すでに恋人や配偶者がいる人を好きになり、それでも手に入れたくて奪うことを考えるだけなら、よくあることかもしれません。

「もう幸せになっている」状態の人をこちらに向かせるのは並大抵の努力では難しく、極端な行動に出る自分を肯定するのがつらいときがあります。

忘れてはいけないのは「奪ったその後」のことで、満足するつながりになれるかどうか、努力は続きます。

「略奪愛」は本当に幸せになれるのか、ある女性のケースをご紹介します。

忘れられなかった人

由紀江さん(29歳)には、「どうしても忘れられなかった」と話す男性がいます。

同じ会社の別の部署で働く人で、業務の関係で知り合い仲良くなったそうです。

「同い年で、慣れない私に嫌な顔をせずいつも丁寧に教えてくれて、一緒に仕事をするのが毎日楽しみでした」

顔を合わせる時間が長いので個人的なことも打ち明けるようになり、いつの間にか彼を好きになっていた由紀江さんは、「彼女がいると知ったときはショックだったけれど」と振り返ります。

そこで恋愛関係を諦めて仕事仲間と割り切れたらよかったのですが、由紀江さんが彼との関係に希望を持ったのは、彼女との仲が上手くいっていないと知ったときでした。

「金曜日の夜、仕事帰りにふたりで飲もうって話になって、居酒屋に行きました。

そのときに、酔った彼が『別れたいけど向こうがしがみついてくる』って言い出して、彼女とはしばらく会っていないことなど話してくれました。

それで、『私を好きになってくれたら』と、つい思いましたね……」

そのとき、由紀江さんのなかでは「こんな話をしてくれるのだから、自分は彼にとって近い存在のはず」という期待がありました。

仕事仲間でプライベートな話も共有できる今のつながりを、由紀江さんは何とか恋愛関係に持っていけないか、考え始めます。

変わっていく態度

由紀江さんは彼に好かれるために、次の週から接し方を変えたといいます。

「メイクとか服とかを可愛くして、彼と話す時間を増やしました。

『いつもありがとう』と彼を持ち上げて、仕事帰りにまだ話せないか理由を作って食事に誘ったりもして。

いま思えば、かなりあざとかったなと思います」

「好かれたい」と思えば行動が極端になるときもありますが、相手が「すでに彼女がいるけれど上手くいっていない男性」だったことが、由紀江さんの焦りを強くしていたのではと想像ができます。

ふたりの仲が元に戻る前に自分に振り向かせたい、時間勝負のような感覚は、「彼女から気持ちが離れている今がチャンス」と、由紀江さんを追い込んでいったのではないでしょうか。

こんな由紀江さんについて、男性のほうは今までと変わらず相手をしてくれて、酔っ払って彼女の愚痴を吐いたことも

「男らしくなかった、嫌な話を聞かせてごめん」

と、正面から謝ってくれたそう。

そんな様子を見てさらに彼を好きになったと話す由紀江さんは、家に帰ってからは男性とLINEでメッセージのやり取りを続け、距離の近さをアピールしていきます。

中途半端な状態で別の異性からアプローチされる自分

このとき、男性とはどんな内容の話をしていたのかを聞いていくと、「彼女さんについては話題に出さないように気を付けていました」と由紀江さんは振り返ります。

男性の恋人抜きで、自分たちふたりの仲が深まるように、仕事や趣味、好きなことなどの話をしていたそうです。

ここで男性の状態を考えてみると、「上手くいっていない彼女はいるが、まだ交際中」「だけど別の女性からアプローチを受けている」のが現実です。

明らかに自分への接し方が変わった由紀江さんを見て恋心に気づかないはずがなく、つまり「これからの自分の態度がこの女性の気持ちに大きく影響する」ことは、容易に想像ができます。

酔って愚痴を吐いたことをしっかりと謝るような誠実さを考えれば、この「中途半端な状態」は、男性にとって苦しいものではなかったでしょうか。

その証拠に、「休日に会うような雰囲気になると話題を変える」「LINEはするけど電話で何時間も話すようなことはしない」と、由紀江さんと親密度を深める言動は避けていました。

