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10ヶ月間 Jリーグクラブのマーケティング活動へ参加 『U-23マーケティング部』が人生を変えたお話

Sports

10ヶ月間のマーケティング活動を通じて、最終試練に挑む40名の学生。
Jリーグのホームゲーム(年間19試合)のうち1試合を学生が企画・運営する取り組み『モンテディオ山形 U-23プロデュースデー』――。
モンテディオ山形は、この活動を単なるJリーグクラブのマーケティング期間にとどめず、この期間を通して学生たちが人として成長し、他者や社会への貢献意識を高めることを大切にしています。

今回は、U-23マーケティング部で第1期・第2期に部長を務めた我妻里莉さん(以下、我妻)と、新井陽介さん(以下、新井)のお二人をお招きし、具体的な活動エピソードを交えながら、U-23マーケティング部がどのような場であるか、そしてこの活動を通して得たものや自身の変化についてお話しいただきました。

「自分の選択したことに対して自信を持つ」マインドを手に入れた 第1期部長・我妻里莉さん

山﨑)まずは、この『U-23マーケティング部』の活動に参加して得られたものについて教えてください。我妻さんからお願いします。

我妻)活動で得られたものはたくさんあるのですが、その中でも自分が選択したことに対して自信を持つというマインドを手に入れられたことはとても大きいと思います。これは、活動に真正面から向き合い、努力を重ねてきたことで、そのような考え方を持つようになりました。

山﨑)何か具体的なエピソードはありますか?

我妻)具体的なエピソードというより、全体の活動期間を通じて感じたことですが、自信を持つためには、ただ綺麗な努力だけでは難しいということを痛感しました。最終課題のプロデュースデーの企画では、1ヶ月前にすべてが頓挫しそうになったり、議論を重ねていくうちにメンバーとたくさん衝突したり…。そのような濃い挫折経験は、これまでの学校生活では決して得られなかったことで、その挫折を乗り越えていくことで、考え方が変わっていったのかなと思います。

山﨑)これまでも挫折の経験はあったかと思いますが、学校で経験する挫折とはまた違ったものなのでしょうか?

我妻)そうですね。ここまで本気で結果や数字と向き合った経験は、これまでなかったかもしれません。学校での数字の達成は、自分一人の成績や就職活動といった個人の目標が中心で、みんなで達成しなければならない数字というものは厳密には存在しませんでした。そのため、全員で目標に向かって本気で取り組む姿勢は、学校生活ではなかなか体験できないものです。ビジネスという要素が加わることで、初めて生まれる意識だと感じています。

山﨑)なるほど。学校の部活動でも同じような体験が得られる気もしますが、部活動との違いはなんでしょうか?

我妻)部活動よりも、地域のために、ファン・サポーターのためにという要素が強いと思います。だからこそ、どんなプロセスでこの企画が作り上げられたのか、この企画の先に何が見えるのかというストーリーと、それをどう価値に変えて伝えるのかという面では、部活動とは違った評価軸があると思います。

「一生モンの仲間」に出会えた本気の10ヶ月間 第2期部長・新井陽介さん

山﨑)新井さんは、第2期にU-23マーケティング部に参加し、どのようなものを得られたと感じていますか?

新井)僕がこの活動で“本気の10ヶ月”を過ごしたことで、ただの友人や学生生活で出会う友人を超えた「一生モンの仲間」に出会えました。また、活動を通して、自分自身のことを好きになれたことも非常に大きかったと思います。

山﨑)いいですね。なぜ、自分自身のことを好きになれたのでしょうか?

新井)メンバーに対して、自分の素を出せるようになったからというのが答えだと思っています。これまでは友人に対して、少し遠慮してしまうところがあったり、何か違うと思っていても言えないことが多くて…。でもこの活動をしていく中で、“1万人の集客”という自分たちの共通の目標があり、それを達成するために、違うと思うことは「これは違うのでは?」と言えるようになったり、相手から指摘されることに対しても真正面から受け入れるようになりました。
これは、学校でできた友人とは違う、何でも言い合える関係ができているからだと思いますし、今までの殻を破るところに繋がったかなと思います。

山﨑)今の話にも通じますが、U-23マーケティング部に入る前と終わったあとでは、何か変わったなと思うところはありますか?

