漢方における肺と腎の役割とは?【生薬と漢方薬の事典】
【肺】呼吸をコントロールする、外邪の侵入を防ぐ
肺は、呼吸をコントロールする働きをもつ臓です。自然の大気を吸って、その中の清気を体内にとり込み、体内を巡ってきた汚れた気を外に吐き出しています。また、気・水を全身に届け、余分な水は汗として排出したり、膀胱に下ろしたりと、水分代謝を助ける働きも行っています。
気・水を内から外に向かって発散させて全身に送り、汚れた気を排出したり、汗を出したりする機能を「宣発」といいます。この働きは、皮膚に張りやうるおいを与えたり、外部からの邪気の侵入を防いだりすることにもつながっています。そのため肺が弱ると、体温調節が難しくなったり、かぜをひきやすくなったりします。
気を吸入して体の中まで引き下げたり、余分な水を膀胱へ下ろしたりする働きは「粛降」といいます。この働きがうまく行かなくなると、尿量が減って体がむくむなどします。
【腎】生命エネルギーを貯蔵する、成長、発育、生殖をコントロールする
腎は、親から受け継いだ生命の源「先天の気」を貯蔵している臓です。この作用が十分であれば、心身の成長、発育が順調に行われると考えられます。生殖や、老化が適度であるように調節する働きもあり、腎が弱ると、妊娠しづらくなったり、足腰の衰えといった老化現象があらわれたりします。
必要な水はため込み、不要な水は排出するなど、水の調節をするのも腎の働きです。排尿トラブル、むくみを引き起こす要因には、腎の不調が考えられます。また、肺を助けて、呼気をおさめる働きも腎にはあります。
腎の状態は、髪、骨や歯、耳によくあらわれ、腎の状態がよければ、髪はツヤやかで、骨格や歯もしっかりし、耳もよく聞こえます。腎の気の不足は、脾などがつくり出す栄養「後天の気」によって補われますが、先天の気は加齢により衰退していくため、老年になると白髪や抜け毛が増え、骨や歯が弱り、耳が遠くなるといった現象があらわれるのです。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