あくまで仕事仲間のスタンスを保ったままで、それでも由紀江さんをきっぱりと拒否できなかったのは、男性の気持ちも揺れていたのかもしれません。

想像と真逆の現実

由紀江さんは、彼とのことを仲のいい友人に相談したとき、「それって略奪愛じゃん」と言われてびっくりしたそうです。

「でも、はたから見ればそうなんだよねって、まだ彼女と別れていない人を追いかけている自分を改めて見て思いました。

彼から好かれているような実感はないけど、このまま彼女とも別れるだろうなって、どこかで思い込んでいた気がします」

「私のことが嫌なら遠ざけるはず」と由紀江さんは思っていて、そうしない彼を見て、自分への好意があるのではと期待していたそうです。

「告白しようとは思わなかったのですか」と尋ねると、

「下手に好きだって言ってしまうと、彼のことだからまだ別れていなかったらごめんと謝るかもって思いました。

それで変な空気になるより、彼が別れた報告をくれたら告白しようと考えていましたね」

と、いつしか彼から「ひとりになった」と言ってくれることを待つようになります。

ですが、そんな彼からある日言われたのは、

「今週末は彼女と一泊の旅行に出かけてくる」

と、期待した現実とは真逆の言葉でした。

「LINEで言われたのですが、『え、何で』って、まず返してしまいました。

別れたいはずじゃなかったのって……」

男性からは「一応、仲直りした」とだけ返ってきたそうで、何があったのか由紀江さんは知らないまま、その日は男性とのやり取りは終わりました。

「奪われる側」の気持ち

「別れたいけど彼女がしがみついてくるなんて嘘で、出来心で私の相手をしていたのかなとか、ショックでいろいろ考えました」

突然の「復活宣言」に、由紀江さんは相当に慌てたといいます。

それは、「もし彼女との仲直りを考えているのであれば、それを教えてほしかった」という、ささやかな恨みでもありました。

「私ばかり舞い上がってたみたいで、恥ずかしかったです……」

でも、男性のメッセージや態度を見ればいわゆる「思わせぶり」なところは一つもなく、距離を縮めようとする由紀江さんを拒否はしないけれど完全に受け入れることもしない点は、一線を崩したくない男性の意思がわかります。

「遠ざけないから好かれる可能性はあるはず」と思いこんでいたのは由紀江さんの事情であって、それと男性の現実はまた別なのですね。

自分と話しながら彼女とどんな接触をしていたのか、それは今もわかりませんが、男性が選んだのは「彼女との交際を続ける」ことでした。

略奪愛で考えれば男性は「奪われる側」であり、「彼女を乗り換える」ともいえる流れをどう思っていたのでしょうか。

もし由紀江さんのことを本当に好きになっていれば、彼女としっかりと別れてから「付き合ってほしい」と堂々と口にしたことが想像できます。

そうではなく、今の彼女と向き合う選択をしたのは、由紀江さんからのアプローチがあったからこそ、今の自分の状態をきちんとしようと思った可能性もあると思いました。

「奪ったその後」のこと

「彼のことは本当に諦めました」と話す由紀江さんは、それから3ヶ月がたった今も、男性とは仕事仲間としていい関係を崩さずに過ごしています。

ふたりで食事に行くことはなくなり、LINEでのやり取りも減って、彼女とどうなっているのかはわかりません。

それでも、気持ちを割り切って接することができているのは、由紀江さんのなかに新しい現実が浮かんだからです。

「いま思うと、これで彼が私を好きになってくれて付き合えたとしても、元カノとのことを私は引きずったかもしれません。

上手くいっていないことに便乗して振り向かせても、つい最近まで一緒にいた人なら、私のようにちょっかいを出されたらまた彼はそっちを向くんじゃないかって、疑っていたと思います」

たとえ交際が順調でなくても、元カノは自分よりずっと近い距離で彼のそばにいた人です。

別れてすぐに自分という新しい彼女を手に入れたとしても、この「間が空かない」ことが、元カノの存在感を薄くしないのではないかと、由紀江さんは考えています。

「逆の立場になったら、由紀江さんはどうですか」と質問すると、少し口ごもった後で

「新しい彼と喧嘩をしたときとか、元彼を思い出すかも知れませんね。

まだ別れて間もなかったら、連絡する勢いもあるし」

と、ぽつんとつぶやきました。

「略奪愛」は幸せになれるのか

由紀江さんのケースは「相手が恋人と別れたいと思っている」のがわかっている状態で、厳密に言えば略奪愛とは違うのかもしれません。

それでも、「別れていない恋人」がいる状態で自分を振り向かせようとするのは、相手に新しい可能性や希望を思わせる一方で、望む現実はまったく別の結末を招くこともあります。

自分がアプローチをしたことで相手が恋人との関係を改めて見つめ直そうとするのは、皮肉ですがそれだけ相手が恋愛に対して真摯な姿勢を持っているともいえます。

また、略奪愛には「奪われた側」の存在が必須であり、その人間と完全に縁が切れるのか、関心がなくなるのかの不安もつきまといます。

由紀江さんのケースでは、相手は今の恋人との関係をおそらく続けているかもしれませんが、逆に言えば、見つめ直した結果別れを考え、ふたたび縁が近寄る可能性だって、忘れてはいけません。

略奪愛の結果、幸せな恋愛関係になれる理想は、この「相手が今の恋人と正しく決別を選んでから、冷静な気持ちで自分と向き合ってくれること」だと筆者は感じます。

奪われた側の存在感を減らし、「略奪愛の結果の交際」ではなく「新しく関係を結んだ交際」になれることが、幸せな関係を築くのではと思います。

略奪愛は、「すでに恋人がいる人」にあえて自分を選んでもらう難しさと同時に、その後付き合えたとしても安定した関係が築けるかどうかも、考える必要があります。

人を好きになるのが自由なら、相手もまた等しく好きになる人を選ぶのが現実です。

それを忘れず、自分の「こうありたい」をしっかりと持って好きな人と向き合いたいですね。

(mimot.(ミモット)/弘田 香)

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