新井)先ほどお話したように、自分の素を出せるようになった部分が一番変わったところだと思います。最後の方は、少しいじられキャラみたいになっていましたが…。今までの自分は意図せずいじられることをすごく嫌っていたのですが、今回に関しては「仲間が笑ってくれるから、俺はそれでいいや」と思えるようになりました。メンバーが喜んでくれたり、それで組織に一体感が生まれるのであれば、むしろ喜んでいじられにいこうと思っています(笑)。

泣いたり笑ったり、さまざまな経験を乗り越えて

山﨑)それぞれ活動の中で印象に残っているエピソードはありますか?泣いたり笑ったりいろいろとあったと思うのですが(笑)。

我妻)嬉しかったのは、夏合宿でプロデュースデーの方針が決まった瞬間ですね。合宿1日目に出たアイデアは、形としては整っていたものの、どこか自分たちの気持ちが乗り切れていない部分がありました。メンターの方からも「これが本当にみんながやりたいことなのか」と厳しいフィードバックをいただき、夜通し腹を割って話し合いました。お互いに自分の気持ちや考えを共有していく中で、「青春」というキーワードが浮かび上がり、これが1期生のプロデュースデーのテーマ『青春スタジアム』につながりました。話し合いは良い雰囲気ながらも熱い気持ちがぶつかり合い、夜遅くまで続きましたが、最後には全員が納得できるキーワードにたどり着きました。その瞬間は本当に嬉しかったですね。

辛いことはその後にありました。後半につれて、モチベーションの差が出たり、活動へのコミット具合も出てしまっていました。それは仕方ないことで、今思えば、それを踏まえてチームをビルディングしていくのがリーダーの役割でしたが、当時は、その状況に難しさとストレスを感じていました。

私のチームはプロデュースデーの1ヶ月前になってもまったく進捗がなく、やらなければならないことがたくさんあるにもかかわらず、全員に仕事を振り分けられず、自分一人で抱え込んでしまっていました。山﨑さんからも「モチベーションに依存せず、自分をコントロールして人と組織を機能させることが大切だ」と言われ続けていましたが、その重要性は分かっていても、思うようにいかない苦しさから、涙を流すこともありました。

結果としては、まわりのメンバーやメンターの皆さんの支えもあり、なんとか前に進むことができました。この経験と時間があったからこそ、最後には全員で喜んで涙を流せるほどの関係性を築けたと思います。振り返ると、一番心に残る思い出になり、経験としても非常に貴重だったと感じています。

山﨑)合宿の最終日、「私たちの青春のイメージはこれです」と言われ、企業のCM動画を見せられたときは僕も泣きそうになりました。りり(我妻)が泣いたときのことも鮮明に覚えているし、辛かったと思いますが、成長しているなと感じるシーンでした。新井さんは何か印象に残ってるエピソードはありますか?

新井)同じく合宿での出来事が印象として残っています。合宿では、ある程度事前にコンセプトも決めていたのであとは突き進むだけの状態だと思っていたのですが、メンターさんから全員でやっている感じがしないという指摘を受けてもう一度考えることになりました。山﨑さんから、「一期の時よりも雰囲気が良くない」というのを直接言われ、すごく悔しくて、そのあと学生だけで話をしたときに思わず泣いてしまいました。ずっと言い続けてきた、「一期を越える」という目標が達成できないのではないかと思ってしまいました。

そのときにまわりのメンバーから、「良いコンセプトだから自信を持とう」、「一緒にもう一度考えよう」という励ましの言葉をもらい、この辛い状況は1人だけじゃなくてみんなで背負ってるんだなと感じられました。そして、この仲間たちとなら一緒に乗り越えられると、結束力が高まった瞬間でした。

山﨑)それぞれ濃い時間を過ごしたということですね。厳しい雰囲気はありつつも、みんな活動外でも交流する仲の良さも感じたのですが、そのあたりはどうでしょう?

