新サービス導入から1年 浜松市が成果をアピール 市民の本音とは大きな隔たり
■浜松市の「書かない窓口」 証明書の発行が10分から8分に短縮
浜松市が昨年度に導入した「書かない窓口」の効果を発表した。繁忙期に窓口で対応する件数は約1.4倍に増え、市民の待ち時間は最大3割短縮したという。市は成果をアピールしているが、市民の本音とは大きなギャップがある。
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「書かない窓口」は住民票の写しや印鑑登録など、証明書の発行を簡単にするサービスで、市民が窓口で身分証明書を提示すると、書類の一部を書かずに済む。市の職員が必要な情報をシステムに入力し、書類作成のサポートをする。
全国で成功事例があったことから、浜松市も昨年度、書かない窓口を取り入れた。導入から1年が経ち、市は効果を公表。行政区再編によって繁忙期の中央区役所の処理件数は前年度、約1.4倍に増えたが、市民の待ち時間は最大3割短縮した。
通常期は証明書の発行が平均10分から8分と2分短縮した。導入前に見込んでいた6分には届かなかったが、一定の効果はあった。届出は54分から45分に短縮した。
市によると、外国籍や高齢の市民からは「記入が減って楽になった」などの声が届いている。子連れからは「届出が多いのに書く量がすごく少なくなった。他の部署に行かなくてワンストップで楽」といった意見があった。
■市は効果を強調 市民からは「民間より30年遅れてる」
市の職員も「手続き漏れが起こりにくく、窓口業務の負担が減った」、「以前は必要だったローマ字で書かれた届出は日本語補記がなくなり、特に外国人来庁者への対応が楽になった」と歓迎しているという。窓口で電話番号など個人情報を口にするよう求められた市民からの苦情に対しては、電子メモパッドを購入して改善した。
浜松市は、書かない窓口によって市民も職員も作業効率化につながっていると報告している。ただ、今回の結果を知った市民とは捉え方に差がある。書かない窓口を評価する声は聞こえてこない。こんな意見が上がっている。
「届出に45分もかかること自体に改善の余地がある。証明書の発行も短縮したうちに入らない。半強制的につくらざるを得なかったマイナンバーカードをもっと活用できないのか」
「窓口で手続きしなければいけないことが疑問。市民がそれぞれオンラインで入力して機械で書類を発行するシステムをつくれば良いだけ」
「書かない窓口は象徴的だが、行政は取り組みが民間企業と比べて20年も30年も遅れている。効率化を図る根本的な改革が必要。民間では当たり前のシステムを取り入れれば、大幅に市の職員の勤務時間を減らしたり、人員を削減したりできるはず。民間と違うハードルなどを理由に挙げそうだが、行政は新しいことを取り入れるチャレンジ精神と責任を取る覚悟がないだけ」
多くの市民が訪れる市役所で1件当たりの作業時間が数分でも短縮すれば、年間で見ると一定の効果があるのかもしれない。ただ、市民はより大きな変化を望んでいる。
(SHIZUOKA Life編集部)