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「堕ろすくらいなら一緒に死のうと…」18歳のSOS 行き場ない妊婦の相談3000件の現実

Sitakke

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多くの祝福で迎えられる命の誕生がある一方で、妊娠をきっかけに周囲から孤立してしまう女性たちがいます。

北海道当別町にある民間団体が取り組む、母子支援の現場を取材しました。

連載「じぶんごとニュース」

賛否両論の中「赤ちゃんポスト」設置…SOSは3000件

思いがけない妊娠に直面し、戸惑いのなか、出産という現実に向き合う女性たちがいます。北海道当別町にある民間団体『こどもSOSほっかいどう』。

代表の坂本志麻さん(50)は、小さな命を宿すも、頼る相手を持たず、周囲から孤立する女性たちを支援しています。
坂本さんによる母子支援の活動は、すでに25年になります。

「非通知電話で夜中にかかってきて、もう陣痛が始まっていて…。電話を切ったら、もう連絡が取れないという女性もいますし…。そういう段階で初めてコンタクトが来るかたもいらっしゃいます」

3年前、親が匿名のまま、育てられない子どもを預け入れる、いわゆる“赤ちゃんポスト”も設置。
運営をめぐってさまざまな議論がある中、3,000件を超える相談が全国から寄せられています。

高校卒業間近に妊娠発覚…そのとき

2025年3月のことでした。
すがるような思いで、道外から坂本さんを訪ねて来た女性がいました。

「堕ろすぐらいだったら、子どもを殺して何事もなかったかのように生きていくぐらいなら、おなかの子と一緒に死のうと思って…」

西日本のあるマチに暮らす、かえでさん18歳。高校の卒業式を間近に控えた2月。
思いがけない妊娠が分かりました。

「“堕ろすなら堕ろすでいいし”みたいな感じで、体を傷つけるのはこっちなのに…。“任せる”って、すべての決定権を投げ出されて、2人の子どもなのに…」

かえでさん自身は、避妊にも気をつけていたと話します。
就職も決まっていた中で妊娠の判明…。
途方に暮れる中、交際相手から告げられた不誠実な言葉は、かえでさんを深く傷つけました。

将来への希望を見出せず、相手との関係を断つと決めて、妊娠中絶も考えました。
しかし、病院での診察を受け、大きく心を揺らすことになります。

実際のエコー写真 かえでさん提供

「エコー写真で胎嚢を見て、妊娠検査薬の線じゃなくて、赤ちゃんの姿を本当に見て、それで堕ろしたくないなって思って」

「私の母は母で、シングルマザーの大変さが分かってるから“結婚しなきゃ手伝わない、結婚はしないなら堕ろせ”って」


行く当てもなく…そのとき見つけた存在

シングルマザーとして子育てしてきたかえでさんの母親にとって、娘に苦労をさせたくない…そんな思いがあったのかもしれません。

わずかな所持金でそんな実家を飛び出したかえでさん(18)。
行く当てもないまま、東京で数日間、野宿で過ごしました。

そんな中、かえでさんが偶然SNSで見つけたのが坂本さんの支援活動でした。

「SNSでニュースの切り抜きを見て、そこで存在を知って。電話かけたときに優しく話を聞いてくれて、そこで泣いちゃって…」

そう話すかえでさんに坂本さんが声をかけます。

「まずは無事でよかったなって。よく連絡くれたもんね」

かえでさんはその電話を切ると、残り少ない所持金で夜行バスなどを乗り継ぎ、遠く離れた北海道へ向かうことを決めました。

バッグには、東京で買った安産祈願のお守りが結ばれていました。


赤ちゃん受け入れは6人…行政と対立続く

妊娠や出産で孤立する女性たちを支援している、坂本志麻さん。
北海道当別町にある自宅を拠点に活動し、3年前“赤ちゃんポスト”も設置しました。

「人によっては、友だちにも言えないし、周囲にも言えない人もいます。実際に、誰も言わずに、独りで産んだ女性が連絡を下さっています」

まだ“赤ちゃんポスト”が使われたことはありませんが、運用を巡って行政との対立は続いています。

そうした中、6人の赤ちゃんを母親と対面した上で受け入れてきました。

そんな坂本さんの元に、実家を飛び出して頼ってきたかえでさん。

「養子に出せばいいじゃん…里子に出せばいいじゃん…って思えるほど(おなかの子どもに)無責任な判断はしたくなくて。できれば、自分の手で育てたいけれど」

かえでさんは妊娠10週目に入っていました。

「連絡くれてありがとうって思いました。ちゃんと、おなかの子どもを守ってくれて、守ってくれていたんだから」

坂本さんは、自身が受け入れた子どもらとの触れ合いを通じて伝えたい思いがありました。

「まずは素を見せてあげたいなと思いまして。正論とか表面的な話だけではなくて、子育てって苦労だけじゃなくて、喜びや楽しみがあるんだよって」

坂本さんは、かえでさんの母親とも話し、おなかの子の将来を考え2人で話し合ってほしいと伝えました。


かえでさんに見えた「道」

北海道当別町で、坂本さんのもとで、3日間を過ごしたかえでさん18歳。
実家に戻る日、不安な表情がまだ消えないかえでさんに、坂本さんは励ますように言葉をかけていました。

「大変そうに見えた?子どもと過ごすの」

「この人数だと大変そうに見えた」

独りで妊娠の悩みを抱え、たどり着いた北海道。
かえでさんの心境に変化がありました。

「自分の中でなかった選択肢を出してくれて、今後、母と改めて話すときに新しい選択肢ができたことによって、子どもと一緒に暮らす道が見えました」

彼女のバッグに結ばれた、安産祈願のお守り―。
小さな命を守ろうという決意の現れです。

坂本さんが立ち上げた民間団体が3年前に設置した『赤ちゃんポスト』については、今も医療機関と連携していない点などから、行政側は、運用の中止を強く求めています。

ただ、取材した18歳の女性のケースのように、思いがけない妊娠で孤立する女性にとっての“拠り所”になっている実態もあります。

坂本さんは「困ったときは匿名や非通知でもいいので、支援する病院や団体に連絡してほしい」と呼びかけています。

新生児の遺棄事件がなくならない現状のなか、坂本さんが代表を務める団体には、この3年間で全国から3,000件を超える相談が寄せられているとのことです。

妊娠をきっかけに孤立する女性たちを、単に「個人の問題」と片付けるのではなく、小さな命を守るために何ができるのか?
社会全体で目を向けるべき課題ではないでしょうか。

連載「じぶんごとニュース」

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月21日)の情報に基づきます。

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