89歳から始める高校生 湯河原町 小澤朝子さん
「毎日、何か学ぶことがあるって素敵」と話すのは、今年の4月から通信制高校「ゆがわら中央高等学院」に1年生として通う小澤朝子さん(湯河原町中央・89)だ。
「高校というものに1度通ってみたかった」と話す小澤さんは、満州生まれ。終戦後、小学校5年生で父の実家があった御殿場に移り、中学卒業と同時に近隣の紡績工場に就職した。「戦後の貧しさもあり、クラスの半数が生きていくためにすぐに働いた」という。やりがいもあったが、母親の具合が悪くなり、看病のため退職。「遊んではいられない」と、地元の商店などで働いた。24歳で結婚し、湯河原に転居。その後、子どもたちが独立し、長年連れ添った夫は8年前に亡くなり、それから一人暮らしとなった。
転機は2年前。スマホの使い方を教えてもらおうと、町内のパソコン教室「おぐぱそ」を訪ねた。同教室は、通信制高校「ゆがわら中央高等学院」も運営しており、勉強する生徒を見かける中で「年齢制限はあるの?私でもできる?」と気づいたら尋ねていた。同学院の代表・小倉高代さんは、「90歳近くの入学希望は初めて、驚いたが応援したくて」と入学をサポートした。
今日の目標がある幸せ
入学後は、体調などを考慮し、週2回、学院に通い3時間授業を受け、残りは自宅でカリキュラムを進める。「毎日教科書とにらめっこ。数学と英語は苦手だけど、戦争当時を振り返ることができる歴史が面白い」と笑顔。救急救命講習など課外授業にも積極的に参加する。「人生の先輩であり同級生」の頑張る姿は他の生徒たちにも勇気を与えているという。
小澤さんは「3年間で卒業できるとは思っていない。今日の目標があることが大切。毎日無事に過ごせたら幸せ」と話す。89歳の高校生活は始まったばかりだ。