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人類の英知⑨ 一般相対性理論(1/3) 東京スカイツリーに上ると歳をとる

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人類の英知⑨ 一般相対性理論(1/3) 東京スカイツリーに上ると歳をとる

本稿に入る前にお知らせを1点。 当社フロンティア・マネジメントは、2024年9月から加藤之啓氏に顧問に就任いただきました。加藤氏は、デンソー専務役員、デンソーテン代表取締役社長を務められました。フロンティア・マネジメントは自動車産業の知見を強化していく方針です。

さて、前回までの特殊相対性理論に続いて今回は一般相対性理論です。

▼人類の英知(シリーズ通してお読み下さい)
「人類の英知」シリーズ

理解したのは世界で2人?

特殊と一般は何が違うのか。一般が先で特殊が後と思われることもありますが、相対性理論については、まずは特殊な(限定的な)状況での理論ができ、それを一般に拡張したということになります。

特殊相対性理論の発表直後、世界で理解したのはわずか3人(と言われている)と書きましたが、一般相対性理論についても同様の逸話があります。イギリスの物理学者エディントンは、記者から「一般相対性理論を理解しているのは世界で3人だけと聞きましたが?」と質問され、「はて、3人目が思いつかないが?」(=理解しているのはアインシュタインと自身の2人だけ)と言ったと伝えられているほど、独創的なものでした。

特殊相対性理論から一般相対性理論への拡張

特殊相対性理論は、常識を覆した驚異の理論ですが、慣性系(外から力が加わっていない系)のみに適用できる理論でした。静止している、もしくは一定の速度で運動しているもの(人間でも電車でもなんでも)には適用できるのですが、非慣性系――外から力が加わっている、例えば加速している電車――には適用できないのです。

実社会において慣性系はほとんどありません。何かしらの力が加わり、加速もしくは減速しています。そもそも重力があり、我々は重力を常に受けています。

アインシュタインは、自身の理論が不完全であることを認識し不満に思っていました。それを一般に適用できるように拡張したのが一般相対性理論であり、独創的という言葉では足りないほどに独創的な理論です。特殊相対性理論が発表されたのが1905年、一般相対性理論が発表されたのは1915〜1916年。アインシュタインでさえ10年かかったのです。

アインシュタインの人生最良の思い付き ~ 等価原理

アインシュタインは人生最良の思い付きを、「重力と力による加速を区別できないことに気づいたこと」としています。この思い付きが一般相対性理論につながったためです。

私たちが日常で使うエレベーター。下に降りるとき、降り始めに「ふわっ」とした感覚、宙に浮かぶ感覚を感じることができます。逆に、エレベーターが上昇するとき、重力が強くなったように感じます。

アインシュタインは考えました。もし、私たちが、外が見えないエレベーターのかごに入っていたとしたら、自分にかかる重力がエレベーターの加速によるものか、重力によるものか区別できるだろうか?……いや、できないはずだ、重力による加速と力による加速は同じである! これが「等価原理」であり、一般相対性理論の出発点となりました。

空間(時空)はまがっている

ニュートンは、重力はりんごにも地球にも人にもあらゆるものに作用し、常に「近づける」力、すなわち「万有引力」であることを見出しました。さらにはその定式化もしました。偉大な理論です。しかし、なぜその力が働くのか、その原理を説明することはできませんでした。

アインシュタインは「重力とは空間のゆがみである」を見出したのです。重力はよくトランポリンに例えられます。トランポリンの上にボウリングの球をおくと、そこを中心に凹みができます。

そして、そのへこんだトランポリンに今度は小さなビー玉をおいてやると、そのくぼみに引き込まれていくはずです。そう、この空間のゆがみこそが重力なのです。

アインシュタイン以前、空間と時間は絶対的なもので、絶対空間、絶対時間と認識されていました。固定された舞台と認識されていました。しかし、そうではなかったのです。空間と時間は一体となった時空で、その時空はゆがんでいたのです。

物体が動くことで時空のゆがみが振動する。その、時空の振動は重力波とよばれ、アインシュタインは重力波の存在も予言しました。この連載「人類の英知①『0.000000000000000000001』と『重力波』」で紹介したように、重力波の観測には驚異の精度10の-21乗が必要ですが、なんと観測に成功し、2017年のノーベル賞が授与されました。100年先を行く頭脳。アインシュタインの偉大さを示す一つの事例です。

驚異の実験 ~ 東京スカイツリーでは時間が進む!

同じく、この連載「人類の英知③ 300億年に1秒しかずれない時計 『0.000000000000000001』再び」で、東京大学の香取秀俊教授が開発した10の-18乗の精度の時計を紹介しました。宇宙が始まって138億年で1秒ずれるかずれないかという驚異の時計です。この時計を使って、東京スカイツリーの展望台と地上での時の進み具合を検証する実験が行われました。東京大学、理化学研究所、島津製作所などによるもので、展望台に設置した時計は地上の時計と比べて24時間で約4ナノ秒進んだことを計測、これはアインシュタインの方程式通りだったのです! 100年以上経過して確かめられる理論を構築した博士、それを検証した実験、ともにあっぱれというほかありません。

もし、我々が一生を東京スカイツリーの展望台で過ごすと、一生(80年として)で0.1ミリ秒早く歳をとることになります。

次回、アインシュタインが創出した「宇宙方程式」について。宇宙を記述する方程式。なんと神秘的でしょうか。

執筆者:フロンティア・マネジメント株式会社 村田 朋博

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