お盆のギモンを徹底解説!どうして東京は7月がお盆?あんぱんを供える地域も!?
毎年やってくるお盆の時期。日本人にとってなじみ深いものですが、そのルーツや地域ごとの差などについては、実は知られざる側面があります。現代の日本では、宗教や伝統行事から縁遠くなった人もいるかもしれません。しかし、せっかくの機会にお盆の意味と作法をちょっと学んでみませんか?
キュウリやナスの意味って知ってる?
お盆は「亡くなった人の魂が帰ってくる時期」と考えられており、それに伴った作法があります。まず、キュウリやナスでつくった「精霊馬・精霊牛」を用意をします。これらは亡くなったご先祖さまが行き帰りするための乗り物と考えられているもの。キュウリでつくるのが家に来てもらうための精霊馬で、「馬に乗るように早く来てほしい」という願いから。一方で、ナスでつくられるのがあの世へ帰ってもらうための精霊牛。「ゆっくりと帰っていってほしい」という思いが込められています。
また、お盆の入りに「迎え火」といって火を焚くのは、帰ってくるご先祖さまが迷わないための目印であり、盆提灯も同じような意味合いで飾られます。一方、お盆の終わりには「送り火」を焚きますが、こちらも、迷わず極楽へ戻っていけるようにという意味があります。ご先祖さまが帰ってくるため、仏壇やお墓の掃除もしておきましょう。
ハロウィンのような行事がある地域も
精霊馬や精霊牛、迎え火や送り火が一般的なお盆の作法。しかしそれだけではなく、仏教と古くからの民間の習俗などが合体して、現在の形になったお盆の行事は、地域によってもさまざまなスタイルがあるのです。
例えば、島根県を中心とした山陰地方では、お盆のお供え物として「パン」が当たり前。お供え物と言われると、和菓子や仏飯など和のイメージがあるので、西洋っぽさのある「パン」が供えてあると、ビックリしますよね。
島根県では、お盆やお彼岸、法事のお供えものとして、あんこ餅が主流でした。しかし、餅をついたりなどの手間も多いため、昭和20年代頃から手軽に用意できるパンがお供えされるようになったそう。そうした経緯から「あんぱん」が最もメジャーですが、現代ではバリエーション豊かなパンが仏壇の前を彩っているようです。
北海道では、七夕とお盆を一緒に行う傾向があり、その中に「ローソクもらい」という行事があります。
「♪ローソク出せ 出せよ 出さないとかっちゃぐ(ひっかく)ぞ おまけにかみつくぞ♪」
と、子供たちが歌いながら地域の家々を巡り、ローソクとお菓子をもらいます。なんだかハロウィンのようですが、日本にハロウィンの文化が伝わるより前から続いている風習です。
どうして東京はお盆が7月なの?
こうして地域によって風習に差のあるお盆ですが、時期にも差が生まれています。全国的には、8月13~16日ですが、東京と一部地域では7月15日の前後がお盆にあたるのです。お盆は元々、全国どこでも旧暦の7月15日前後に行なわれていたのですが、なぜこの差が生まれたのでしょう。
きっかけは、明治時代に行われた「改暦」。それまで日本で使われていた暦は、月と太陽の動きを元につくられた「太陰太陽暦」(旧暦)というものでした。それを、太陽の動きを元につくられた「太陽暦」(新暦)にしました。鎖国が解かれて外国と関係を深めていくにあたり、近代的な西洋諸国が採用していた太陽暦に合わせることで、交易をスムーズにし日本の近代化を目指そうとしたのです。
旧暦と新暦には約1カ月の差がありますが、農業を中心とした生活を送る地方では、新暦の7月15日頃は繁忙期にあたり、お盆に時間を割くことができません。また、何百年も続いてきた行事を、暦が変わったからといっても1カ月前倒しすることには抵抗があったのでしょう。そのため、東京以外の地域では旧暦の7月15日前後にあたる、8月半ばにお盆が行われています。
一方で、東京は農業よりも企業勤めの人が増えていた時代で、新暦に対応しやすかったと考えられています。さらに、改暦を決めた明治政府のお膝元であったため、従うしかなかったとも想像できますね。こうして、東京と地方でお盆の時期に差が生まれたのでした。
この季節は街を歩いていると、思いがけず地域の盆踊りや、家の前で送り火を焚く光景に出会うことも。そんなときは、このようなお盆の風習や意味について思い出してみてくださいね。
写真・文=Mr.tsubaking