仏教はインドからはじまったのにどうして中国にも広がったの?【眠れなくなるほど面白い 図解 仏教】
中国に道教が広まっていたから
伝説によると、中国に仏教を請来したのは後漢の明帝だったといいます。明帝は金色に輝く人の夢を見て、使いを大月氏国(現在のアフガニスタンの地域)に送り、それに応じた2人の僧が西暦67年に洛陽の白馬寺にやって来て経を訳したのだといいます。この話は歴史的事実ではないようですが、仏教の中国伝来はおおよそ1世紀頃と考えていいようです。ただし、それ以前からシルクロードを通って仏教徒の商人などは中国にやって来ていたようなので、一部の人は仏教のことを知っていたものと思われます。
伝来したばかりの仏教は、中国人に道教〈*〉に似たものと思われたようです。道教とは神仙思想などの民間信仰と『老子
』『荘子』に説かれる道家の思想が結合して生まれた信仰で、仏教が中国に伝わった 1世紀頃には、王侯貴族を中心に広まっていました。この道教と同様に思われたということは、老子像とともに仏像を宮中に祀ったということが『後漢書』などに記されていることからわかります。また、僧のことを道人、仏教のことを道教と呼んだことも、このことを裏書きしています
つまり、中国に道教という精神的な修行を重視する「道」の宗教があったので、仏教は大きな抵抗を受けることなく、中国社会に浸透することができたわけです。しかし、いつまでも平和共存ができたわけではありません。寺院や仏教徒の数が増え、政治的にも一定の勢力をもつようになると、道教側の反発を受けるようになり、やがては大規模な排仏・廃仏へと発展することになったのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』 監修:渋谷申博