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ブオオオン、『インセプション』サウンドが流行りすぎた件をハンス・ジマーが振り返る「安っぽくなってしまった」ブオオオン

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2010年代、“ブオオオン”という重低音が映画の予告編映像で多用されることがあった。(2010)で使われたことがきっかけだ。この象徴的な音を生み出した映画音楽界の巨匠が、米でブオオオン・トレンド(?)を振り返っている。

英語圏で“BRAAAM”と表記されるこの音は、ハンス・ジマーが作曲を手がけた『インセプション』予告編で強烈な地響きを起こした。こちらの映像では、全編にわたって不穏な響きが繰り返し使用され、最後に映画のロゴが登場する場面では、4度にわたって鳴り響く。

ノーランのダイナミックな演出と相性の良いこの音は、映像に重厚感と格式を付与する必殺のSEとなった。以来この音は“インセプション・サウンド”や“インセプション・ホーン”、あるいは単に“BRAAAM”と呼ばれるようになり、いくつかの映画予告編で模倣的に使用された。この音が鳴るだけで、映像が劇的なまでに終末的に感じられるのだ。

以下の映像では、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』(2011)『バトルシップ』(2012)など、“インセプション・サウンド”を用いた様々な予告編のシーンがまとめられている。いずれも、映画に荘厳な緊張感を与えるために活用されている。

他の映画の予告編でこの音が多用されまくったことに、生みの親であるハンス・ジマーはあまりいい思いをしていなかったようだ。一時期のトレンドだった“インセプション・サウンド”について、「聞かないようにしていたんです」とジマー。「みんなが予告編であの音を使い始めたから、『インセプション』で使うのが安っぽくなった」と振り返っている。

この音は、クリストファー・ノーランが脚本に“町中でホーンの音がスローに聴こえる”と書き表していたことを受けて、エディット・ピアフの『水に流して』のトロンボーンの3つ目の音をスロー再生したものを編集して生まれた。その楽曲がこちらだ。

レコーディングは、ロンドンのホールに金管楽器奏者を集めて行われた。「私はオープンピアノを用意して、サステインペダルの上にレンガを置いていました。奏者たちにはそこに向かって演奏してもらったので、ピアノ全体が共鳴したんです」と、ジマーは裏側を明かす。

「あの”BRAAAM”という音は、つながりのないシーンから別のシーンに繋げる仕掛けとしてよく使われるようになりました」と、少し呆れ気味の様子のジマー。そんな彼にとって『インセプション』は、自身がこれまで手がけたスコアの中で技術面において最も革新的だったと振り返っている。「時空の構造に逆らったんです。3つのことが進行しているポイントがある。まるで列車が交差するようで、それぞれが違うテンポで走っているんだけど、やがて全てが出会って調和し、またそれぞれの小さな世界に消えていくんです」。

ところでジマーといえば、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)に筆者が行ったでは、日本でのコンサートを準備中だと語っていた。当時は新型コロナウイルスの影響で「企画が後戻りになった」としつつ、「より良いコンサートを作るために動いているところ。実現したら、派手にやるつもりですので、絶対に見逃せないと思いますよ」とTHE RIVERの読者に教えてくれていたのだが、果たしてその後の具合はどうなったのだろうか?

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