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今年の冬は「トリプルデミック」に要注意!インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎、新型コロナの3種同時感染「トリプルデミック」の可能性、対策とは?

アットエス

静岡県もインフルエンザが流行中

厚⽣労働省は11⽉12⽇に、インフルエンザが全国的に流⾏シーズン⼊りしたと発表しました。静岡県ではそれ以前に、1医療機関の患者数が流⾏の⽬安となる「1⼈」を上回っていたことから、既に流⾏期に⼊っています。また11⽉4〜10⽇の都道府県別の流⾏状況でも、上位にランキングされていて、その前週は沖縄県に次いで2位でした。

今回はインフルエンザの流行拡大と懸念されるトリプルデミック(インフルエンザ‧マイコプラズマ肺炎‧新型コロナウイルスの3種同時感染)について、浜松医療センター感染症管理特別顧問 ⽮野邦夫先⽣に話を聞きました。聞き手はSBSアナウンサー影島亜美。

<目次>
・インフルエンザの流行時期が早い理由は?
・熱が出ない「隠れインフルエンザ」も流行中
・小児向けに⿐に噴霧する生ワクチンが解禁
・流行期に入った後でも接種は有効
・マイコ肺炎も猛威。トリプルデミックの可能性は?

インフルエンザの流行時期が早い理由は?

影島:この秋は、気温が⾼い状態が続きましたが、インフルエンザの流⾏期が早くやってきた気がします。いかがでしょうか。

矢野:国⽴感染症研究所によると、⽇本におけるインフルエンザの流⾏時期は、例年11⽉下旬から12⽉上旬頃に始まるとされ、徐々に患者が増えて翌1〜3⽉頃にピークを迎え、4〜5⽉は減少するパターンが⼀般的でした。しかし、昨年は例年より数か⽉早くピークが見られました。今年は昨年ほどではないのですが、ピークとなるのが例年より早くなりそうです。

影島:流行時期が早まる理由はあるのでしょうか。

矢野:理由はよく分からないですが、少なくとも新型コロナウイルスが流⾏したときに、マスクの着⽤など徹底的な感染対策が実施され、インフルエンザが流⾏できなくなり、その間に⼈々のインフルエンザに対する免疫が低下したことは関連していると思います。

影島:なるほど。

矢野:また、海外との⼈的交流が活発になり、ウイルスが容易に国内に持ち込まれているのも理由の⼀つでしょう。南半球では6〜8⽉に流⾏し、⾚道直下の国々では1年中流⾏しているので、そこでの感染者が⽇本に⼊ってくれば、インフルエンザウイルスも同時に持ち込まれてしまうんです。

熱が出ない「隠れインフルエンザ」も流行中

影島:インフルエンザに罹患すると、発熱や咳、体の痛みなどの症状が起こると認識していますが、発熱の無い「隠れインフルエンザ」も流⾏っていると聞きました。

矢野:症状が乏しく、熱もそんなに出てないのにインフルエンザという「隠れインフルエンザ」の患者がいます。

影島:怖いですね。

矢野:そうですね。以前から指摘されていて、新しい現象ではありません。症状が強く出る⼈とまったく出ない⼈がいる本当の理由は分からないのですが「過去に感染した」とか「ワクチンを接種した」ことによって、免疫を獲得していれば症状は軽くなります。

「隠れインフルエンザ」は、症状が軽く熱が出ないことから、病院の受診やインフルエンザの検査をせずに過ごしてしまい、感染拡⼤につながるという懸念があります。

影島:⾃分が「隠れインフルエンザ」かどうか気付くためのサインはありますか。

矢野:インフルエンザの流⾏期では、熱はなくとも「倦怠感、関節痛、せき、のどの痛み、⿐⽔、つらくて ⾷欲がない、息苦しく寝られない、尿がでない(脱⽔症状の一つ)」などの症状が出たら、まずインフルエンザを疑って早めに病院を受診するとよいと思います。また、周囲にインフルエンザ患者がいたら感染した可能性があるので、倦怠感などがあれば「そうかも」と疑っていいと思います。

小児向けに⿐に噴霧する生ワクチンが解禁

影島:今年から注射ではない⿐に噴霧するタイプのワクチンも解禁されました。流⾏期が始まってからでもワクチンはやはり有効ですか。

矢野:⼩児を対象に⿐に噴霧する⽣ワクチンが利⽤できるようになりました。注射の必要がないので、⼦どもには朗報かもしれません。

インフルエンザワクチンは流⾏期が始まってからでも接種していただきたいと思います。他の地域で流⾏していても、⾃分が住む地域での流行は遅れているかもしれません。

流行期に入った後でも接種は有効

また、ワクチンにはA型2つとB型2つが⼊っています。A型の⼀つが流⾏したとしても、遅れて別のウイルスが流⾏する可能性があります。そのため、⼀つが流⾏していても、接種すればほかのウイルスに対しても時間的には⼗分な余裕があります。

2023〜2024年シーズンでのワクチンの有効性が⽇本では、⾼齢者施設では発症予防効果は34〜55%、死亡の予防効果は82%もありました。そのような効果があるのでぜひとも積極的にワクチンを打ってほしいと思います。

影島:⼗分に効果があると証明されているんですね。

マイコ肺炎も猛威。トリプルデミックの可能性は?

影島:⼀⽅で「マイコプラズマ肺炎」も相変わらず猛威を振るっていて、さらに定期接種が始まった新型コロナワクチンの接種率が低下しているためインフルエンザと合わせてこの冬は「トリプルデミック」が起こるのでは?と噂されていますね。

矢野:最近、急に寒くなり、室内の温度を保つために換気が不⼗分になることが多くなると思います。マイコプラズマもインフルエンザウイルスも新型コロナウイルスも空気を介して伝播するので、換気が悪ければ、感染しやすくなります。

現時点で確かにマイコプラズマが流⾏し、インフルエンザもじわじわ増加して、新型コロナも増加の可能性があるので、「トリプルデミック」になる可能性はかなり⼤きいと思います。

そのような状況では、病院や診療所は⼤忙しになるので、それを避けるためにも特に⾼齢者にはインフルエンザと新型コロナのワクチンを接種して重症化を避けてほしいと思います。

影島:ただでさえ⾼リスクの人は、対策を講じるのはすごく大事なことですね。発熱や倦怠感、⾵邪の症状があれば、すぐに受診することが望ましいですよね。

矢野:その通りです。これらの感染症には治療薬があるので早期に診断し、治療で重症化を防ぐことができます。罹患しない予防策としては、⼈混みに⼊るときの「マスクの着⽤」「頻回の⼿洗い」「ワクチンの接種」です。感染した場合に⾃分が感染源にならない⼯夫としては、マスク着用と早期の診断で治療することです。治療すると⼝や⿐から排出される病原体の数は⼀気に減少するので、同居家族への感染を防ぐことができます。

影島:自分が感染源になるのは辛いですね。矢野先生ありがとうございました。

※当サイトにおける情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、並びに当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。

 

免責事項

※2024年11月26日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。今回お話をうかがったのは……矢野邦夫先生
浜松医療センター 感染症管理特別顧問。1981年名古屋大学医学部卒業、名古屋第二赤十字病院、名古屋大学病院を経て米国フレッドハッチンソン癌研究所留学。帰国後、浜松医療センターに勤務。同院在籍中、ワシントン州立大学感染症科に短期留学。2008年より副院長、2020年より院長補佐。2021年より現在に至る。医学博士、感染症専門医。著書多数

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