毎年恒例!?環境変化で情緒不安定、超多動に…わが子たちの春の学校生活サポート術!
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
春は子どもたちが荒れやすい?
春は、わが家の子どもたちが荒れやすい季節。
3人全員が発達の特性があるわが家の子どもたち。中2の長女「姉子」はASD(自閉スペクトラム症)、知的ボーダー、場面緘黙、小5の長男「ハジュ」はASD、ADHD(注意欠如多動症)、小3の次女「にの」は発達グレー。
なかでもハジュは環境の変化にとても敏感なタイプ。進級だけでもドキドキなのに、担任の先生も変わって、クラスの雰囲気も少し変わって……。そんななか、ハジュのテンションはなぜか爆上がり。多動が強くなり、夜中も寝ぼけて家の中をウロウロしたり、寝言なのに「起きてるの?」というレベルで喋っていたり。
姉子も似たような感じで、楽しそうに笑っていたかと思えば次の瞬間涙がポロポロ。にのは、少し手が当たった、のような些細なことでもへそを曲げて叫んだり周りに当たり散らす……いやもうカオス。
荒れるのは、その子のせいじゃない
でも、これって「その子のせい」ではないのです。春は子どもにとって想像以上にストレスフルな季節。前置きが長くなりましたが、だからこそ家族や学校でその荒波を乗り越える準備をしておくことが大事だと思うのです。
まずは先生との連携強化
わが家が毎年この季節にやっているのは、まず先生との連携強化。特別支援学級に通うハジュには、学校から「実態把握シート(※)」という書類が配られるので、そこに子どもの困りごとや家庭での様子をほぼ埋まるくらいびっしりと書き込みます。「いま興味があること」「不安定になるサイン」「今年度の目標」などを、なるべく具体的に。
新しい先生にとっても、子どもの情報はあればあるだけありがたいはず。保護者としても事前に知っておいてもらえるだけで、安心感が全然違います。
(※)自治体によって名称が異なります
それから、もう一つ大事なのが「頼れる人」をつくっておくこと。担任の先生でもいいしスクールカウンセラーの先生でもOK。「この人に相談すれば大丈夫」という存在があるだけで親も子もすごく心強い。特にわが家の子どもたちのようなタイプは、気持ちの安定がとても重要なので、安心できる大人の存在は本当に貴重なのです。
できないことより、できたことに拍手を
家ではとにかく「発散」と「受け止め」を意識。どうしてもつい、「前はできてたのに、またダメだった」とか「約束したのに守れなかった」など「できなかったこと」に目が行きがちです。でもこれは……そう「春のせい」!そう思うだけで私はちょっと気が楽になります。
できなかったことよりも、できたことに注目して、「今朝自分で靴下はけたね」とか「帰ってきてちょっと休憩できたね」とか、ほんの小さなことでもOKだと思います。もし何もできなかったとしても、「大丈夫、大丈夫、春はそういうものだからさ」と声をかけて受け止めてあげる。それだけでも子どもにとっては安心につながると思います。
うまくいかなくてもいい
もちろん、親だってこの時期疲れます。子どもたちのペースに合わせて、ルーティンが崩れないように見通しを立ててあげて、声かけをして……って本当に大変だと思います。でも私の経験上、ここで頑張っておくと一年間がすごく過ごしやすくなります。
そしてみんなに伝えたいのは、「ひとりじゃないよ」ということ。春のスタートダッシュに出遅れても大丈夫。荒れてもいい。うまくいかなくてもいい。このコラムが、そんな春のバタバタの中で「ああ、うちだけじゃないんだ」と思えるきっかけになっていたらうれしいです。
執筆/スパ山
(監修:初川先生より)
春に大切なことのお話をありがとうございます。変化の多い春。変化に苦手な子は多くいますが、変化の気配を感じる段階(時期でいうと、例えば年が明けたころ)から、なんかそわそわしたり、いずれ来る別れの時期を恐れたりとどうにも調子が狂うことがあるように感じます。今年はそこに寒暖差も加わって、体調を管理することも難儀な春でした。大人も子どもたちも本当にお疲れ様です、疲れましたねとねぎらいたいところです。
ASD(自閉スペクトラム症)など変化を好まない、安定こそ安心と感じやすい方々にとっては、春は鬼門です。「春のせい」はあながち間違っておらず、苦手な状況にしばらくいたら、それはいつも通りのパフォーマンスが発揮できなくても何もおかしくはありません。そんな中で、スパ山さんに今回ご紹介いただいたような工夫や心持ちはとても参考になることと思います。できることをする。そして、いつもよりも小さな目盛りで子どものできていることを探し、自分もお子さんも地に足をつけていく(イメージ)。クラスや担任、あるいは学校や職場といった年度替わりで変化した事柄に一気に慣れようとしなくても大丈夫です。徐々に慣れていけばいい。しかしながら、1年かけて慣れてきた結果である3学期ごろのパフォーマンスや、やりやすさを、つい、人はすぐに求めようとしてしまいますね。
春は、これまで冬の間静かに寒さを耐えてきた植物が芽吹き、花が一斉に咲き始める時期でもあります。疲れやすい“変化の時期”ながら、周りを見渡し、花々の美しさ、芽吹く緑のみずみずしさを意図的に探すなどして、ふっと肩の力を抜く心がけをしていきたいものですね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。