我妻)活動以外も、本当に10ヶ月間の中でずっと一緒にいたっていう感覚がありました。自分たちで企画を担当する試合のあとは絶対みんなでご飯に行っていたり、関東で開催された試合も関東組で集まって観戦したりしてましたね。U-23は、活動とプライベートの境目が良い意味でないんですよね。遊ぶときは思いきり遊ぶ、やるときはめっちゃやるという文化ができていて、ある種ベンチャー企業のような雰囲気だったのかなと思います。

今でも定期的に集まっては、当時の辛い話や泣いた話を共有しながら、これからもそれぞれ頑張ろうという話をするので、本当に一生モンの仲間ですね。
とにかく、もう全部楽しかったです。

新井)夏合宿が終わったあとから、メンバーと対面で会う機会が一気に増えました。僕は仙台に住んでいて、仙台に住んでる人が僕しかいなかったので、結構寂しかったのですが、関東在住組は関東会という感じでご飯に定期的に行ってましたね。その際に、僕に電話がきて30分ぐらい他愛も無い話をするみたいなことがあったのですが、そういうときにアイデアが生まれたりするんですよね。

山﨑)1期も2期も共通して、最初の方よりも後半にかけて確実にメンバー間のコミュニケーション量が増えていましたね。夜にグループでZoomしたり、Slack(チャット)を送り合ったりというのが、確実に後半の方が多かったなと思います。

1期から2期へ、そして3期へ 「次へ繋げたい」と思えるU-23の活動

我妻)1期が終わった瞬間は、自分たちがやりきったという達成感と、心のどこかに集客が目標に届いてないモヤモヤ感がありました。企画の内容としては良かったし、思い出としても経験としても最高だけど、数字が足りなかったこと、その悔しさは多分全員が持っています。その悔しさがあったからこそ、活動期間が終了した後もフィードバックを受けたり自分たちで振り返りを丁寧にしました。振り返りも多分1回だけではなく、何回かやって、この振り返りを通して2期にどのように繋げていくかみたいな話もかなりしていましたね。2期の皆さんがプロデュースデーで1万人を突破したときには、「悔しいけどめっちゃ嬉しいよね」という話を1期のメンバーともしていました。

U-23の活動は10ヶ月、1つ1つの活動にも価値があると思いますが、継続していく上で、本当に山形のためや、人のためになる活動だと思います。期ごとにブラッシュアップをして、山形県にとってなくてはならない活動にしてもらいたいと思います。

山﨑)事後アンケートを見ても、自分以外の他者や地域への貢献をしたいと回答した人がほぼ100%。他の学生と比較をするわけではないけど、そういう気持ちになれるのはこの活動がある意義だとも思うので、すごく嬉しくなりました。

新井)僕も、「次に繋げたいな」っていう思いは自然と芽生えてきました。僕が困ってるときにすぐ手を差し伸べてくれたメンバーは、1期からいる2人のメンバーでした。2期と1期は別物だけど、1期のいいところは取り入れるべきだと思うということをアドバイスというか、親身に接してくれることがありました。そういう意味では、2期の良かったところや逆に課題として残った点は、やっぱり3期に繋いでいきたいなと思います。自分たちの経験を繋いでいく中でできる輪をもっと大きくしていきたいなと考えています。

山﨑)「本気」になるというキーワードはみんなからよく聞いた記憶がありますね。

新井)本気になることは、嬉しさの何倍も辛さと苦しさが伴うということを学びました。この活動を通して、何度もミーティングをして、必死に考えた末でも、思っているような成果に結びつかない経験をたくさんしました。その度に、自分の力不足を実感して本当に悔しかったです。しかし、たくさんの辛い経験が「次こそは成果を出したい、もっと頑張りたい」という自分自身の原動力になりました。そして、プロデュースデーで目標達成をした時、一層大きな喜びに変わったんだと思います。

我妻)私は、何よりも一生モンの仲間に出会ったもそうですが、自分たちの居場所と言いますか、帰ってこられる場所ができたというのがすごく大きいなと思います。最後のセレモニーでも、あれだけ厳しかったメンターのHさんが、「いつでも帰ってきてね」と言ってくれて、そこにすごく愛を感じますし、いつでも相談していいんだなという安心感がありました。ただ好きだったチームのことが、自分の居場所や、それをこえてアイデンティティになっている気がします。だからこそ、自分がもっと成長して恩返しをしたいと思っています。

山﨑)みんなが頑張って活躍することが一番の恩返しだと思います。この40人が10期続いたら400人。こういう形で、継承されていくというか、そういうみんなの考えとかが地方経済を盛り上げていくっていうのはすごいいいことですよね。若い人が、こんなにも地方で本気になるってあんまり見たことないケースだと思うので。

あとは、この活動が終わったあと、それぞれがそれぞれの場所で精一杯頑張ってるというのも個人的にはすごく嬉しいことです。おそらく、ほかのまわりの同世代よりもかなりハイテンションに、高いところを見れてる子たちが多いんじゃないかなと思っていますね。「10ヶ月で人生が変わる」と僕はみんなに言ってますが、何もリップサービスでも誇張でもなんでもなくて、考え方や物事の捉え方というのは大きく変わっていて、それがみんなの今のステージを何段も上げてることをこの2年間見てきました。自分の将来の選択にもこの活動がすごく影響を与えていると思っています。

3期生に向けて「何かに没頭したい人」は是非

山﨑)U-23マーケティングは3期目募集が始まりましたが、どんな人に合う活動だと思いますか?学生のみんなの立場でぜひ聞いてみたいと思います。

我妻)そうですね。自分に重ね合わせるとしたら、何かに没頭したいけど何をして良いのか分からなかったり、自分で選んだ選択に不安があり自信を持てない人には適した活動だと思います。今こういうことをやっているけどこのままで良いのかなとか、将来の不安を持ってる人には飛び込んでほしいなと思います。

新井)この活動は、辛いことや大変なことがたくさんありますが、その分、殻を破ることができる場です。だからこそ、僕のように「自分のことが好きじゃないから、この活動で少しでも変わってみたい」というような、自分自身の些細な悩みを解決したいと思っている方にもおススメです。新しい環境に飛び込むことは本当に勇気がいることだと思いますが、是非チャレンジしてみてほしいです。活動し終えた時、「やってて良かった」と必ず感じられます。

U-23 プロデュースデー

10ヶ月に渡る活動の集大成として、学生が企画・運営を行う『U-23 プロデュースデー』。1期生は、コロナ禍で失われた多世代の“青春”をキーワードに、『青春スタジアム』と題して、企業対抗運動会や大人の体力測定など、数年間制限されていたイベントを再現し多くの感動と話題を集めました。
2期生は、こどもたちを対象に、“エンターテインメント×教育”を提供するコンテンツを複数企画した『ヒラメキパーク』を開催。その中でも、世界のグミ100種類を集めて、英会話や地理を絡めた「グミで学ぶ」企画は大ヒット。試合開始前から長蛇の列をつくりました。2期は1期生の実績を大きく上回り1万人の集客を達成。

1期生テーマ『青春スタジアム』-企業対抗運動会-

2期生テーマ『ヒラメキパーク』-100種類のグミを集めてみたんだモン-

2ヶ月単位で試合の企画

プロデュースデー以外に2ヶ月に1回のペースで、試合に関する企画・運営を行います。これまでに、不揃い果物を集めたパフェづくり、米どころである秋田県と山形県の米を食べ比べる利き米チャレンジ、春に卒業をする学生を対象にエールを送る機会として『門出を祝いたいんだモン』を実施するなど、これまでのクラブ発想にはない学生ならではの斬新なアイデアが多数リリースされました。

米どころ秋田・山形をPRする利き米チャレンジ

門出を祝うんだモンでは選手から子どもたちに卒業証書を贈呈

世界や日本で活躍する起業家・マーケターの話が聞ける

レクサスや伊勢神宮のクリエイティブに携わるなど世界をまたにかえて活躍するマンジョット・ベディ氏や、水田の風景を活かしたホテル『スイデンテラス』をつくるなど、地方に眠る魅力を再発掘する“まちづくりベンチャー”のSHONAI代表の山中大介氏、お客様の固定概念を壊す新しいエンタメ、ウンターテイメント事業を手掛けるうんこミュージアム(たのしいミュージアム)社長の小林将氏など、名だたる経営者やマーケターが学生に熱い講義を行います。

マンジョット・ベディ氏

山中大介氏

1泊2日の夏合宿

プロデュースデーに向けたビルディングを目的とする夏合宿。集大成に向けた最後の追い込み期間となるこの2日間は、脳からも目からも汗が出る、次世代に語り継がれるドラマが待っています。この合宿を通して、本当にやりたいことを実現し、成長を遂げることができるのかは、参加する学生一人ひとりにかかっています。

合宿では各チームに分かれて激しく議論が行われる

合宿の最後は円陣を組んでプロデュースへ

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